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むくみ

 日曜の夜、ふと足元を見たらなんだか足が腫れているような気がした。その時は酔っ払っていたから、変なの、とさほど気にもしなかったが、月曜の昼になってまた足を見たら、やっぱりむくんでいた。右足はさほどでもなかったが、左足は見るからにおかしい。土踏まずのアーチがなくなりかけているし、甲も皮膚がぽっと腫れたようになっていて、右足と比べると明らかに違う。右足は血管が浮き出てるのに左足は一本も出てなくて、なんだかぬめっとしている。私がしげしげと眺めていると、近くにいた妻が「あれ、腫れてる。おかしいよ」と一目で見抜いた。絶対に嫌味を言われるから見つけられたくはなかったが仕方ない、「うん・・なんか変だよね」「右も腫れてるけど、左のほうがひどい」と言って、足を指で突っつく。「ほら、ちょっとプニプ二するよ。腫れてるじゃん。飲みすぎなんだって。いつも言ってるでしょ、休肝日を作れって。言うこと聞かないからこうなるんだわ。入院したら、私は看病しないからね」と手厳しい。「こんなものすぐに直るさ」と、私は嘯いてみたが、内心少なからず動揺した。ちょうど今、従兄弟が肝臓を悪くして入院しているが、見舞いに行ったときに見た、パンパンに腫れた足を思い出して、ちょっとまずいかなと思った。まあ、大したことはないだろうけど、ちょっと今日一日くらいはおとなしくしておこうかなと、その夜はビールを飲むのをやめて寝た。
 飲まずに寝ると寝つきが悪い気がして、ついつい毎晩飲んでしまっているのが、ここに来てちょっと体が警告を発したのかなと思う。息子が生まれる前までは、ずっとタバコを吸っていたが、息子が生まれるとすぐに、どういうわけかタバコを吸うたびに胸が苦しく痛くて仕方なくなって、自然とタバコを吸わなくなった。というよりも吸えなくなった。今回のむくみもそれと同じように体が教えてくれたのかもしれない。センサー機能などというほど立派なものではないだろうが、ちょっと言うことを聞いておいたほうがいいなと素直に従ってみた。火曜の夕方頃になって、全身からビールが抜けたような気持ちになって、これは調子がよくなったかなと足を見たら、大分普通に戻っていた。右足はもう元通りだったが左足にむくみが多少残っていたため、もう一晩飲まずにおこうと決めておといなしく寝た。飲みたいとも余り思わなかったし、ぎりぎりまで起きていたためすっと眠ることができた。
 2晩連続でビールを飲まなかったのは、実に5年ぶりくらいだ。5年前、酔っ払って二階から降りるときに階段を踏み外して、階段の下に置いてあった箪笥に背中からぶつかって肋骨を3本折ったことがある。その時はさすがに1週間近く飲まずにいたが、私にとってはそれ以来の快挙だ。5年前は、1週間経って、じゃあ久しぶりに飲むかと思って飲んだビールの美味しかったこと、まさしく五臓六腑まで染み渡る感覚が実感できた。酔いの回るのもいつもより早くて、これもたまにはいいなと思ったものだが、それ以来そんなことはしたことがなかった。いつもついつい惰性で飲んでしまう、そんなことがずっと続いていた。
 妻は、月・火を休肝日にしている。私にも口を酸っぱく「休肝日を作れ、休肝日を作れ」と繰り返すが、私が従わないものだから、イライラが募るのだろう、「飲み続けて死んでもいいけど、迷惑掛けないように一気に死んでよ」と憎まれ口を叩く。「おう、そのつもりだよ」と私も言い返してやるが、まだちょっとそんなことになっては困る。
 飲まないで寝ると寝つきが悪いという強迫観念らしきものが私の中にあるのかもしれない。今度のことで、飲まずに寝てもちゃんと寝られることが体で分かったことは嬉しい。このまま、もうちょっと断酒生活を続けてみようかなと今は思っている。
 でも、冷たく冷やしたビールを風呂上りにぐっと一息で飲み干す快感にいつまで背を向けていられるだろうか。自信はないけど、できるだけ頑張ってみよう。
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