「運命じゃない人」「アフタースクール」でどんでん返しのストーリーを展開し
て観客を驚かせた内田けんじ監督が、人生が入れ替わってしまった売れな
い役者と凄腕の殺し屋が巻き込まれる騒動を描いた喜劇です。
35歳でオンボロアパート暮らしの売れない役者・桜井(堺雅人)は、銭湯で
出会った羽振りのよい男・コンドウ(香川照之)が転倒して記憶を失ってしま
ったことから、出来心で自分とコンドウの荷物をすり替え、そのままコンドウ
になりすまします。
しかし、コンドウの正体は伝説の殺し屋で、桜井は恐ろしい殺しの依頼を引
き受けなくてはならなくなるのでした。
一方、コンドウは記憶を取り戻すべく病院を抜け出しますが、偶然に雑誌の
編集長・水島(広末涼子)に出会い、彼女の協力を得ることになります。
自分が売れない貧乏役者だと思い込んでいるコンドウは、役者として成功す
るため真面目に働き始め、徐々に事態は好転して行くように見えたのですが。
脚本も内田監督が書いたオリジナルで、全く境遇が異なる二人が入れ替わ
るコメデイであり、いつものようにどんでん返しのオンパレードです。
中々良く出来ている脚本だとは思いますが、演出とともに少々粗く、もっと緻
密に描けば傑作喜劇になっていたでしょう。
役者さんは最近多くの作品に出ている香川照之ですが、やはり達者です。
次にいいのは意外にも持ち味を上手く引っ張り出された広末涼子です。一皮
むけた演技がみものです。
堺雅人も熱演ですが一寸演技の伸びが止まっているのではないでしょうか。
先にどんでん返しのオンパレードと書きましたが、どんでん返しは一度か二
度あってこそどんでん返しであり、ここまでやると味が薄くなります。
いずれにしても細かい不満はあるものの、私は好きな部類に入る一本です。
( 9/15 キャナルシティ 初日 13:10の回 68人)
~ご挨拶~
明20日からインドに行ってきます。
さまざまな文化・宗教、そして豊かな自然という魅力が溢れている待望のインド
です。
行きがけに上海に立ち寄り、半日を過ごすことになっていますが、このような時
期なので注意して参りたい思っています。
そういう事で、このブログは明日からお休みし、来月1日(月)から再開させてい
ただきますので、宜しくお願いいたします。
余談めきますが、つい最近テレビ番組「モーニング・バード」で懐かしい知人の
姿を発見しました。
「日活100周年記念」を扱った番組で、元日活の宣伝部長・植松康郎氏(86才)
です。
彼は日活九州支社の宣伝課長をやっていた時期があり、我々は各社で激しく
宣伝合戦を展開してはいましたが、仕事を離れて各社宣伝課員が全部揃って
忘年会をやるなど、親密な間柄であったことなど、当時の映画界って不思議
な世界でした。
その彼が日活の生字引としてテレビ取材を受け、作品のこと俳優のことなど
おしゃべりしていましたが、「いい映画が作れる一番大事なことは、スタッフ
もキャストが、会社を限りなく愛すること・・・」と述べていました。
私もその言葉に全く同感だし、今の映画製作の状態と敢て比べるつもりはあ
りません。
それよりも私は毎日のように映画の感想を書いては辛口で悪口ばかり。これ
でいいのかの自問自答の結果、私たちOBの役目は新しい作品を云々ではなく、
思い出専門でいいのではと思っている次第です。
今でも月に30本前後の新作を見ていますが、これからは映画界の回顧話とか、
旅の話、地元の特異な話題とかを主にし、箸にも棒にもかからない映画は取り
上げないことにし、素敵で皆様にお薦めしたい映画に絞り感想を書きたいと考
えています。
インド旅行の間に、その考え方が少し変化するかも知れませんし、このブログ
はタイトルを変えたとしても続けて参りますので、改めて宜しくお願いします。
中島けん