CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】孔丘

2021-05-08 20:49:23 | 読書感想文とか読み物レビウー
孔丘  作:宮城谷昌光

久しぶりに宮城谷先生の本を読みました
どうやら満を持してというよりは、見切り発車でといっても過言ではない
それくらい難しいテーマだったんだそうで、
論語も読んでないへタレでわかるだろうかという感じながら
無事読み終えたのであります
孔子という人の一生をおいかけた小説、論語という思想書とは別の
人間孔子といったものを描いた作品でありました

儒教の祖的な感じで思っていたんだが、
そういうものではなくて、そもそも儒というものは
大昔からあって、かつ、礼や楽といった古学について
より深く探求した人が孔丘という人であった
そういう感じだと認識したのであります
滅びつつあった、かつての思想を取り戻すために学び続けた
その姿に感銘を受けて弟子入りしてくるあれこれ
この勃興期とも呼ぶような時期が抜群に面白かった
宮城谷先生あるある的ではあるが、
序盤は虚実というと語弊があるけども、ロマンをふんだんにまぶした
歴史虚構が素晴らしくて、読み進めていくのが止まらなくなるのでありました

論語を読んでないから、どの弟子がどうで、
どのエピソードが論語のそれなのか
さっぱりわからないまま、でも、孔子という人の思想と
その人が栄達するというか出世するのに賭ける姿が、
その思想から乖離していくようにも見えたりして
複雑なもんだなと思わされたりしたのでありました

孔子が、孔子たる思想を固めてきて
いよいよ礼というものをはっきりと体現しだしてから、
国政にかかわり、大きな物言いによって、その思想を天下に示そうというあたりで
挫折するというくだりは、正直なところ小人たるがゆえんなのか、
むしろ、そうだろうな、孔子のそれは危険というか、
あまりに楽観的にすぎるのではないかと思えたような内容に感じたのでありました
いわゆる、無抵抗主義に近い感じというか、
礼を治めることで、すべての人民が同じように考えるようになれば争いがなくなる
それをまず示すところからというのは、確かにそうだとも思えるんだが
そりゃ危険きわまりない、戦国の世の中でそんな眠いこといってたら
大変だと思ったりしたのでありました
弟子の苦労がよくわかるという感じである

そんなこともあってか、晩年の孔子は天命と称して
ほぼ何もしていないような感じになってしまっているのが
宗教家じみたというか、なんか、過ぎてしまったのだなと思わされるようで
理解されない高邁さは狂人と違わないのかもしれないなんて
思ったりしながら読んだのでありました
凄い思想家であるのは確かだが、それが天下を治める何かになりえたのか、
未だ論語、儒教は広く世に伝わるが、実践されないというあたり
ある種のロマンの塊でしかないのでなかろうか
そんな風にも思ったのであります

こういう先生像というのは、孔子から始まったとみるべきか、
松蔭先生とか、ああいった手合いのそれにも似たものを感じたのでありました

それにしても、あれだけいくつかの国を渡り歩いていたわけだが、
言葉はどうしていたんだろうと、先生をしていた事実があるだけに
ちょっと気になったのでありました
身分問わずに教えていたとすれば、言葉はその地のものでないと
難しいと思われるんだが、どうだったんだろう