議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

廃棄物処理法施行令第1条第1号と第2号~特別管理一般廃棄物~

2008年03月19日 08時38分49秒 | 廃棄物議

すこし間が空いてしまいましたが、前回の続きです。廃棄物処理法施行令第1条の各号を紹介します。

***************************************************
【第1号】
次に掲げるもの(国内における日常生活に伴つて生じたものに限る。)に含まれるポリ塩化ビフェニルを使用する部品
イ 廃エアコンディショナー
ロ 廃テレビジョン受信機
ハ 廃電子レンジ
***************************************************

→ここでの注意は「国内における日常生活に伴つて生じたものに限る」くらいですね。
 この部分で疑義が生じたという事例は知りません。もしよい例をご存知の方がいらっしゃれば教えてください。

***************************************************
【第2号】
別表第一の一の項の中欄に掲げる施設において生じた同項の下欄に掲げる廃棄物(第2条の4第6号、第7号及び第9号に掲げるものを除く。)
***************************************************

<こんなに短い条文なのに、ひとつひとつ追っていくと、とてつもない長旅になります。>

■「別表第一の一の項の中欄」とは

★さて、慣れないと読みにくいのが「別表第一の一の項の中欄」とか「同項の下欄」という表記。チビローも時々読み間違えてしまうことがあります。★
 
 ■■「別表」
 この条文は「施行令」に記載されていますから、「別表」とは施行令の別表を指しています。施行規則に「別表」とあるときは施行規則の別表をさします。施行規則中に「令別表」とあれば施行令の別表となるわけです。

 ■■「別表第一の一の項」
    とは、『別表第一』の『一の列(行?)』という意味です。

 ■■「中欄」
    とは、まさしく真ん中の欄という意味です。「下欄」であれば一番下です。条文は縦書きですから別表も縦書き。必然的にこのような言い回しになってしまうのかもしれません。


■では、別表第一の一の項を見てみましょう!
 -----------------------
 (上欄) 一
 (中欄) 第5条第1項に規定するごみ処理施設であって、環境省令で定めるもの
 (下欄) ばいじん(集じん施設によって集められたものに限る。以下この表において同じ)
 -----------------------
 条文では「中欄に掲げる施設において生じた同項の下欄に掲げる廃棄物」とされていますので、中欄の条件と下欄の条件はAND条件ということになります。

 つまり、中欄に掲げる施設以外で生じた下欄の廃棄物や、中欄の施設で生じた下欄以外の廃棄物は特別管理一般廃棄物には該当しないということですね。

 >>>(中欄)環境省令で定めるもの
  -----------------------
  【環境省令=施行規則第1条第1項】

  廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令別表第一の一の項の環境省令で定めるごみ処理施設は、
   ①ばいじんを焼却灰と分離して排出し、貯留することができる灰出し設備及び
   ②貯留設備が設けられている
  焼却施設とする。
  -----------------------
   →読みにくいので①と②を補い、改行を挿入しました。

■コレで解決!・・・ではありません。もう一度【第2号】に戻ってみましょう。

***************************************************
【第2号】
別表第一の一の項の中欄に掲げる施設において生じた同項の下欄に掲げる廃棄物(第2条の4第6号、第7号及び第9号に掲げるものを除く。)
***************************************************

 ★( )書きを忘れてはいけません★

 以下に該当するものは特別管理一般廃棄物から除かれます。
 つまり『一般廃棄物』になります。

-----------------------
施行令第2条の4
【第6号】
法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物の焼却施設(一時間当たりの処理能力が200kg以上又は火格子面積(火格子の水平投影面積をいう。以下同じ。)が2m2以上の焼却施設であつて、環境省令で定めるものに限る。)において発生するばいじんであつて集じん施設によつて集められたもの及び当該ばいじんを処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)

【第7号】
別表第三の14の項に掲げる施設において法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物の焼却に伴つて生じたばいじん(集じん施設によつて集められたものに限るものとし、前号に掲げるものを除く。)又は燃え殻(これらに含まれるダイオキシン類の量がダイオキシン類対策特別措置法第24条第1項 の環境省令で定める基準を超えるものに限る。)及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの(環境省令で定める基準に適合しないものに限る。)

【第9号】
ばいじん(集じん施設によつて集められたものであつて、法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物であるものに限る。)
-----------------------

ふ~。長旅はまだまだ続きます。読みにくいところはご容赦ください。


【第6号】短くすると次のとおりです。

 ◎法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであって
 ◎集じん施設によつて集められたもの及び当該ばいじんを処分するために処理したもの

  ◆焼却施設:一時間当たりの処理能力が200kg以上又は火格子面積(火格子の水平投影面積をいう。以下同じ。)が2m2以上の焼却施設であつて、環境省令で定めるものに限る。

   →環境省令 = 施行規則第50項 = 前条第1項に規定する施設 ・・・元に戻りましたね。

  ◆処分するために処理したもの環境省令で定める基準に適合しないものに限る。

   →環境省令 = 施行規則第51項:「環境大臣が定める方法により処理したものであること。」

      →環境大臣が定める方法:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第1条第2項及び第1条の2第51項の規定に基づき環境大臣が定める方法(厚生省告示第4号 平成12年1月14日)」
         ↓
       結論は・・・
       「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法(厚生省告示第194号平成4年7月)」 ということです。


【第7号】これも、まずは噛み砕いてから詳細を確認します。
     以下の施設の要件と廃棄物の要件もAND条件の関係です。

   (施設の要件) :別表第三の14の項に掲げる施設
   (廃棄物の要件):法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物の焼却に伴つて生じた
           ばいじん  ・・・( )書きあり。
           又は燃え殻 ・・・( )書きあり。
           及びこれらの廃棄物を処分するために処理したもの ・・・( )書きあり。


  (1)また出てきました「別表」。今度は施行令にある「別表第3」の14番の列(行?)です。

     <別表第3 14の項>
      →ダイオキシン類対策特別措置法施行令別表第一第5号に掲げる施設
           ↓
       -----------------------------
       廃棄物焼却炉であって、火床面積(廃棄物の焼却施設に2以上の廃棄物焼却炉が設置されている場合にあっては、それらの火床面積の合計)が0.5m2以上又は焼却能力(廃棄物の焼却施設に2以上の廃棄物焼却炉が設置されている場合にあっては、それらの焼却能力の合計)が一時間当たり50kg以上のもの
       -----------------------------

  (2)次は 法第2条第4項第2号です。ここでピンと来たかたは素晴らしい!
     「産業廃棄物」の条項で、第2号とは普段あまり意識しない箇所です。
           ↓
       -----------------------------
輸入された廃棄物(前号に掲げる廃棄物、船舶及び航空機の航行に伴い生ずる廃棄物(政令で定めるものに限る。第15条の4の5第1項において「航行廃棄物」という。)並びに本邦に入国する者が携帯する廃棄物(政令で定めるものに限る。同項において「携帯廃棄物」という。)を除く。)
       -----------------------------

      ・・・これもわかりにくい文章ですよね。この解説は「産業廃棄物」のときに行いますので、今回は飛ばしたいと思います。

  (3)ばいじんの( )書き
-----------------------------
集じん施設によつて集められたものに限るものとし、前号に掲げるものを除く。
-----------------------------

これは簡単ですね。第6号のものは除くと言っています。


  (4)燃え殻の後の( )書き
-----------------------------
これらに含まれるダイオキシン類の量がダイオキシン類対策特別措置法第24条第1項 の環境省令で定める基準を超えるものに限る。
-----------------------------

     まず、間違えてはいけないのが、この( )は燃え殻にではなく「ばいじん又は燃え殻」に掛かっているということ。
     では中身ですが、『ダイオキシン類対策特措法第24条第1項の環境省令で定める基準』ですね。「法第24条・・・」と言っておきながら「省令で定める」とありますから、「法第24条・・・」を見ても省令に飛ばされるんだなぁと覚悟しながらダイオキシン類対策特措法第24条第1項を引いてみましょう。やっぱり飛ばされます。→「廃棄物焼却炉に係るばいじん等に含まれるダイオキシン類の量の基準及び測定の方法に関する省令」・・・環境省のHPではリンク切れ。ひどい!検索エンジンで省令名をキーワード検索してようやく見つかりました。[3ng/g]です。

  (5)処分するために処理したものの後の( )書き
-----------------------------
環境省令で定める基準に適合しないものに限る。
-----------------------------
     →環境省令 = 施行規則第1条の2第52項 = ダイオキシン類の含有量が[3ng/g]

【第9号】以下のものに限ります。

   (施設の要件) :集じん施設によつて集められたもの
   (廃棄物の要件):法第2条第4項第2号 に掲げる廃棄物
            →さっきと同じ。この解説は「産業廃棄物」のときに行いますので、今回は飛ばします。

***************************
ようやく施行令第1条第2号の解説まで終わりました。
最後のほうは、どこを歩んでいたのか忘れてしまうほど長いですよね。

実務でのポイントは、
①全てを完璧に理解しようとしない。
②施行令に記載されているレベル(第2号の場合は別表レベル)を把握し、「自社の廃棄物が該当するかもしれない」と気づける状態にしておくこと。
③自社が該当するかもしれない条文について、細かく読み解いて、法の適否を見極める。
ということではないでしょうか。

さて、次回ですが特にご要望がなければ、法律第2条第4項「産業廃棄物」の解説に移りたいと思います。施行令第1条第3号だと、また今回のように長い解説になり、いつまでも特別管理一般廃棄物の解説から抜け出すことができませんので。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「再生」という処分方法?? | トップ | 生物多様性とカイチュウ »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日常生活に伴つて生じたもの?? (BUN)
2008-03-21 00:23:56
堀口先生のご見解を!!
今回の解説の通り政令の第1条では「国内における日常生活に伴つて生じたものに限る」とわざわざ括弧書きがあります。そもそも、この政令は法第2条第3項を受け「一般廃棄物のうち」「特管一廃は」の説明なのですから「日常生活に伴つて生じたものに限る」は不要なのではないか思うのですが、どうしてこのような形容詞がついているのでしょうか?
「国内における」は輸入廃棄物の関係があるから理解できるのですが・・・
「日常生活に伴つて生じたもの」以外の一般廃棄物ってなに?
返信する
なぞですね (堀口昌澄)
2008-03-23 14:41:29
BUN様

「事業活動に伴って排出されていない」、且つ、「日常生活に伴って生じていないもの」があるなら、この文言は意味をなすということですね。

非日常と考えるならば、冠婚葬祭、災害時なんかでしょうか。引越しもそうかな。「そんなときは忙しいだろうから、特管扱いはしなくてもいいよ」というご配慮だったりして。

または、いわゆる個人事業所からの廃棄物はすべて一般廃棄物と考えられていることが少なくなく(廃棄物処理法上正しい解釈かどうかは別として)、それと区別するための文言、ということでしょうか。個人事業所から日常生活に伴って排出された、とは言いにくいでしょうから。
でもそうすると、「なるほど、じゃ特管一廃ではなく普通の一廃でいいんだな」と思われてしまうので、これはまずいですね。

すみません、これは一体なんなんでしょう。どなたかご存知の方、いらっしゃいませんか?
返信する
こんな考えでは・・・ (BUN)
2008-03-23 23:10:02
BUNです。
そうですかぁ。堀口先生もご存じないですか。
まっ、現実の法施行には全く影響しないと思いますが。(でも、来年度からのPCB特別措置法での本格処理実施あたりでなんか出てこないとは限りませんが(;^_^A)
以前から、この修飾語が気になっていて、ちょっと調べたり、聞いたりしたのですが、確たる回答はいただいたことがありません。
一応、私が推察しているのは次のようなことです。
この条文は平成4年の特管を導入された時に追加された条文です。
それまでは、特管がなかったので、法律は第2条第2項から現在の第4項に繋がっていて、政令も現在の第1条はなく、現在の第2条「産業廃棄物」が第1条でした。
これだと、非常にわかりやすかったんです。
つまり、最初に廃棄物を定義し、次に一般廃棄物を「産廃でないもの」と定義して、次に産廃を定義する。

ところが、前述の通り、産廃を定義する前に特管一廃を定義しなくてはならなくなった。
特に政令では特管一般廃棄物を産廃より前で規定しなければならなくなった。

そのため、「産廃以外の廃棄物は一般廃棄物」といっても、産廃が定義されていないために、まずは最初から修飾語をつけて定義しなくてはならなかった。

ただ、この理屈でいっても整理しきれない要因が2つある。
一つは、この政令は法律を受けた政令で、受けている法律自体が第2条第3項。法律では既に第2項で「一般廃棄物は産廃以外」と言っている。
もう一つは、産廃の定義として「事業活動に伴って」としているのだから、政令第1条第1号でも「日常生活に」などという修飾語を使わずに、「事業活動を伴わずに」としなかったのか?

なんです。

別の理屈として、私は同感していないのですが、単に修飾語を間違った、というのと「入念規定」というものです。

この疑問を解決する一番は堀口先生もおっしゃっているように「事業活動を伴っていない」んだけど「日常生活以外」から生じる「国内発生物」を明示してもらうことなんですけど、そんな存在ってあるんでしょうか?

すみません、本論からずれたところでこだわってしまって。
でも、ご存じの方がいらしたら、是非、教えて欲しい廃棄物処理法7不思議の一つなんです。(あとの6つは確定していませんが(*^o^*))
返信する

コメントを投稿

廃棄物議」カテゴリの最新記事