【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

田辺聖子『苺をつぶしながら』講談社、2007年

2007-12-19 00:50:12 | 小説
田辺聖子『苺をつぶしながら』講談社、2007年

              
苺をつぶしながら
 昨日の『私的生活』の続編で、この第三部で完結です。

 乃里子はやはり離婚していました。35歳。第三部では冒頭に苺をつぶしている乃里子がいて、小説の末尾にまた苺をつぶしている乃里子がいます。苺をつぶしているふたりの乃里子の心持はだいぶ違うのですけれど。

 晴れて離婚した乃里子は「あの世へいったってこんないい目は見られそうにない」と思い、「今は嬉しいと(悲しいとき、嫌なときではない)息がつまって目の前が暗くなる」ほどであると快哉を叫んでいます。「人間が幸福になるには離婚すべきだ」といまでは考えているのです。

 慰謝料はもらわず、いわば着のみ着のままで別れたのですが、それがスッキリしてかえってよかったのです。

 乃里子は大阪のど真ん中にマンションを買い、自由気ままな生活をしています。どれだけ気ままかと言うと、朝なんか風呂に入ってそのままハダカでトーストを食べたりするくらいです。仕事もそこそこあります。マンションを2つ持っている金持ちですがレズっぽい桑田芽利、タレントの夏木阿佐子、子供服の会社をつくって40歳のちょと禿げた金井哲、画家でこれも中年の関口兎夢といった友達もいます。男友達も女友達も等しく好ましく思えます。

 思えば遠景にしりぞいた結婚生活は、「刑務所」のようでした、お互いに緊張の連続で、親戚関係に気疲れし、自由は何もなかったのです。「男」は「自然」のようなものですが、もう二度と結婚はない、ゴメンと思っています。

 ピアノ塾を経営し、ピアノ教師の原こずゑとの交際もいい関係です。乃里子は彼女のことを、背が高く、威厳があり、男っぽくて言い人なのだけれど、なんとなく近づき難く、女ドラキュラのように思っていたのですが、金井哲を介して、いつのまにか近しい関係になって、大阪のミナミやキタで一緒にスパゲティを食べたり、ショッピングに歩く仲になっていました。

 乃里子は独り身を満喫していました(ドジは相変わらず、「ローマ」というレストランでワインを飲みすぎ和式トイレで小用をしているさいに後にひっくり返り、あられもない醜態をさらし、介抱してくれた男性とホテルで睦みあったりしています)。

 もと夫の剛とは離婚後一度、乃里子が大雨のなかをびしょ濡れで歩いていたところを車に誘われ、それっきりでした。ところが、芽利と軽井沢に小旅行しているときに、剛はホテル(万平ホテル)に訪れてきます(留守電に行き先、電話番号を吹き込んでおいたために嗅ぎつけられ)。

 剛の相変わらずの嫉妬のいりまじった嫌味と傲慢な態度。乃里子はつくづく嫌だと思います。

 しかし、軽井沢滞在中、一大事件が起こります。

 その顛末は? 結末がわかってしまうとつまらないので、書きません。

 「だよな~」という終わり方です。ジワットきます。間違いなく。

 おしまい。おやすみなさい。

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