く~にゃん雑記帳

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<なら歴史芸術文化村㊤> 「発掘された日本列島2022」展

2023年02月09日 | 考古・歴史

【全国各地の33遺跡約520点の出土品を展示】

 国内でこれまでに確認された遺跡は約47万カ所に上り、毎年約8000件の発掘調査が行われているという。文化庁は発掘の成果を公開するため1995年度から「発掘された日本列島」展を開いてきた。今年度の「発掘された日本列島2022」展は昨年6月の埼玉県さいたま市を皮切りに北海道伊達市、宮城県石巻市、宮崎市と巡回し、現在は最終地の奈良県天理市「なら歴史芸術文化村」で開催中(2月12日まで)。「新発見考古速報」と昨年度から始まった「我がまちが誇る遺跡」の2本立てで、合わせて33遺跡約520点の出土品を展示している。

 「新発見考古速報」で取り上げた遺跡は旧石器時代から縄文・弥生・古墳時代、さらに古代・中世・近代まで全国の14遺跡。「史跡取掛西(とりかけにし)貝塚」(千葉県船橋市)は縄文前期の集落で、貝塚が多く残る東京湾東岸部でも最古級の遺跡といわれる。貝塚からは多種多様な骨などが出土した。貝や魚をはじめイノシシ・シカ・タヌキ・キジ・カモ……。1万年前の食生活や環境を知ることができる点で全国的にも希少・貴重な遺跡という。

 「東小田峯遺跡」(福岡県筑前町)は弥生前期~中期の集落と墳墓の複合遺跡。墳丘墓や祭祀土坑から赤く塗られた丹塗(にぬり)の土器が大量に出土した(写真)。展示中の各地の出土品の中でも明るく鮮やかな土器の色合いがひときわ目を引いていた。古墳時代前期の「猪ノ鼻遺跡」(青森県七戸町)は発掘調査の結果、北東北の太平洋岸が北海道から南下した続縄文文化と、南東北以南から北上した古墳文化が複雑に入り混じった地域と分かったそうだ。

 古墳時代後期の「金井下新田遺跡」(群馬県渋川市)は6世紀初めの榛名山噴火による火山灰と火砕流で集落がそっくり埋まったまま出土した。火山灰の上面では逃れようとする人と馬の足跡が残り、避難の途中で窪地に落ち火砕流に埋まった10歳前後の子供2人と馬3頭も見つかった。展示中の「古墳人の首飾り」の下には「被災した子供が身に着けていた」と書き添えられていた。

 「新発見考古速報」では他に旧石器時代の「稚児野遺跡」(京都府福知山市)、江戸時末期から明治時代にかけて操業した日本最古の西洋式高炉「史跡橋野高炉跡」(岩手県釜石市)、1872年に開業した日本最初の鉄道の遺跡「史跡旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」(東京都港区)なども取り上げている。

 「我がまちが誇る遺跡」では長野県富士見町の「井戸尻遺跡群」、京都市の「公家が繋いだ京都の文化(公家町遺跡)」、和歌山県の「岩橋千塚古墳群と紀氏の遺跡」の3カ所を紹介。井戸尻遺跡群は八ケ岳西南麓に位置する縄文中期の遺跡で、60年以上前から地元住民が発掘調査と保護活動に取り組んできた。遺跡群の一つ、藤内遺跡から出土した縄文土器199点は2002年に国の重要文化財に指定されている。出土品の調査を基に考古学者藤森栄一氏は「縄文農耕論」を唱えた。英国の陶芸家バーナード・リーチや岡本太郎は土器の造形の素晴らしさに感嘆したそうだ。(写真は藤内遺跡出土の「双眼五重深鉢」)

 和歌山県の「岩橋千塚古墳群……」のコーナーでは古墳時代中期の5世紀に栄えた紀の川北岸と後期の6世紀を中心に多くの古墳が築造された紀の川南岸を比較しながら紹介している。(下の写真は北岸の楠見遺跡出土の楠見式土器)

 南岸の岩橋千塚古墳群は円墳を中心に約900基の古墳が集中する全国有数の群集墳。地域色を持つ竪穴式石室や形象埴輪が多く出土しており、国の特別史跡にもなっている。写真は㊤井辺(いんべ)八幡山古墳(南岸)出土の双脚輪状文埴輪、㊦鳴滝遺跡(北岸)出土の須恵器大甕と前山A58号墳(南岸)出土の馬形埴輪


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