「マリコ」は、本名が寺崎マリ子。父は外交官寺崎英成、母はグエン・テラサキ。マリ子は国際結婚の父母の一粒種でした。
本書はそのマリコの半生記ですが、前半は太平洋戦争前後の外交官(日本大使館、上海、ハバナ、北京などでの在外勤務)としての英成の仕事ぶり、妻になったグエンとの関係を細かく描いています。
日米決戦が日本による真珠湾奇襲攻撃で始まりますが、その直前、キナ臭くなる一方の日米関係に直面し、英成と駐米日本大使との間で交信に使われた暗号が「マリコ」でした。すなわち「≪マリコ≫は病気だ、悪クナルバカリ」というのは、<アメリカの態度>が悪化しているという意味の暗号通信でした。
日米開戦反対の英成は日米開戦を止めるため果敢に奔走しました。そのための画策のひとつがルーズベルトから時の天皇への親電の取り次ぎでした。
しかし、その努力のかいもなく日米開戦。英成とグエン夫妻は日本人とアメリカ人との結婚であったため、暗雲たちこめる国際状況のなかで筆舌に尽くしがたい生活上の困難に直面しました。
後半の記述は、夫妻の子であるマリコ(上海で出生)の成長、民主党の政治家だったミラーとの結婚、彼女自身の政治家としての自律の過程に充てられています。
英成は1951年に50歳で亡くなったが、グエンはその後、回想記『太陽にかける橋』を著して一躍有名となりました。
日米の「懸け橋」として波乱万丈の人生を歩んだマリ子の人生をとおし、現代史がいきいきと浮かび上がってきます。
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