井出洋一郎『聖書の名画がなぜこんなに面白いのか』中経出版、2010年
西欧の名画を理解するには、「聖書」の読み込みが大前提であるとよく言われます。本書でも、著者は手元にあるルーヴル美術館カタログから、イタリア画家の人名AからLまでによる絵画を調べたところ、そのうちの4分の3が神話と聖書の主題による絵画だったそうです(p.2)。
そして絵はもともとは「読む」ものであり、眺めて楽しむものになったのは19世紀半ばになってからだそうです。「それまで絵は物語や歴史や何らかの思想内容をイメージとして表現するコミュニケーションの手段であり、それは言葉に置き換えられるものでなければならない、つまり読むものであった」(p.237)というのです。
このような妥当な考え方にたって、著者は聖書の展開に即していわゆる名画を読み解いていきます、「第一章:旧約聖書の物語」「第二章:マリアとキリストの物語」「第三章:聖女、聖人の物語とアレゴリー」「第四章:旧約聖書の物語」。この大枠のなかで天地創造、アダムの創造から始まって、
・エヴァの創造/・原罪と楽園追放/・ノアの物語/・バベルの塔/・ソドムの崩壊/
・イサクの犠牲/・ヤコブからヨセフへ/・モーセの物語/・サムソンとデリラ/・ダビデの物語/・ソロモンの物語/・ユーディットの物語/・スザンナの物語/・無原罪受胎/・受胎告知/・キリスト降誕/・聖アンナと聖母子/・聖母子像/・ピエタ/・死・被昇天・戴冠/・洗礼、試練・招命/・世俗との闘/・最後の晩餐/・ゲッセマの祈り/・逮捕から刑場へ/・磔刑と埋葬/・復活から昇天/・最後の審判/・ペテロとヨハネ/・マグダラのマリア/・サロメの物語/・聖カテリーナと聖マルガリータ/・聖アントニウスと聖セバスティアヌス/・聖フランチェスコ/・死とヴァニタス/・怠惰と慈愛
・・・と進んでいきます。
と、このように説明するとこの本は難解かと思うかもしれませんが、多くの絵画が挿入され、対話形式のギャラリートークが採用されているので、叙述はきわめて平易です。
キリスト教文化に触れるのには最適。
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