原作は2009年に発売された「さだまさし」のものです。
人間関係が希薄になった現代社会の中で生まれた遺品処理業という異色
の仕事を通して、もがき苦しみながらも成長する若者の姿と、"生と死"とい
う切実なテーマの内容と、原作者が話題になっていたのでそれなりに期待
して見ました。
高校時代に起きた事件がきっかけで、心を閉ざしてしまった杏平(岡田将生)
は、父親の紹介で遺品整理業「クーパーズ」で働き始めます。
そこで知り合ったゆき(栄倉奈々)や仕事仲間と共に過ごすうちに、杏平は少
しづつ心を開きはじめるのでした。
ある日、仕事のやり方を教わっている最中、彼女の手首にリストカットの跡
があるのに気付きます。ためらいながらも少しづつ自分の過去に起きた衝撃
的な出来事を話すゆき。そして彼女は杏平の前から姿を消してしまう・・・。
監督は昨年の「ヘヴンズストーリー」で数々の受賞をした瀬々敬久で、この
作品も既に今年のモントリオール世界映画祭で、出品作品の中で最もインパ
クトを与え、革新的で質の高い作品に与えられるイノベーションアワード賞を
受賞しています。
日本での受賞は見当たらず、なんで外国で獲れるのか不思議に思うのですが、
正直言ってこの作品の演出は手ぬるいし、物語もいま一つ盛り上がりません。
特にラストはハッピーエンドにしてもおかしくないのに、無理して悲しくしている
みたいで腑に落ちません。(もともと原作は悲劇仕立てではありません)
演出云々の前に脚本が良くありません。
以前はお芝居が目も当てられなかった岡田将生と栄倉奈々の二人。今回は一
生懸命取り組んでいるし、演技にも進歩の跡が伺えて好感を持ちました。
(11月19日公開)