【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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馬場錬成『ノーベル賞の100年-自然科学三賞でたどる科学史-』中央公論新書、2002年

2010-11-09 00:20:56 | 自然科学/数学
                               
                            


 本年、鈴木章、根岸栄一両氏がパラジウムを触媒とする有機化合物のクロス・カップリングの業績でノーベル化学賞を受賞しました。このところ日本の科学者の受賞が目立ちます。そのことに刺激されて本書をひもときました。

 表題どおり、1901年に設置されたノーベル賞の一世紀の歴史です。ノーベル賞が設置された理由、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の流れ、候補者の選び方、日本の受賞者の業績の解説が要領よく、分り易く説明されています。

 ノーベル賞がよき伝統を保ってきた理由として、選考プロセスが公平、厳密で、秘密が厳しく守られていること、賞金の額が高いこと、外部資金のもちこみなどを原則的に断ってきたことなどがあげられています。

  第一回の生理学・医学賞の受賞者に北里柴三郎が最も近いところにいたにもかかわらず、結果的に受賞できなかったこと、野口英世が何度も候補者にあがったこと、湯川秀樹、朝永振一郎の業績の意義の大きさ、また本書が書かれたのは2002年であすが小柴教授、小林・益川教授の受賞が予測されていることなど、興味深い記述が随所にあります。

 物理学賞の系譜にみられる量子力学、素粒子論の発展、化学賞で近年では分子生物学(遺伝子とDNA)が隆盛をきわめていること、生理学・医学賞では人類の病気との闘いを追跡できることなど、普段触れることができない自然科学領域の動きが新鮮に感じられました(さらに、自然科学三賞の流れは、ドイツが科学者を輩出した時期からそれがアメリカに移っていく傾向、賞が原理・原則と真理の発見に与えられ方向から応用科学の方向へ移ってきていることなども)。

 経済学賞が特別な位置にあるとの指摘、時々奇妙な受賞が話題になる平和賞への著者の見解も参考になります。


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