読書三昧(28年9月)
手術・入院からほぼ回復。劇場や美術館に行くことも出来た。まあいいひと月だった。
読んだ本
小池真理子『二重生活』
奥泉光『ビビビ・ビ・バップ』
唐十郎『ビニールの城』
北村想『遊侠沓掛時次郎』
奥山酔朴『明日無き今日』
須藤昌義句集『巴波川』
☆小池真理子『二重生活』
7月に見た門脇麦・長谷川博己の主演映画『二重生活』の原作本。
濃蜜な感じのした映画に比べ小説は淡白な味わい。多少筋も違っている。
大学院生である白石珠は文学的・哲学的尾行と称して、たまたま町で見つけた近所に住む編集者石坂の尾行を始める。石坂の普段見かけているよき夫・よき父親と違う部分を知るのだが、逆に尾行を石坂に知られてしまい・・・。
小説では白石珠がまた違う人物の尾行を始める所で終わるのだが、映画がどういう形で終わったのか思い出そうとしたけれど、思い出せなかった。
☆奥泉光『ビビビ・ビ・バップ』
661ページもある長編。寝転がって読むにはちょっと重い。本のあまりの厚さに躊躇してしまうが、読みだすと面白い。
まずこの作者はどれだけの知識が頭に入っているのだろうかと感心してしまう程に話題が豊富。
発想が凄い!筋が凄い!知識から雑学まで凄い!文体がまあまあ凄い!ボリュームが凄い!結末が見えないのが凄いなどすべてに驚かされる。まあ読んでみて欲しいというしかないすごさ。過去にこの著者の作品『東京自叙伝』『メフィストフェレスの定理 地獄シェイクスピア三部作』なども面白かったが、ワンランク違う感じ。ただ昭和の一時代の有名落語家や将棋名人、昔の外国のジャズ奏者のアンドロイドが多数出てくるが、今の若者にはイメージが湧かないかもしれない。一方でロンギヌス物質、フィボナッチ数列、異相空間などの馴染みのない言葉も頻発する。それでも読ませるのが凄いと私は思うけど、駄目な人もいるかもしれない。とりあえずオススメ。
☆唐十郎『ビニールの城』
8月にシアターコクーンで上演された森田剛・宮沢りえ主演の『ビニールの城』の脚本。
私は残念ながら芝居を見ておらず、脚本だけで唐十郎の世界をわかることはむずかしそうだ。
☆北村想『遊侠沓掛時次郎』
9月に見た新国立劇場で見た芝居の脚本。芝居は9月27日のブログで紹介済み。
☆奥山酔朴『明日無き今日』
著者の思いが一杯詰まっている、短歌・俳句・温泉めぐり中心のエッセイ集。俳句のみ紹介。
かあさんの香り包みし夏帽子
ひらく程哀れ残りし花火かな
二人して身辺整理冬日向
種袋振りて幽かな夢の音
心意気富士に行き着く山開き
☆須藤昌義句集『巴波川』
探梅行野菜売場に皆ゐたり
黒板に夢の一文字卒業す
螢舞ふ闇に流れのあるやうに
蠅叩ありぬ寅さん記念館
今年竹伸びよと空をあけておく