会計とは何か、会計士とは何か、が分り易く書かれています。分り易くと言っても、第4章の「近代会計の成立環境」の解説、第6章の「会計プロフェッションの生々」の説明、第7章の「近代会計制度の成立」の展開に関しては、細かな歴史的経過が叙述されていて、門外漢のわたしにとっては、ポイント以外のことは頭に入ってきません。
ポイントというのは、次のようなことです。その第4章では企業形体(著者は「形態」ではなく「形体」という用語を使っています)の近代化プロセス、すなわち株式会社の形成プロセスが、ギルドから合本会社、東インド会社の成立[1602年](ただし本書では、1553年のロシア会社を株式会社の起源としている)、南海バブルの崩潰を経て、産業革命以降の企業形体の発展が論じられています。
第6章「会計プロフェッション」では、会計士の職業が初めて登場したのはスコットランドで1854年のこと(エディンバラ会計士協会)、続いてイングランドに登場したことが書かれています。初期の仕事は、破産関係業務で、後に監査業務が加わったことが指摘されています。
第7章「近代会計制度の成立」では、監査の仕事が会計士の仕事の中枢となっていく過程が解明されています。
本書は冒頭で、会計とは何か(「accountは説明」の意味)から始まって、財産の管理との関わりで委託、受託の概念がキーワードとして示され、監査の重要性(その意義と目的は「納得」)、会計プロフェッションが登場する必然性、複式簿記の意味(資本と利益とを対象として体系的に行われる記録ないしそのジステム)などが解説され、以後、会計の歴史(15世紀イタリア[複式簿記]→16,17世紀ネーデルランド[期間計算]→18,19世紀イギリス[発生主義])をたどるという構成をとっています。
著者によれば、近代会計制度は機能面と構造面とから捉えることができるとのこと。前者の側面でみると近代会計制度は委託、受託関係の近代化に他ならず、後者の側面でみると期間計算が発生主義で行われること、この発生主義は産業革命とそれによってもたらされた交通革命をもって完成するとされています。
会計(学)はかつて一般にはあまり縁のない分野であり、またその分野に足を踏み込んでも無味乾燥の世界と受取られていましたが、近年事情が少し変わってきました。著者はその流れを敏感に掴んでいて、それならばということで本書を執筆し、内容を面白くするために歴史的な叙述の方法をとったようです。入門書として、よくできているように思いました。
最新の画像[もっと見る]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます