【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

無類の読書家だった米原万里さんの読書日記と書評

2008-03-18 00:28:04 | 評論/評伝/自伝

米原万里『打ちのめされるようなすごい本』文藝春秋、2006年
                      打ちのめされるようなすごい本 / 米原万里/著
 読書日記と書評の本です。無類の読書家だった著者の足跡でもあります。

 書籍と批評との巧まざる葛藤がそこにあります。井上ひさしさんが「解説」として「思索の火花を散らして」を書いていますが、まさにその「解説」の表題のとおりの内容です。通読すると著者の関心の所在がわかります。その軸は全くぶれていません。アメリカのイラク攻撃の暴挙に鉄槌を加え、それに追随する日本の現状に憂え、失望、落胆し、旧ソ連の全体主義、その延長にある現ロシアのチェチェン介入を糾弾し、NATOのコソボ爆撃に怒っています。

 アネクドート、ジョーク、笑いに共鳴し、
犬と猫を愛しみ長く同居していました。そして癌との闘い。

 ロシア語同時通訳では彼女の右に出る人はいませんでしたが、単なる通訳者ではない思想家、文学者としての彼女の素顔が生き生きと伝わってきます。

 強靭な思索力、読書力に驚嘆し、怪女のように思いましたが、反面怖がりで、優しい彼女の一面もうかがえました。人柄もよくわかるのです。

 本書の表題は彼女がつけたのでしょうか。それとも編集者でしょうか。彼女は生前から本書の出版を予定していたのでしょうか? それとも出版社が急遽、編集したのでしょうか。それというのも本書の刊行は彼女の死の直後だったからです。わたしは後者のような気がしますが、いずれにしても、85ページに「打ちのめされるようなすごい小説」という文章があり(トマス・H・クックの『夜の記憶』、丸谷才一の『笹まくら』が紹介、批評されている)、本書の表題はこれに由来しているように思われます。

 535ページの大部の本。しかも後半は上下二段組。読破に時間を要しました。索引に本書で取り上げられ、触れられた本、都合390冊の一覧があります。読みたいと思った本がたくさんありました。


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