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昨夜の地震はこれからどう影響していくんでしょうか。溜まっていたエネルギーが全て放出されたとみるのか、タガが外れたとみてこれからなのか、ほかの断層に影響していくのか、分かりません。しばらく要注意です。
農協の改革
もう一つ、これからの農業で欠かせないのは、今まで、戦後の日本農業を支えてくれた農協、JAグループ。このJAグループの皆さんの在り方も、今、問われている。
農協法が改正されて、今、JAグループは自己改革という言葉で改革を進めようとしている。本当に自己改革できるのかが問われる。
戦後の日本農業は、農家の皆さんは、農協を使うしかなかった。そして時に、その利用を強制された。農協法が改正されたその大切な理念の一つは、これからの農協は、組合員に農協利用を強制するのではなく、組合員が、使うことにメリットを感じるから農協を利用するという組織に変わらなければいけないということです。
つまり、組合員であっても農協を使うこと、使わないこと、それは農家の皆さんの経営の判断である。そういった環境をしっかり作ることによって、頑張る農家が報われる環境を作ります。つまり、今までの協同から共走をしっかりとやっていかなければいけない。切磋琢磨して、磨きあって、それが結果として、頑張る農家が報われる。そういった姿を、私はこの世界で作っていきたい。
何度も言いますけど、儲からないのが農業で、そして協同が大事だから、突出することが許されないで上手くいってたら、否定することは何もありません。それは、どっちの方向に行くべきかは、明らかではないでしょうか。
特に私が、大切だと思っていることは、JAグループの中で農家の皆さんが使う資材、餌、肥料、農薬、ダンボール、ハウスのパイプ、農業機械、こういった資材の価格が、国際競争力の観点からすると何故日本は高いのか。その高止まりしている構造に、しっかりとメスを入れないといけないと思っています。その資材の部分、それと同時に変えなきゃいけない流通の構造。この部分で大きな役割を担っているのが、全農という組織です。全農は唯一JAグループの中で、物を扱っている組織です。その物を扱っている組織が、本来果たすべき使命は何かというと、協同組合の良い部分を生かして、独禁法から適用の除外を受けている、共同購入という機能を発揮して、みんなでメーカーと向き合って、一円でも安く、適切な落札で良い品質のものを農家の皆さんに卸すという、共同購入の機能を発揮していれば、組織としての役割を果たしているということになるでしょう。
しかし、この組織は、原発事故があった前の経産省と同じような組織で、規制する側の役割と、推進する側の役割が同じ体の中にあるように、農家の皆さんに資材を一円でも安く売ることが使命である部分と、農家の皆さんにできる限り高く、そして利用回数は多く、利用の量も多ければ多いほど稼ぎが上がるという、そういったメーカー的な要素、流通の企業の要素、これを同時に持っていることで、本来果たすべき一円でも安く農家の皆さんに提供して、一円でも多くの農家の皆さんの手取りを実現するということが出来ているかということに対して、私は大きな疑問を持っています。
この組織の在り方にしっかりとメスを入れて、本来果たすべき共同購入の大切な役割をこれからも発揮できる組織になれるかどうか。自己改革というのであれば、今日出席している農協関係の皆さん、是非、考えて頂きたいと思います。私は、秋に取り纏めを行いますけれども、それまで建設的な対話が出来るか、それとも、自己改革するから放っとけと、口出すなと云うのであれば、結論は出さざるを得ない。そういった分岐点にあることは、全農の中野会長にお伝えをしてあります。
因みに、目の前にいる農林中金の河野理事長は、私が農林中金を要らないという、「農林中金96.3兆円の大きな資産を持っているのに、0.1%しか農業関係に融資していない、だったら何故名前が農林中金なんですか。名前、中央金庫でいいんじゃないですか」。そういったことに対しての河野理事長は、非常に前向きのメセージを発信して頂いて、これから農業の世界の構造改革に、そして業界の再編に、金融機関として使命を果たすべく、しっかり必要な資金は提供していくという、そういった記者会見を全中の奥野会長、全農の中野会長と、共同の記者会見でお話をされました。ビックリしたのは、その再編の必要性を真っ向から否定した全農の中野会長という構図であって、大変JAグループの中でご苦労されているなと、今後の動きを期待して見ていきたいと、そういうふうに思っております。
因みに、先ほど農家の高齢化の問題をあげましたけど、ココに対処することが最大の課題といっても過言ではありません。今まで農業に従事する人というのは、基本的に農家の後継ぎ。それに限られていたところを、やりたい人が入れるような環境を作らなきゃいけない。参入障壁を下げるということを、これから進めていきます。
今日は、国家戦略特区で企業による農地の所有が認められた兵庫県の養父市の方も会場にお見えだと聞いていますけれども、そういった形で、企業の皆さんにも入ってきてもらいたい。そして、農業をやりたいという若い人たちにチャンスをしっかりと与えて、これから、農家を増やすのではなくて、農業経営者を増やしていく政策をやります。
そういったことを進めていくことによって、農業の世界を協同から共走へ、そしてアグリカルチャーという文化的、そういった産業とは少し違う発想が大部分を占めていた農業の在り方から、アグリカルチャーという部分は否定はしません。しかし、アグリビジネスが成り立つ環境をしっかり根付かせていきたいと思います。
マーケットは世界
そのためにも、何が今、消費者から求められているかをしっかり考えたうえで生産を行うという、今の言葉で言うとマーケットイン。需要に応じた生産を考えるのが当たり前の世界に変えていきます。
これをやることが、これからの農業で求められていることであり、2年後の30年産のお米から、いわゆる減反が廃止される新しい環境の中で、これから当たり前になっていくのは、作って出して終わりの世界ではなくて、何が必要とされているかをしっかりと市場のニーズを把握して、生産を考えるという農業に変えていかなければなりません。それが出来れば、日本の農業は、ものすごく発展できます。
私が見ている先というのは、これだけ日本の食のレベルは高い、多様性もある。そして品質が高い。このことが今のままだったら、日本の農業は、技術で勝って、ビジネスで負ける、ということになる。今日は商工会議所会長の三村さんもおいでですけども、これは農業だけの課題じゃないと思う。技術で勝って、ビジネスで負ける日本。これを技術でも、ビジネスでも勝つ日本にしなきゃいけない。農業はそれが出来る。
そして、それがこれからの2020年以降の議論にも繋がっていくことですが、私は輸出という言葉も、あまり多用しない方がいいのかもしれないと思っている。それは、輸出という言葉を使えば使うほど、国内のマーケットと、海外のマーケットという発想の中に壁が生まれて、日本のマーケットはアジアと一体だとか、TPPのマーケットと一つだとか、世界のマーケットと一つに統合されている中でどのマーケットを取っていくという発想が生まれにくくなる。
これからは世界のマーケットの中で日本がどこを取るのか、それは国内のマーケットと一体化だと。そういった形での経済構造や発想を根付かせていかなければいけない。日本の潜在成長率は、もう0パーセントですよ。しかも毎年人口は減るんですから。そりゃ、当然です。もちろん、頑張ればもっと上げられるけど、ほかの国々にはなかなか敵わない。もう、高度経済成長は無い。
だとしたら、日本が考えるべきことは何かと言ったら、世界に中産階級を増やすことでしょう。世界をもっと豊かにして、この食の世界で言えば、豊かになればなるほど、お腹を満たすという食べ物の食べ方から、美味しい良いものを安心安全な物を食べたいという発想に人は変わってくる。その国が出てくれば出てくるほど、日本のマーケットは増える。
そういった将来像を描いているからこそ、これからTPPは、まず日本は約束を果たして通さなければいけないし、TPPがどうなろうとも、日本の構造としてこれからも抱えている今日お話ししたような構造的な課題をしっかりと解決していった先に、世界の中で食のリーデイング・カントリーは日本だと。食の世界の認証、基準、そして技術、品質。これらは、日本で達した基準が世界基準だという、オリンピックでいえば日本新記録を達成すると世界新記録になるような、そういった環境に変えていくことが、今私が農業の関係で取り組んでいることであります。
農業の関係で、皆さんに呼びかけをしたいことがある。
日本の食を将来も支えて、これだけ美味しい、多様性のある食を守っていくためには、農業の基盤を守らなきゃいけない。農業の皆さんの生活を、より良くしなきゃいけない。私はそのために頑張りたい。農業というのは、政治のあらゆる政策の中で、誰も無関係な人はいない。毎日ご飯を食べるということは、毎日農業と接してる。そういった中で、皆さんが毎日スーパーで何を買うかが、日本の食を支えるんです。
私が最近会った福島の農家から、こういう言葉を聞きました。
「これからの消費者は、二極化をしていく。一つは、安ければ何でもいいという消費者。もう一つは、道徳や哲学を持った意志のある消費者。もしも農家が、安ければ何でもいいという消費者に向けて仕事をしたら、農業は終わる。だから自分たちは、意志のある消費者の皆さんに選んでもらえるのは何かを考えて、これから農業をやって行きます」という力強い言葉がありました。そういった、意志のある消費者の心を掴みたいと思って必死で頑張っている。意志のある生産者を支えられるかどうかは、私たち消費者の日々の選択にかかっています。どうか、今日を機に、スーパーでの買い物、何処に食べに行くか、何を選ぶか、皆さんの日々の選択の蓄積が、日本の食の未来を、農業の未来を形作るということを、是非、考えていただきたいと思います。