仲間内では結構話題になっているし、宣伝惹句に"アナタは死ぬ前に家族に
何を残す?"とあり、私は遺言ぐらいしか思い付きませんが、この映画での答
えはエンディングノートという訳です。
まあそんな事を考えながら映画館に行きました。
この作品で描かれる主人公は、監督である砂田麻美の父親です。
40年以上務めた会社の役員をやめた2年後の69才に、定期健診で胃ガンの
宣告を受け、余命いくばくもないことが判明します。
どの段階でドキュメンタリー映画にしようと思ったのか判りませんが、猛烈社
員だった頃の会社での映像や、家庭の映像にはじまり、ガン告知から半年後
に死去するまでを、主人公の次女である砂田麻美が監督・撮影・編集に当た
っています。
父親は残る人生のために、葬儀の段取り、94才の老母や家族・孫たちと如何
に過ごすかなどをエンディングノートというマニュアルにして実行、そして
安らかに人生を閉じるのです。
よく映像をかき集めたものだと感心しますが、会社員だったころの父親の映
像が素晴らしいし、特に笑顔が素敵です。
砂田監督は是枝裕和監督のもと『奇跡』などの助監督をしていたそうで、父
のガン告知後に自らカメラを回し、父親を追っかけたどんな気持だったのか
聞いてみたいです。
父の死という現実に対し感情に溺れず撮っまくったのはいい度胸ですが、父
親は本当に娘の行動を喜んでいたのか、許していたのか、このあたりも併せ
て聞いてみたいです。
ユニークな新人監督が誕生した、生き生きとした人生記録だと絶賛する人が
多い中、反旗をひるがえすようで少し気が引けますが、監督としての手腕と
いうより資料の集め方と編集の上手さは買いますが、監督としての力量は買
いません。
更にこの種の作品を映画館で公開する気持ちが、どうしても理解出来ないし、
非常に非現実な作品だと私は思うし、監督としての自己満足・自慢話としか
思えない側面があるのではないでしょうか・・・。
どんな作品でも評価は十人十色ですから更に言わせてもらいますが、私はこ
の作品、あまり好きではありません。