【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

ジョニーは戦場へ行った(Johnny Got His Gun)ダルトン・トランボ監督、アメリカ、1971一年

2017-09-13 23:56:36 | 映画

                         

 
この映画の印象は、強烈である。ショキングでさえある。原作は、監督自身による1938年の小説。背景は第一次世界大戦。アメリカが参戦。「ジョニーよ、銃をとれ」の歌(この歌のタイトルが映画の原題である)に駆り立てられて戦地に動員された主人公ジョーは、戦死した敵のドイツ兵を埋葬しているさなか、敵の攻撃をうけ、逃げこんだ塹壕で爆弾に吹き飛ばされた。身元不明戦傷兵第407号としてアメリカ国陸軍医療部隊に運び込まれたジョーは、ティラリー大佐の指揮のもとで治療を受けた。ジョーは、目、耳、鼻、あご、歯、両腕、両脚を失なった。頭の一部と胴体がのこって、包帯で全身ぐるぐるまきにされ、病院の暗い一室に横たわっているだけであった。延髄は正常、脳も働いていた。このため、心臓と呼吸中枢が機能し、思考をすることもできた。ジョーは奇跡的に命をとりとめていた。

 治療班は、彼の治療経験から学ぼうとの決断をした。暗い部屋におかれたジョーは、最初のうちは自己意識を持っていなかったが、しだいに事情が分かるようになった。絶望的な気持ちにとらわれた。漸く落ち着きをとり戻し、自分の意識を確認するように惑星の名を唱えたりして、自分の置かれている状況、環境を認識するようになった。体が回復するにつれ、家族の思い出、とくに父が大切にし、また自慢の種であった釣り竿をなくしてしまったときの様子、出征前に恋人カリーンと結ばれたことなどを懐かしく思い出した。夢、現実、想像の交錯、神といった問題が脳裏をかすめた。

 年配の看護婦が部屋の窓をあけ、真っ暗だった部屋に太陽の光を入れると、ジョーはそれに気づく場面がある。太陽光線をよろこぶジョー。若い看護婦はジョーに親身になり、一輪の花を花瓶にいけたりした。また、ジョーの胸の皮膚にアルファベットで Merry Christmas と指でかいて、クリスマスの日を教えた。ジョーは日付を知ることで時間の経過を確認できると喜ぶ。記憶のなかで父からモールスの電信で意思を伝えることを思い出したジョーは、頭の動きでモールス信号を示し、周囲の人に自分の意思を伝えようとした。最初はそれを痙攣と診断され、鎮静剤を打たれたが、そのうちに痙攣ではなく意思を伝えようとする信号だと分かる。ジョーは病院の人たち、看護婦に自分を外にだしてカーニバル・ショーに見世物としてくれ、それができなければ殺してくれとの意思を伝えた。同情した看護婦はジョーの呼吸用の管を閉じて安楽死させようとしたが、軍医は認めなかった。機密として部屋は完全に閉ざされ、標本患者として生かす措置がとられた。絶望と恐怖にさいなまれ「神はいない、こんなところにはいない。SOS、助けてくれ!」と暗闇の一室でうめくジョー。

 この映画はモノトーンで表現される現在とカラーで表現される過去とを巧みに交錯させ、戦争がもたらした非情さを淡々と綴った類まれな傑作である。ベトナム戦争が開始間もない時期に公開された。


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