読書三昧(28年1月)
癌の5年生存率の統計が新聞に出た。意外に生存率が高いと思ったが、それはあくまで平均で、癌の種類や見つかった時の進み具合で全然違うことがわかり少しがっかり。
1月に読んだ本
荻原浩『金魚姫』
中山七里『闘う君の唄を』
川上弘美『なめらかで熱くて甘苦しくて』
林真理子・見城徹『過剰な二人』
長谷川櫂『芭蕉の風雅―あるいは虚と実について』
伊藤式郎句集『切絵の森』
能美昌二郎句集『長州砲』
☆荻原浩『金魚姫』
仏壇・仏具会社の営業員である潤と金魚姫の物語。先が予測不可能な展開。笑えるがベースは悲しい純愛小説。
☆中山七里『闘う君の唄を』
幼稚園年少の新任先生が、モンスターペアレンツ達のクレームと闘うなかで、次第に成長していく姿が描かれる前半。ネタばれになるので書けないが、後半内容はがらっと一変する。万一前半で飽きた人も一応最後まで読んで欲しい。
☆川上弘美『なめらかで熱くて甘苦しくて』
短篇5編からなるがどれもとらえどころがない不思議な小説。わからなくなって、何度も前へ戻りながら読んだ。感覚で読まされる感じ。これも作者独特の才能なのだろう。
☆林真理子・見城徹『過剰な二人』
作家と編集者。個性的な二人が、人の生き方を自分の過去を語ることにより教えてくれる。それぞれに厳しい現場で活躍している人の話だけに説得力もある。あとがきで林真理子自身が認めているように、内容が具体的な見城徹の文章の方が圧倒的に面白い。
☆長谷川櫂『芭蕉の風雅―あるいは虚と実について』
芭蕉七部集のうち『冬の日』『猿蓑』『炭俵』の歌仙を取り上げ、芭蕉の風雅すなわち「虚に居て実をおこなふ」芭蕉の考え方をわかりやすく述べている。
連句のつながりは詠み手や捌きのイマジネーションによるものだから読み解くのは中々難しいが、長谷川櫂の解釈には無理がないように感じた。驚くのはこの手の本は過去の誰かの意見を参考にするものだが、それは一切ない。全部自分の考えで書かれているのが凄い。面白い小説を読むのと同じように先を次々読みたくなった。文句のない好著。
☆伊藤式郎句集『切絵の森』
草登り詰めたる天道虫どうする
寒満月切絵の森となりにけり
新酒酌むいい人どこかもの足らず
沈丁花むかし湯殿はほの暗し
冬紅葉散る敗者にも勝者にも
☆能美昌二郎句集『長州砲』
広告に背を貸すベンチ冬の駅
傘の子に取り囲まれて蝌蚪の国
散歩とは小さき冒険五月晴
鳥帰る空に磁石のあるごとく
晦日蕎麦布屋太兵衛は駅の中