数学の遠大な歴史系譜の基軸をおさえた啓蒙書です。それは以下の目次を一瞥するだけで分ります。
・序章:聞いてみたいこと
・第1章:深い森へ(1.円周率、2.ピタゴラスの定理、3.平行線の公理、4.ツェノンの逆理)
・第2章:近世に向けての旅立ち(1.中世から近世へ、2.火薬と大砲、3.コンパス、4.活版印刷、5.時計)
・第3章:ヨーロッパ数学の出発(1.デカルトの方法、2.ニュートンの「プリンキピア」、3.ライプニッツの無限小量)
・第4章:数学の展開(1.開かれた社会へ、2.バーゼル問題の解と「無限解析」、3.オイラー無限のなかの算術、4.無限小量の批判)
・第5章:関数概念の登場(1.変化するもの、2.関数・グラフ・極限)、3.微分ー関数への作用、4.積分-関数のひろがり、5.微分と積分-数学の2つの方向)
・第6章:解析学の展開(1.テイラーの展開と因果律、2.複素数、3.正則性、4.波立つ変化)。
円は完全な図形と考えられるのに、円を数の世界にうつしだした円周率πはどこまでも規則性のない数の列が続いていく、そこに暗示されるのは数の無限性と神秘性であるという話から始まり、数学が「線分計算」と「比を用いた数の計算」とは切り離して考えなければならないことの認識を「ピタゴラスの定理」によって取り込んだことが確認されています。古代ギリシャ数学は、このとき数の神秘の扉を開いたのでした。
思惟の世界に淵源をもつ数学はその後、イスラム世界で代数学を誕生(9世紀)させ、近世に入ってデカルトを経て微分・積分学が形成され(変化のなかに時間を見、後者を数学のなかに取り入れたニュートン力学と変化のモナド[単子]の存在を見たライプニッツの数学)、両者の数学を統一させた関数と変数概念によって解析学へと展開されていきます。
さらにガウス、アーベル、ガロア、リーマンなどの天才の業績を経て、概念がさらに純化され実数から複素数に移行します。
ここに至って数学は、時間のない抽象の中で因果律が成立する世界に到達します。20世紀の数学は抽象数学として再びイデアの世界に回帰することになるのです。
2000年有余の数学の歴史逍遥の旅がここにあります。
数学的展開、古典からの引用があり、内容は決して易しくはありません。
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