以前ご紹介した「
薬局回収注射針について」という記事で、「環境省が部局長会議で指導要請」とありましたが、このときの文書を入手しました。環境省の方に直接依頼して、下取りに関する部分だけ抜粋して送っていただきました。
この話は、最近書いた「
下取りは納入業者でもできるのか?」という記事とも関係があります。
この文書の内容について、環境省の方と直接確認した内容も含めてご紹介します。
■“際”の問題
廃棄物処理法で下取りは「新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。(平成12.9.29 衛産79より。)」とされています。現場では「新しい製品を販売する際」の“際"の解釈として、納入と同時とすべきか、少しずれてよいとしてもどこまでが許容範囲か、などの疑問が生じていました。
これについて、
「なおこの下取り行為については、同種の製品であれば他社製品の下取りも可能であること、また必ずしも購入と同時に引き取った場合に限らないことに留意されたい。」
同種の製品であれば他社製品でもよい、というのは一般に普及している考え方ですので、真新しくはありません。しかし、購入と同時ではなくてもよいという点については、これまでより一歩踏み込んだ考え方だと思います。ただ、これについてどの程度のタイムラグが許されるのかについては、一律の基準は設定していない、その下取りが事業活動の一環と考えられるかどうかという視点で、個別具体的に検討するということのようです(環境省への聞き取りの結果です)。基準の具体例を示すことも可能だったとは思いますが、ややもすると硬直化した指導がなされる中、妥当で現場の実情を考慮した内容だと思います。
■下取りは、販売者と別会社が行ってよいのか
また、「下取りされるものは廃棄物ではない」という誤解が生じていますが、あくまでこれは廃棄物であり、下取りの形式をとる場合は(自ら運搬なので)許可が不要としただけということです。つまり、
「下取りの際に、これを当該販売者が自ら収集運搬する場合には排出事業者の自ら処理であり産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であるが、第三者が収集運搬する場合には、当該第三者は産業廃棄物収集運搬業の許可を有している必要がある」
ということで、自ら収集運搬する場合のみ許可不要とするということです。これも環境省に確認したのですが、客先から回収する運搬についてもこの考え方を適用するということです。
つまり、物流子会社に納入をさせた場合、その物流子会社は下取りをすることができない、ということです。
なお、分社化した子会社の運搬を自ら運搬とするかどうかについては規制改革通知の第三を参照に判断してください、ということです。ま、そりゃそうなんですけどね。。。
■納入車両と別の下取り専用車両は使ってよいのか
納入車両とは別の車両を下取り用にまわしても、自ら運搬ということなので問題ないと考えられます。購入と同時の引き取りでなくても自社便なら許可なしでよい、逆に他社への委託なら同時でも許可が必要、という意味ですから。
■処理基準も順守
さらに、
「下取りされたものであっても廃棄物である以上、収集運搬に当たっては処理基準を遵守すべき」
ということですので、注意が必要です。って、これがどういう意味だか分かりますか?処理基準というか、運搬基準ですけど、車両への表示と書面の携帯も必要なんです。例の
コレです。
つまり、販売者自ら下取りする場合であっても、車両への表示はもちろんのこと、書面携帯も必要です。
■徹底されるのか?
解釈・運用方法を工夫すれば、子会社が納入、下取りをすることはできると思います。しかし、この文書を踏まえてココまで問題を読み取り、解決策を練ることができる企業は一体どれくらいあるのでしょうか?しかも、この文書は通知にもならないそうですし、当然ネットにもアップするつもりはないでしょう(私が明日しちゃいますけど)。
でも、本当に事業者にこの内容を守らせたいのであれば、分かりやすい解説書やガイドラインが必要だと思いますが、いかがでしょうか?
ということで、排出事業者は下取りをした者で、そのモノは、排出事業者の管理下に置かれるまでは単なる返品、不良品の交換などと同様「廃棄物ではない」モノ、として欲しいと思いますし、これからもそんな運用が続くのではないでしょうか。