数学で愉しもうという趣向ですが、わかりやすいところとわかりいくいところとがあり、理解度はまだら現象です。
全体は、序章を含めて5部。「はじめに-優雅な果実 何でこんなところに数学が?」「第一部:頭脳と数学の出会うところ」「第二部:物の世界を数学する」「第三部:人の世界を数学する」「第四部:真理の数学」。
著者の解説を借りて、各部の内容を紹介すると、第一部では、心の混乱を整理するのに、数学がぜひとも必要なことが示されています。第ニ部ではものごとをはっきり見るのをさまたげるもののうち、物質的な現実自体の状況からくるものを探っています。第三部では、数学がいかに「公平さ」などという人間的な問題に光をあてているかを味わおうとしています。最後の部では、本書の中心をなし、数学がさまざまな道をつうじて原因と結果、証拠と証明、真理と美とのあいだにある意外な基本関係が示されること、またしばしば実際に示していることが述べられています。美と真理とは同じコインの両面というわけです。
相関関係と因果関係とをとりちがえてはいけないこと、「平均」概念には慎重に接近すべきことなどよく知られていることが指摘されています。また数学の魅力がその本質的、内在的論理の真理性であるにもかかわらず、その世界でも矛盾が避けられないことをゲーデルが証明したこと、ワイルズが証明したフェルマの定理、宇宙の構造を理解するのに必要な「雑音」の除去など、面白く豊富な話題がたくさん紹介されています。
ダレル・ハフの『統計でウソをつく法』[1954](高木秀玄訳、講談社ブルーバックス)は、統計の問題を考えるさいには欠かせず参照される名著であるようです(p.79)。
法則の認識に果たすパターン認識の役割について述べられている箇所は、有益でした。著者はこの点に関連して、「科学が特に優れているのは、何といってもいわゆるパターン認識だろう」「パターンが繰り返すという事実から、私たちは自然の法則を公式化することができる」と指摘しています(p.107)。
原題は"The Universe and The Teacup"
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます