福島原発事故後、関係書が普及しているようですが、これまでは事故前に出版されたものが大半でした。最近、事故後の経過をふまえた関連書籍が刊行されるようになってきました。本書はそのうちの一冊です。
「第1章:福島原発はこれからどうなるのか」では、政府、東電の公表データが遅く、誤りが始終あることに苦言を呈しています。データの迅速で、正確な開示と提供は不可欠です。そのうえで、今回の事故はいわば「地球被曝」であり、もしかすると環境汚染の規模でチェルノヴィリを超えるかもしれない危険性を孕んでいること、作業員の悪化する被曝環境が懸念されること、連鎖的メルトダウンが発生し、歴史上経験のない大惨事という最悪のシナリオを覚悟しなければならない状況であることが書かれています。
予断が許されない状況なのには、早くも「何とかなるのではないか」という楽観論がでています。不思議な国です。
別の章「第3章:放射線から身を守るには」では、症状が出始める最低被曝のしきい値などはなく(「直線、しきい値なしモデル」)それくらい放射線は恐ろしいものであること、文科省が福島県下の学校に示した子どもの被曝の安全基準が甘すぎること、汚染された農地の再利用が不可能であること、などが記述されています。
事故が起きた場合の莫大なコスト(原子力損害賠償法の設定では1200億円[2009年])、高速増殖炉は破綻確実であること(1kWも発電していない「もんじゅ」に既に一兆円を超えるカネを投資)、原子力利用になって高くなる電気料金(コスト負担に耐え切れず日本のアルミ精錬産業が潰れる)、貧弱なウラン資源、見通しのない放射性廃棄物の処分、これらの負担の大きさから判断すると、著者の言うように、原発廃止は必然の理です。
原発を止めても支障はなく、代替エネルギーの開発に投資することが賢明という著者の提言は、即刻実現にうつすべきです。
それでも、国民が請け負わざるをえない「負の遺産」は大きすぎるのですから。
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