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今年6月13日午後7時51分(日本時間)、満身創痍の小惑星探査機「はやぶさ」(全長約31メートル、直径約2.5メートル、重量140トン)が宇宙から帰還しました。
厳密に言えば、探査機そのものは大気圏突入後燃焼、小惑星「イトカワ」(Sタイプ[石灰質中心]惑星)の表面から採取したカケラが入っているかもしれないカプセルのみが切り離され、オーストラリアのウーメラ沙漠に着地したのです。
2003年5月9日に内之浦宇宙空間測候所で打ち上げられて以来、7年ぶりです。当初は4年で帰還の予定でした。トラブルが相次ぎ、一時、帰還が諦められたこともありました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、宇宙科学研究所(ISAS)の快挙、ひいては日本の宇宙科学界全体の誇りになる快挙です。
なぜなら、「はやぶさ」はその探査飛行で既に始めての成果を次々に出してきましたし、また最大の目的であったサンプルリターンに成功していれば、太陽系宇宙誕生の秘密が明かされるかもしれないからです。
本書はその全行程をドキュメンタリータッチの読み物にしてあります。
帰還にさいしては報道で大きくとりあげられ、衆目の知るところとなりました。一般には小惑星(太陽の周りをまわっている小惑星は、現在わかっているだけで27万個)「イトカワ」からの採石(といってもミクロン単位のゴミほどにも小さい粒子)があったのかなかったのかが焦点となっていますが、今回の「はやぶさ」ではイオンエンジンが推進力であること、地球からの軌道を離れるのにスィングバイという方式でのいわば省エネ方法を使ったこと、地球に送ってきた膨大な量の写真など大きな成果が既に出ています。ここに注目しないといけません。
また、大きなトラブルを次々と克服したことも特筆しなければなりません。その手法に関しても科学的貢献がありました。トラブルとは具体的には、イオンエンジンAの故障と停止(2003年5月27日)、3基のリアクションホイール(姿勢制御装置)のうちの一基の故障(2003年8月15日)、行方不明になった超小型探査ロボット「ミネルバ」(2005年11月12日)、イトカワへの一回目のタッチダウンで「はやぶさ」の状況が不明になったこと(2005年11月20日)、燃料漏れで姿勢が安定せず、通信が途絶したこと(2003年11月26日)、イオンエンジン自動停止状態(2009年11月4日),等々です。
数えきれないトラブルに対して冷静な、粘り強い、チームワークのよい探査活動への従事が、成功につながったことが、本書を読むとよくわかります。
「小惑星へ行こう」の呼びかけ賛同者88万人の名前をIC技術で作成した50枚のチップをイトカワに置いてきたという話、2度目のタッチダウンで「レーザー高度計」から「近距離エーザー高度計」への緊張感ある転換、そして着地の話、2005年9月燃料切れで息もたえだえの「はやぶさ」との通信途絶と奇蹟的回復の話、「はやぶさ」地球帰還直前にスーパーエンジニアである川口さんが神社詣でをした話、どれもこれもドラマチックな話の連続で興味つきません。
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