酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

読書三昧(26年10月)

2014-11-03 09:51:54 | BOOK


読書三昧(26年10月)
抗がん剤の副作用で、歯がぼろぼろになってきた。食事ができなくなると困るんだけど・・・。

10月に読んだ本
岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿3―心を乱すブレンドは』
横山悠太『吾輩ハ猫ニナル』
内田康夫『風葬の城』
下村敦史『闇に香る嘘』
吉武千束 句集『太古のこゑ』

☆岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿3―心を乱すブレンドは』
この小説を読むとつい比較してしまうのが、三上 延の『ビブリア古書堂の事件手帖』のシリーズ。私は文章の流れや主人公のもつ雰囲気から、『ビブリア』の方が数段上回ると思ってきた。しかし『ビブリア』の巻5が多少息切れを感じたのに対し、今回の『珈琲店タレーラン』の巻3は充実した作品になっている。
パリスタ(珈琲を淹れる知識や技術を持つ人)大会に参加した「珈琲店タレーラン」の切間美星が競技中に起きた異物混入事件を推理し解決していく話。事件が続いて起きるのに大会が順調に進んでいくことに違和感はあるが、推理のための新しい事実がどんどん出て来ることで引き込まれる。
私の中で二つの作品の評価はかなり接近してきた。

☆横山悠太『吾輩ハ猫ニナル』
第57回群像新人文学賞受賞作。
ともかくとぼけた味わいの小説である。
中国で暮らす日本人の「わたくし」が、「日本語を学ぶ中国人を読者に想定した小説を書く」ことを思い立つ。
主人公は日本人の父と中国人の母をもつ青年。ビザの関係で一人で日本に行くことになるのだが、秋葉原で猫ニナルというお話。これでは何の話かわからないが、とりあえず読んでもらうことにして、この小説のいいのは夏目漱石との小説の絶妙の距離感にあると思う。

☆下村敦史『闇に香る嘘』
第6回江戸川乱歩受賞作
中国残留孤児問題をしっかり描きながら、ミステリーとしても面白く読ませる。ただすべてに緻密に描かれている上、主人公が盲目であることなどから全体に印象は重い。
現代の小説としては異質で、好みは分かれるだろう。作中に出てくる点字の暗号文は江戸川乱歩の『二銭銅貨』を思わせ興味深いが、凝りすぎていて現実には相手にうまく伝わるのが難しい気がするが・・・。

☆吉武千束 句集『太古のこゑ』
春や子の棒持てば土叩きけり
落椿あなたでしたかあの音は
霜柱踏めばはきはき応へけり
亡き夫の月日も遺品盆支度