「八日目の蝉」などの作品で人気を誇る作家・角田光代のベストセラーで、監督は
「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八、宮沢りえが7年ぶりの映画主演作品です。
バブル崩壊直後の1994年。夫と二人で穏やかな日々を送る主婦・梅澤梨花(宮沢
りえ)は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしていて、その丁寧な仕事ぶりで周
囲にも評価されていました。
一見すると何不自由ない生活を送っているように見えた梨花でしたが、自分への関
心が薄い夫との関係にむなしさを感じていたのです。
そんなある日、顧客の孫である大学生・光太(池松壮亮)と出会った梨花は、何かに
導かれるように光太と逢瀬を重ねるようになり、ふと顧客の預金に手をつけてしまう
のです。最初は1万円を一寸だけ借りただけのつもりだったのですが、次第にそれ
がエスカレートして行き・・・。
今年の東京国際映画祭に出品され、最優秀女優賞と観客賞を受賞しているように、
宮沢りえの演技に注目です。また短い出番ですが小林聡美の存在感も買います。
演出は「桐島・・」と違って正攻法ですが、無駄なカットが結構あり、いま一つ切れ味
がありません。
銀行内部の描写もあんなに甘い銀行は聞いたこともないし、大学生に惹かれて行く
動機や過程描写が希薄過ぎて納得出来ません。最後まで彼女に対して憐憫の情が
湧かないのは当然でしょうが、ラストは見た人の想像に委ねるのは如何なものかと
思います。
とまあいろいろ苦情めいたことを書きましたが、改めてひとり舞台で光る感じの宮沢
りえに拍手を送りたいし、あの走り方一つをとっても、ただ走るのではなく、何とかし
て逃げようと懸命の走りであり、あれは彼女以外では出来ない走りでしょう。