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就活

 「懐かしいなあ」
中学受験のため小学生の頃に私の塾に通っていた女の子が、久しぶりにやって来て、教室に入って呟いた。今大学4年生だから実に10年ぶりにやってきたことになり、その感慨も当然だろう。あんなに小さな女の子だった彼女が、今ではもう立派な女性だ。車を運転して、化粧をして・・、私の方が照れてしまうほどの変貌ぶりだったが、話し方や素振りなどは昔のままだ。それがおかしくて、ついつい私も心が弾んでくる。
 彼女がやってきた理由は、就活の一環で、学力検査のようなものをネット上で受けなくてはならないため私に手伝ってほしいというものだった。ついこの間までは、彼女の弟が大学受験で塾に通ってきていたし、彼女自身も今年初めに松井の写真とワールドチャンピオンとなった記念のペナントをアメリカ土産で買ってきてくれた。(このブログの記事にもした・・)。そんな彼女から電話がかかって来たのだから、一肌脱がぬわけにはいかない。就活などしたことのない私では何も役立つアドバイスなど与えられないが、数学の計算問題と国語の問題が出されるという学力検査なら、なんとか役に立てるだろう。そんな気持ちで、具体的なことは何も聞かないまま、彼女の申し出を引き受けた。
 
 現在、私の息子も就活中で、今年の就職事情は超氷河期だ、と何度も耳にした。息子も書類審査で落とされること度々で、面接まで進んだことが少なく、かなり落ち込んでいた時期もあったようだが、幸いなことに一社から内定がもらえたとの連絡が少し前にあった。あまり大きな会社ではないようだが、今のご時世贅沢は言ってられない。塾を継ぐことなど親子ともども頭の片隅にもないから、とりあえず就職先を確保できたのは実に喜ばしいことである。
 そんな就職難の状況を少しばかり見聞きしていただけに、彼女が一生懸命になるのもよく分かる。彼女の場合、まだどこからも内定がもらえてないのだそうだ。エントリーシートは100社近くは出したものの、実際に面接を受けさせてもらったのは、1ケタ程だったそうで、まさに超氷河期を実体験しているだけに、言葉の端々に苦労がにじみ出ている。今から受験しようとしている会社がどれだけ学力検査の結果を重視しているか分からないが、少しでもいい点をとっておきたいからと、私に助け船を求めてきたようだ。
「数学は10分で50問、国語は400字程度の文章を読んで内容についての問題が4問ずつ、合計を32問を9分で答える」のだそうだ。
「それは時間的にちょっときついなあ。でも、一緒に頑張ってみるか」
 私の専門分野だけにたぶん何とかなるだろう・・。

 まずは数学。最初はごく簡単な問題だったが、徐々に面倒な計算になっていった。空欄に入る数字を求めるという逆算の問題ばかりになって、計算機や紙と鉛筆を駆使して、必死で解いていった。私が出した答えを、パソコン上で4択になっているうちから彼女が選んで送信する。そんなことを繰り返していくうちに、あっという間に時間は過ぎて行って、「終了」となってしまった時には、45問ほどしか解いていなかった・・。コンプリートできず、残念・・。
「ごめんね、全部解けなかった」
「いいですよ、そんなの。1問10秒くらいで解いていかなくちゃいけないのは辛いですよね・・」
「そうだけど、全部解きたかったなあ・・」
 気を取り直して国語の問題。これも私が文を読んで相応しい答えを考え、それを画面上で選ぶのが彼女の役目になった。
 しかし、400字程度の文章がすべて就職面接での心構えのような内容ばかりで、読んでいてまるで面白くない。しかも設問を読んで、それが「本文の趣旨に合っている」、「外れてはいないが、強く主張していない」、「的外れ」といた3つの内のどれかに分けなくてはいけない問題で、ずいぶん読み取りにくくてかなり苦労した。それでもこちらは何とか全問解くことはできたが、果たして何問正解できたのか、はなはだ心もとない・・。 

 その後彼女は、英語のテスト、性格検査の2つに取り組んでいたが、なかなか難しいと言っていた。すべて終了後、彼女は解答を送信しておいたようだが、どれだけ私の助力が役だっただろうか、心配だ。なんだかズルをしているような気にもなったが、そんなきれいごとばかりも言っていられないのが現状だろう。こうなったら、私の少しばかりの努力が実を結ぶよう、神仏に願うのみである。
 吉報を待つ!!


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