議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

今年は埋立再考の年?

2019年01月01日 23時33分33秒 | 政策提言
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新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年末にご挨拶を、と思ったのですが、読者が重複する方も多い
リバーのニュースレターで挨拶をしてしまったため、議論de廃棄物にて、
新年のご挨拶としたいと思います。

※リバーの無料ニュースレターご登録はこちらからどうぞ

さて、お題として
「埋立再考」としておりますが、時代背景を踏まえ埋立処分について
改めて評価をするタイミングではないか、という投げかけです。

現状は、3R(リデュース、リユース、リサイクル)があって、それも
できない場合は適正処分=焼却や埋立処分をする、という優先順位です。
つまり、サーマルリサイクル>埋立処分の順番です。(循環基本法より)

しかし、CO2を排出するサーマルリサイクルより、CO2を固定できる
埋立の方がよいのではないか、という話があります。これは、最近では
「プラスチック資源循環戦略小委員会」でも議論された話題ですし、
パリ協定を踏まえればむしろ当然ともいえる結論ではないでしょうか。
プラスチック資源循環戦略小委員会

もちろん、サーマルリサイクルで得られたはずのエネルギーを、どんな
方法で埋め合わせるのかという問題があります。
もし新たに掘り出した石油を燃やすのであればどうでしょうか。
私はそれでも、サーマルリサイクルよりマシだと思います。なぜなら、
地球にあるすべての石油を掘り出したとすると、完全に使い切る=CO2に
してしまうより、半分でも埋立になっているほうがトータルのCO2排出量は
少なくなるからです。
それにそもそも、発電専用の施設の方が効率はよいはずですから、ナンチャッテ
サーマルリサイクルをするくらいなら埋めたほうがいいと思いませんか?

もちろん、環境影響の評価は、社会的な評価や価値観、地域の特性によって
変わります。日本の場合は、埋立処分場の立地が難しく、その分焼却炉の数が
他の国より圧倒的に多いという事情があります。しかし、そろそろこの価値観が
通用しなくなるかもしれません。毎年の熱波、寒波、干ばつ、豪雨、超大型台風
など、いい加減受け入れ難くなってきています。

もしかしたら近いうちに、プラスチック専用の埋立処分施設=CO2固定貯留施設
という施設が廃棄物処理法か温対法の検討の俎上に上るかもしれません。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年の元旦は穏やかな一日でした。

でも、今年はそれほど穏やかな年にはならないのだろうなぁ、
と思っています。
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環境新聞でも連載中です

2015年08月31日 09時48分20秒 | 政策提言
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実は、環境新聞で「揺らぐ廃棄物の定義」というタイトルで
月一回(第3水曜掲載)記事を書いています。

日経エコロジーの連載は、事例を基にして排出事業者目線で
教訓を得るというスタイルですが、環境新聞は廃棄物の定義
問題を扱っています。

各種リサイクル法や通知などをネタに、廃棄物処理法の廃棄物の
定義がぐらついているという話です。もちろん、5年後の
廃棄物処理法抜本改正(?)を視野に入れた、ちょっと大きめな
話です。

今後の記事のテーマは以下の通りです(記事のタイトルとは
異なります)。

あ、もう第5回まではやっていますので、「今後の」とは
言いませんね。

【1回目】概論、そもそも廃棄物の定義について
【2回目】循環基本法の廃棄物等 有価売却できても廃棄物等
【3回目】使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について 売却できても廃棄物
【4回目】食品リサイクル法の食品廃棄物等 売却できても食品廃棄物等
【5回目】自動車リサイクル法 使用済み自動車は売れても廃棄物とみなす
【6回目】建設リサイクル法の再資源化 処理費払っても再資源化
【7回目】水戸木くず裁判 処理費払っても廃棄物ではない
【8回目】新・規制改革通知 手元マイナスの運搬段階は総合判断へ
【9回目】水銀廃棄物対策 有害性で判断
【10回目】バーゼル法 有害性で規制

・2回目~5回目までは、各種リサイクル法の中では有価物でも廃棄物等
 としてリサイクルに誘導している例
   →規制範囲を広げるべき
・6回目と8回目はリサイクル推進のために処理費がかかっていても
 廃棄物ではないとしている例
   →リサイクルのために規制範囲を狭めるべき
・9回目と10回目は、外圧を受けて有害性の視点で規制している例
   →世界の潮流

という流れにする予定です。
2~5回目と、6~8回目は、逆のベクトルなんですが、それだけ
廃棄物の定義が揺れているということです。

あとは、石原産業フェロシルトや大同特殊鋼の事例とかを取り上げる
かもしれません。

いずれも、私のたわ言ではなく、既にある規制を取り上げて、現状の
廃棄物処理法の廃棄物の定義の限界を指摘しています。


今後の廃棄物処理法の行く末に一石を投じられればと思います。
是非お目通しください。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
地方開催の法と実務セミナーがあります。

特に福岡と仙台はごくたまにしかないので(来年あるとも限りません)
お近くの方は是非ご参加ください。

10/8_福岡【基礎】

10/15_大阪【現地確認】

11/11_仙台【基礎】
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ペットボトルの専ら物化の話の行方

2015年06月30日 12時42分08秒 | 政策提言
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以前、ペットボトルの専ら物化の話題を取り上げました。

前回の記事では、東京都が先行して再生利用指定をしました、という
ところで終わっていましたが、環境省が規制改革会議でこんなプレゼンをして
います。


曰く、
「店頭回収されたペットボトルの収集・運搬に関して、廃棄物処理業の
許可が不要となる再生利用指定制度の活用等について、早急に中央
環境審議会において議論を進めることとしたい。」
ということで、やはり再生利用指定制度を押していくようです。

■再生利用指定制度では合理化が難しいのでは?
以前の記事でも指摘しましたが、この制度は、自治体単位で
出されるものです。それを全国で出せばよいという考えのようですが、
基本的には自治体を越境することができない制度です。
これが問題になる可能性があります。

例えば、先行している東京都では2つのペットボトルリサイクル施設を
再生利用指定制度の「個別指定」したうえで、その施設へ運搬する業者を
「一般指定」することで、誰でも事前申請などの手続きなくペットボトルを
運搬できるようにしました。しかし、都外から持ち込む場合には、
この特例はありません。当然、県内にリサイクル施設がなければ、
基本的にこの制度は全く使えません。

したがって、越境を可能にするための制度設計をきちんとできるか
どうかがポイントとなります。例えば、埼玉県が、他の自治体で個別指定を
受けた業者に運搬する業者を一般指定します。そうすれば、他の自治体への
運搬目的であれば許可不要とできます。
そんな相互承認を各自治体でするのです。
その場合、個別指定も一般指定も各自治体で基準を統一すべきでしょう。
ところが自治体は全部で115あり、全てをうまくまとめられるのか
未知数です。
環境省が旗を振っても、誰もついてこない、という結果になりかねません。

■やっぱり店頭回収ペットボトルは一般廃棄物でしょ
だいたい、ほとんどの自治体は「あれは産業廃棄物じゃないでしょ!!」
と思っているはずです。

面白いのはこの経済産業省の「ペットボトルリサイクルシンポジウム」
の資料
p.13(p.11?)です。


自治体へのアンケート結果です
・廃棄物とみなしていない 34.5%
・事業系一般廃棄物とみなしている 4.6%
・産業廃棄物とみなしている 4.4%
・不明(わからない等) 50.1%

産業廃棄物にはできないし、一般廃棄物にしたらやっかいだし、どうしよう、
というのが最後の「・不明(わからない等) 50.1%」の本音だと思います。
どうにもならないので「・廃棄物とみなしていない 34.5%」ということに
しちゃえ、ということなのでは?


■つまりは、廃棄物処理法の構造問題
いずれにせよ、今秋に結論が出るであろう中環審の委員会に注目しましょう。
最終的に、廃棄物処理法が構造的にリサイクル阻害要因となっていることが
浮き彫りになることを期待しています。

なお、ペットボトル以外にも規制改革として「企業グループ内の自ら処理
を許可不要とする措置についても検討するとのことです。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
旧知の小清水さんという方が共著で条例をまとめた書籍を出されました。
廃棄物関連条例の種類や内容がまとまっていて、条例によってはマップも
あります。
私も「そんな条例があったんだ!!」という気付きがありました。

廃棄物以外にも全国の環境条例を扱っていますので、是非ご覧ください。

環境条例の制度と運用 (信山社ブックス)
信山社

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缶、ビン、ペットはイッパイでもサンパイでもなく、ニハイに

2015年01月16日 11時32分16秒 | 政策提言
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■現状、ほとんど産業廃棄物扱いですが・・・
消費市場に出た缶、ビン、ペットボトルは、色々なところで回収
されています。
これが産業廃棄物になるのは、言うまでもなく事業活動に伴って
排出された場合です。

つまり、缶、ビン、ペット飲料を事業活動の一環で飲用に供した場合、
たとえばレストランや飲み屋さん、パーティー会場、旅館などの食品を
提供する事業で排出される場合、くらいでしょうか。

それ以外は、一般廃棄物だと思います。

もちろん、
①「自販機の横のボックス回収されているあれはどうなのか」とか、
②「コンビニや駅で回収されているあれはどっちなのか」であったり
③「わざわざ洗ったものをスーパーで回収している場合はどうなるのか」や
④「ビルの管理会社が回収してくれるけど、あれも一般廃棄物なのか」など
疑問は沢山わくことでしょう。

実際、企業がそこに介在した瞬間、産業廃棄物として運用されている
ことは多いです。
上記①~④の事例も、産業廃棄物扱いのケースが圧倒的に多いことも
事実です。

が、しかし、あえて言います。

④の事例は微妙ですが、それ以外の①~③の事例は、一般廃棄物でしょう。
だって、飲み終わって、ゴミ箱に入れようと思った瞬間、それは間違いなく
廃棄物となっています。
そしてそれは、事業活動は伴っていない=一般廃棄物です。
で、その一般廃棄物を、ようやく探し当てたゴミ箱に入れるのです。

当然ですが、集めた人の廃棄物ではない、というのは
「ビル管理会社が収集した廃棄物はあくまでテナントの廃棄物である」
というマニフェスト通知他でも支持されてます。
繰り返しになりますが、ゴミ箱に入れた人が排出者です。

てことは、一般廃棄物の許可を取るか、市町村から委託を受けるか、
その他の特例、たとえば再生利用指定を受けるか、が必要です。
かなり面倒ですね。ということで、無理やり産業廃棄物として走っている
ことが多いようです。

■専ら物なら・・・
この話、ペットボトルが専ら物なら、楽ですね。一般廃棄物+専らなら
事実上、規制ゼロですから。(現状、専ら物ではありません、念のため)

でも、産業廃棄物だとすると、面倒です。
専ら物でも産業廃棄物なら、以下が必要ですから。

①運搬委託契約書(積替え保管もいるかも?)
②処分委託契約書
③(自社運搬部分は)車両表示、書面携帯

でも、こんなこと普通やってないんですよねー。

■新カテゴリーを
ということで、産業廃棄物とか一般廃棄物とか専ら物とか、どうしたら
いいのか、訳が分からなくなってきます。

この際、危険性の少ない、事業系一般廃棄物、オフィス系廃棄物、
安定型産業廃棄物は、イッパイでもなく、サンパイでもなく、間を取って
ニハイにする、というのはどうでしょうか。1,2,3の順で規制が厳しく
なります。
ニハイは、排出/委託管理は簡単に、処理業者への取締りも合理化して
シンプルにする。

これで、広域的なリサイクルがしやすくなります。

どうでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ご存知かもしれませんが、ペットボトル、食品トレーの専ら物化の要望が
出てます。

議事録をご覧ください。

専ら物化陣営が攻めてはいますが、環境省も抵抗してます。
環境省の意図もわかりますが、やっちゃっても問題起らないどころか
リサイクルが推進されると思います。
きっと、上記①~③はやらずにGOしちゃうんでしょうから。

プレゼン資料はこちらから。

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建設工事の発注者は建設廃棄物の排出事業者になれるか?

2015年01月09日 20時20分18秒 | 政策提言
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「建設工事の発注者が、建設廃棄物の排出者になれるか」というご質問はかなり
頻繁にいただきます。
以前、環境新聞さんが全国の自治体にアンケートしたところ、なれる、なれない、
ケースバイケースと判断が見事に割れました。

そこで、前回記事の予告通り、経団連が「規制改革ホットライン」でこれを
容認すべきであるとの要望した結果をご紹介します。
なお、規制改革ホットラインは、誰でも規制改革についての要望、提案をだせますので
廃棄物処理法について要望がある方は是非ご活用ください。


「規制改革ホットライン」で受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答
があります。


上記サイトから、平成25年の「エネルギー・環境」と、平成26年の「環境省」
の回答を抜粋します。途中私のコメントも挟んでいますので、お楽しみください。


*******その① 平成25年度分 受付日:3月22日********

■経団連より提案
【具体的内容】
建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、元請業者が排出事業者としての
責任を負うという原則は変えずに、発注者の同一事業場内で再利用されることが
確実であると認められる場合については、発注者が再利用等をしようとする
対象物を明確にし、その旨を工事請負契約において明示させた上で、発注者が
元請業者に代わって排出者責任を負うことができる例外を設けるべきである。
【提案理由】
建設工事に伴い生ずる廃棄物については、2010年の廃棄物処理法改正により、
元請業者に処理責任が一元化された。しかし、大規模な工場内での建設工事に
おいては、同一事業場内で土木建設工事が非連続かつ頻繁に行われることが
多いため、工事の発注者が自らの工場の中で再利用等を行った方が効率的な
場合もある。
たとえば、前の建設工事で発生したコンクリートがらなどは、同一事業場内の
次の工事で使用されることが望ましい。しかし、現行の法制度の下では、
元請業者が排出者となるため、発注者の事業所内に廃棄物を留めておくため
には、元請業者から発注者に処理を委託する必要があり、発注者が処理業
の許可を得る必要がある。そのため、元請業者は、数ヶ月間発注者の工場内に
留めておけば次の工事で使用できる廃棄物であっても事業場外に移動させて、
有効利用先を探すか処分先を探す必要がある。
一方、発注者が元請業者に代わって排出者責任を負うことができれば、
前の工事で発生したコンクリートがらなどは、広大な敷地の同一事業所内で
適切に保管され、次の工事で建設材料として使用できるため、元請業者と
発注者の適切な役割分担により、副産物の効率的なリサイクルが進む。また、
輸送効率が上がるため、地球温暖化対策の観点からも有効である。


■環境省より回答
建設工事に伴い生ずる廃棄物について、当該廃棄物が発生した発注者の
事業場内で当該廃棄物を保管する場合は、排出事業者(元請業者)が
産業廃棄物保管基準を遵守する必要はありますが、御指摘の「発注者の
事業所内に廃棄物を留めておくためには、元請業者から発注者に処
理を委託する必要がある」との規制は、廃棄物処理法上存在しません。
なお、発注者が、同一事業場内の次の工事で当該廃棄物を再生利用する
までの期間、元請業者に保管場所を提供することは、廃棄物処理法上
問題ありません。

◎●◎●堀口よりコメント
これは、質問に対してうまくかわされました。規制改革に対する要望を
見ると、廃棄物処理法の規定を勘違いしていることも多いのです。
今回は、そこの指摘をされて、本来提案したいことに答えてもらえて
いません。


*******その② 平成25年度分 受付日:10月16日********

■経団連より提案
【要望の具体的内容】
 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、元請業者が排出事業者
としての責任を負うという原則は変えずに、発注者の同一事業場内で
再利用されることが確実であると認められる場合については、発注者が
再利用等をしようとする対象物を明確にし、その旨を工事請負契約に
おいて明示させた上で、発注者が元請業者に代わって排出者責任を負う
ことができる例外を設けるべきである。
【規制の現状と要望理由等】
 建設工事に伴い生ずる廃棄物については、2010年の廃棄物処理法の改正
により、元請業者に処理責任が一元化された。これにより、元請業者、
下請業者、孫請業者等が存在し、事業形態が多層化・複雑化している
建設工事において、個々の廃棄物について処理責任を有する者が明確に
なったので、資源の有効利用、適正処理が進むことが期待されている。
 しかしながら、大規模な工場内での建設工事では、工事の発注者が
自らの工場の中で再利用等を行ったほうが効率的な場合もある。
同様に、施工区間を区切って発注される大規模な道路工事やシー
ルド工事等の公共工事等も、発注者が廃棄物を自らの所有物として
同一工事の施工区間を越えて再利用等を行うことにより、現場で発生する
すべての廃棄物の有効利用・効率的処理が進む。また、資源の運搬も
最小限に抑えられる。
 このため、排出事業者責任は工事を受注する元請業者が負う原則は
変えずに、発注者が再利用等をしようとする対象物を明確にし、
その旨を工事請負契約において明示させることなどにより、発注者
が排出事業者責任を一部分担できる例外を設けるべきである。
元請業者と発注者の適切な役割分担により、副産物の資源としての
有効利用が効率的に進む。


■環境省より回答
御提案の発注者への排出事業者責任の転換については、前提として、
建設工事に伴い生ずる物について、当該物を発注者の同一事業場内で
再利用する場合、「行政処分の指針について(通知)」により、
都道府県等が個別の事案ごとに総合判断した結果、当該物が廃棄物
ではないと判断するのであれば、現行制度上、当該物を廃棄物として
取り扱う必要はありません。したがって、このような場合にあっては
当該物を発注者が利用することは可能です。

◎●◎●堀口よりコメント
「いいことやろうとしてるんだからいいでしょ」、と、再利用を強調
しすぎたかもしれません。
有価物だとして、『廃棄物処理法適用範囲外』とうまいこと逃げられました。

*******その③ 26年6月20日********

■経団連より提案
【先の回答に対する再提案】
「当該物が廃棄物ではないと判断するのであれば、当該物を発注者が
利用することは可能」とあるが、当方が求めているのは、廃棄物
としかみなされない物についての特例である。
 例えば、発注者が処理業の許可を得て廃棄物を処理受託している場合、
自工場内の工事から発生した廃棄物であれば、自社廃棄物として
処理受託等の手続きなく扱おうとすることはごく自然な行為と考えら
れる。
 また、同一発注者が工区割している工事(複数の元請業者が参画)
において、同一の廃棄物(例:がれき類、汚泥等)が発生する場合に、
処理業の許可を持たない発注者が、一台の機械を設置し自ら処理(が
れき類であれば破砕、汚泥であれば脱水)することで再利用が可能に
なるケースもある。これを発注者による自ら処理として扱わない場合、
元請業者ごとに機械を設置し自社処理することとなり、極めて非効率
となる。
 これらについて、発注者による自ら処理と解釈する手段を設ける
ことで、廃棄物の効率的な再利用につながることとなる。

■環境省より回答
建設工事は、注文者や元請業者、下請業者等、多数の関係者が存在し、
廃棄物の排出事業者責任の所在が曖昧になりやすいという性質を有
しています。
したがって、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第21条の3において、
こうした性質等を踏まえ、責任の所在を明確化・一元化する観点から、
元請事業者が排出事業者責任を負うこととされているのであり、
御提案のような例外を設けることは困難です。
なお、現状の法制度上においても、「「規制改革・民間開放推進
3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)において平成16年度中
に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について
(通知)」(環廃産発第050325002号)の第3においても示されて
いる条件により、元請業者の自ら処理という扱いの下で、注文者が
元請業者の廃棄物を処理することが可能であると考えます。

◎●◎●堀口よりコメント
いい加減、ちゃんと答えんかい!!というニュアンスですかね。
いつものとおり、法改正の趣旨を繰り返してオシマイです。つまり、
関係者が多くて排出事業者が誰になるかよくわからなくなるので、
元請を排出事業者として統一したんだから、いまさら発注者
ならOKとは言えないよ、ってことです。

さらに極め付けは、現実味の薄い規制改革通知のご提示を頂いて
しまいました。現実味が薄いとか、思っていないのでしょうけど。

本来これは、発注者が機械を1台設置して、それぞれの元請に
貸与すれば問題解決なんですけど。

ところが、全然別の案件ですが、下記の提案への回答では、
「廃棄物の発生形態は様々だから、廃棄物や排出事業者が誰か
なんて、決めらんないよ。ケースバイケースで検討してね。」
なんて言ってます。

*******平成25年度分 受付日:3月22日********
■経団連から提案
【具体的内容】
(1)有価物として再販売するかが未定の下取り品、(2)二重の
下取りを行う製品(販売業者が下取りを行った製品を、製造業者が
再度下取りするケース等)、(3)顧客に納入した製品のメンテナンス
により発生する交換部品や油脂類、(4)製品の設置工事で発生する
廃棄物について、(a)どの段階から廃棄物処理法上の「廃棄物」に
該当するか、(b)「廃棄物」に該当する場合に排出者責任は誰にあるのか
(製品の販売業者、販売業者から委託された業者、製品の購入者等)、
(c)「廃棄物」に該当する場合に処理業の許可は必要か、具体的な
ケースを想定し、通知等により明確化すべきである。
【提案理由】
製品の販売等に伴って生じる廃棄物については、平成12年9月29日
衛産第79号において、「新しい製品を販売する際に商慣習として
同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取
り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること」
と通知されているが、上記(1)~(4)の(a)~(c)については明確化
されておらず、自治体によって判断が異なる。
例えば、「(2)二重の下取りを行う製品」について、販売業者が
下取りをした製品を、製造業者が再度下取りをする際、収集運搬を
行う製造業者に収集運搬業の許可が必要かどうかの判断が自治体によっ
て異なっている。
廃棄物の定義等については、様々な通知等が出されているが、
さらなる明確化を行うことで、自治体の判断のブレが解消され、
廃棄物処理法が全国で統一して運用されることが期待される。
同時に、業者等が非意図的に法律違反をしてしまうことが避けられる。

■環境省から回答
廃棄物の発生形態や処理の状況等は事案ごとに様々であり、廃棄物
該当性の判断や廃棄物の排出者の特定等については、各事案に
応じて個別に行う必要があります。したがって、全ての事例を
想定することは困難であること、また、仮に具体的なケースを
想定しても、必ずしも特定の状況に適用可能となるわけではない
ことから、個別の事案ごとに都道府県等と相談をすることが
適切であると考えます。

◎●◎●堀口よりコメント
>廃棄物の発生形態や処理の状況等は事案ごとに様々であり、
>廃棄物該当性の判断や廃棄物の排出者の特定等については、
>各事案に応じて個別に行う必要があります。
という回答ですが、正解だと思います。要は、ケースバイケースで
判断すべし、なのです。

そして、建設廃棄物についても同様「状況等は事案ごとに様々」
なので「各事案に応じて個別に」検討すべきなのです。だからこそ、
法律で排出事業者を一元化したのだとの説明になるのかもしれませんが、
なんかおかしくないですか?
ケースによっては発注者や下請けが排出事業者になるべき
(その方が適正/合理的な管理/処理が期待される)ことも多いのに、
無理やり法律で一元化してしまったために、そこでひずみが
生じているのだと思います。
下請けが排出事業者として動いた方がいいケースというのは、
絶対にあります。

<<発注者=排出事業者となる問題への、一つの解決策>>
自社の製造ラインや社名入りの看板等については、それの取り外し
作業を委託すれば、その作業においては取り外したものは建設廃棄物
という認識にはなりません。そういった整理をすれば、
発注者が排出事業者になることはできると思います。

もちろん、この考え方では建設汚泥は対処しようがないですが。。。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一昨年千葉で大爆発を起こしたエバークリーンの事業部門長などが
業務上過失致死傷、消防法違反で書類送検されます。
ガソリンを持ち込んだ輸送会社は、廃棄物処理法違反のようです。

業務上過失致死傷は、5年以下の懲役100万円以下の罰金の対象です。
廃棄物処理法の違反は、5年以下の懲役1000万円以下の罰金、
法人罰は3億円です。
(今回エバー社は、特別管理産業廃棄物廃油の許可はありましたが、
蒸留では許可ありませんでした。従って、無許可事業範囲変更でしょう)

廃棄物処理法の方が重いのですが、なぜ廃棄物処理法違反でお咎め
がないのでしょうか?

廃棄物処理法違反となると欠格要件に該当しますから、そうならない
ようにエバー社が頑張ったのかもしれません。
しかし、委託者側が廃棄物処理法違反で、処理業者が廃棄物処理法違反
ではない、というのは、どう考えても妙です。。。

http://www.asahi.com/articles/ASH1862WGH18UDCB01B.html
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2390311.html
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2015年 あけましておめでとうございます

2015年01月09日 09時39分00秒 | 政策提言
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新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さて、今年はなんといっても廃棄物処理法改正の年です。
・・・と盛り上がりたいのですが、今の延長線上にはほとんど
やることがない、やりつくした感があるのではないでしょうか。

あるとしたら、電子マニフェストと優良認定を普及させて、
不法投棄の取締りをしっかりやる。
リサイクルはかなり進んだので、リデュース、リユースを
やりたいところですが、そこは廃棄物処理法の範疇ではない。

追加でやることは、大してなさそうです。

ということで、改正自体は、静かなものになるような気がします。
まぁ、前回もそれほど大きな改正ではありませんでしたが。

一方、水面下で廃棄物処理法そのものに対する不満のマグマを
噴火させる絶好の機会です。
ネタがない分、抜本改正をしないといかん、という声が表面に
出てきやすいでしょう(昨年末と同じネタですみません)。

そして、今回は難しいでしょうから、5年後にガラパゴス化した
廃棄物処理法を抜本改正します。

シナリオとしては、

=============
ガラパゴス法(ガラポー)改正の黒船として、バーゼル法と
水銀廃棄物規制という条約がらみの法律の外圧を受けて、
尊王(攘夷はナシ)ならぬ尊“循環基本法”の御旗の元
廃棄物処理法を、排出事業者と処理業者の手に奉還させる
=============

という感じです。

環境省が強力な権限を持っているウチは、既得権の方々がかえって
その首根っこを押さえやすいですから。
外圧をドーっと受けて、今ある権限を放り出してひっくり返る
くらいでないと、抜本改正はできないような気がします。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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外圧をかけるのは排出事業者と処理業者の役割です。
外圧を利用するのは環境省の役割です。

どちらも抜本改正が必要と思っているのですから、できるはずです。


外圧の窓口として手軽?なのは、規制改革ホットラインです。
誰でも使えます、是非ご利用ください。


次回の記事では、このホットラインで展開された、
「建設工事発注者が建設廃棄物の排出事業者になれるか?」
についてまとめます。昨年末のエコプロでもやった内容です。
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拡大解釈はどこまでできるか??

2014年07月27日 23時46分22秒 | 政策提言
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実際のところ、
「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者」
って、誰が該当すると思いますか?

セメント会社って、どうでしょうか?間違いなく該当しますよね。
PETボトルの回収業者も、該当しそうですよね。
そうそう、家電リサイクルの工場もそうですよね。なにせ
リサイクル率80%以上ですからね。
パーティクルボード作ってるところも、OKでしょう。

もちろん、鉄くず、ガラス瓶、古紙、古繊維を扱っているところも
忘れちゃいけません。もしも、そこにプラスチックが2割混ざって
いる場合でも、RPF向けになるなら、いーんじゃないですかねー。


え?無茶ですかねぇ?そうかなぁ、別にいいんじゃないかなぁ。
誰も困らないし、問題起こらないだろうし。実際に法律の専門家が
4品目に限定されないって説を唱えているんですよ。

専ら物については、廃棄物処理法成立時に、大昔から問題なく
リサイクルをしていた4品目を規制対象からはずすという主旨だった
からといって、今はもう時代は変わったんだから、解釈も変え
たっていいでしょう。

だって、日本国憲法第9条では

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
 国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を
 解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを
 保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

って書いてあるのに、安保条約締結国のアメリカがビルを飛行機で
攻撃されたら、たぶん一緒になってイラクやらアフガニスタンへ
行ってアルカイダとかを攻撃して、その後で国ががどうにもこうにも
ならなくなってしまっても、責任は持ちたくない、ということもできる
ような解釈ができるって言うんですから。安倍さんはイラク戦争
みたいなのはしないって言っていますが、私だったら今の

「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、
これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び
幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」

という要件を解釈すれば、北朝鮮が核弾頭を乗せたミサイルを
アメリカに向けて撃ったら、途中で落ちたとしてもピョンヤンを
つぶしにいけると判断します。飛行機がビルに突っ込んだ日には
躊躇しません。

確かに、憲法成立時には二度と戦争が出来ないように、どう逆立ち
して解釈しても、戦争など出来ないような厳しい表現で条文を作った
のですが、時代は変わったんだから少しくらい解釈変えたっていいで
しょう。

でも、だからって集団的自衛権については、第9条の文言を読んで
みましょう。日本語として、その解釈無理がありますよね。

集団的自衛権よりも、PETボトル=専ら物説のほうがよっぽど
アリだと思います。

実際、核ミサイル撃ってきたら、ピョンヤンつぶしにいけた
ほうがいいかもしれません。
でも、改正は必要です。サッサと議論始めましょう。

廃棄物処理法も、拡大解釈して法と現実の乖離を誤魔化すよりも
ちゃんと時間をかけて議論して、抜本改正しましょう。そろそろ
限界です。

5年後が目標ですかね。

解釈改憲みたいに手抜きしちゃいけません。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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    10月16日(木) 基礎編
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応用編は11月に東京、大阪でやります。
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たぶん世界初!! 廃棄物処理法の小説

2013年09月03日 13時02分42秒 | 政策提言
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突然ですが、

廃棄物処理法を真面目に守ろうとしたらどうなるか、小説っぽく書いてみました。
どちらかというと、廃棄物処理法に詳しくない一般の方向けです。

気分転換にどうぞ。

では、はじまり、はじまり。

=====================
(うわー、やっぱりやってた・・・)
予想通りだった。
私の父は小さな町の電気屋を経営しているのですが、店の在庫品を梱包していたプチプチを、なんと河先市の不燃ごみ用の指定ゴミ袋に詰め込んでいたんです!!
読者の皆さん、「何がマズイのか分からない」なんていってる場合ではありませんよ!!これは、環境省が「悪質な違反行為である」とまで言っている、立派な犯罪行為なんですよ。

これから始まるであろう押し問答を思うと、少々憂鬱ではありましたが、言うと決めてきたのだからと、なにはともあれ父に向かってこう言ったのでした。
「それ産廃だから、そんな袋にいれたらヤバイよ」
「えぇ?? これが産廃? ただの燃えないごみだろ。」
「いや、燃えないごみっていうか、プチプチって燃えるし、、、」
「プチプチなんか燃やしたらダイオキシンがでるんだろ。環境部で仕事してんのに、そんなことも知らんのか」
「プチプチは塩ビじゃないからダイオキシンなんかでないんだよ」(もしかしたら日本人のほとんどは、プラスチックを燃やしたら必ずダイオキシンが出るとか思っているんでは・・・)
「ふーん、そうなんだ。にしても、町の電気屋から産廃なんか出るわけねーだろ」
「だからぁ、燃えるごみとか、燃えないごみとかって、家庭ごみの分別の話だろ。プチプチはそもそも産廃に区分されるんだよ。」
「市が文句言わずに持ってってんだから、いいんじゃねーのか?昔と違って有料なんだぞこの袋。」
「そうじゃなくって、産廃だから原則市には持ってけないの」
「じゃぁ、どーすんだよ」
「産廃業者に委託するんだよ」

○○○○○
結局、廃棄物処理法の規定を一通り説明したのですが、やはり父は釈然としないようでした。
最後に、
○○○○○

「ふーん、、、で、もしやんなかったら、どうなるんだ?」
「えーと、確か5年以下の懲役と1千万円以下の罰金の対象になるはず。」
「なんだとぉ・・・」
しばしの沈黙のあと
「まぁ、ちょっと考える。」

ということで、その場は、それでお開きになりました。


次の週末、父から「ちょっと話がある」ということで呼び出しを受けました。
「例の話なんだけど」
「何の話?」
「産廃の話」
「あぁ、プチプチね」
「今度詳しく話しをして欲しいんだけど。商店街の連中が、興味があるってんで。」
「えぇー、みんなに話したんだ」
「罰金の話がどうも気になったらしくてね。しかもゴミの話で問題になったんじゃぁ、商店街全体の信用に関わるってことで。大体、誰も産廃だなんて思ってもいなかったんで、ビビッちゃって。」

ということで、いつのまにか次の週の日曜夜8時から、商店街の主要メンバー+心配症(?)の人たちを前に、廃棄物処理法の説明をすることになってしまいました。

「えぇー、では、まず産廃とはなんぞや、というところから始めます」
「正ちゃん、正ちゃん、その前に罰金1000万円の話なんだけど。あれ本当なの?」
「僕の『正太郎』という名前は、正直に生きろ、と言うことらしいんでねぇ(父を見ながら)、もちろんウソはいいませんよ。」
「よっしゃ、じゃぁ真面目に聞いてやる!!」
「(苦笑)はい、ではお手元の表をご覧ください。これらの廃棄物が事業活動に伴って生じたら産廃ということになります。商売をしてたら、なんでも事業活動だと思ってください。ですから、ウチの商品を梱包していたプチプチは、商売の一環で出てきたプラスチックなので、廃プラスチック類という産廃になります。」
「ってことは、みかんとかを載せてるプラスチックのザルが壊れたら、産廃なの?」
「まぁ、そうなりますね」
「発泡スチロールも?」
「廃プラなので、産廃です」
「ダンボールは?」
「あれは紙なんで、その表の『紙くず』のところを見てください。建設業とか紙製品を作っているところから出れば産廃ですけど、この商店街でこの業種に当てはまるところないですよね、多分」
「ウチ、コピー機あるけど。」
「でも、印刷業というより、コピー機を使ってもらってるだけですよね。だから、産廃にはならないと思います。そうそう、産廃にならないものは、全てイッパイになります。」
「・・・イッパイって、ゴミはイッパイになる前に捨てりゃいいんだろ?」
「いやいや、一般廃棄物を略して一廃(イッパイ)というんです。イチハイとかイッパンパイと言う人もいます。一廃は、市町村の回収になります。」
「じゃぁ、発泡スチロールを市の回収に出したらだめなの?」
「ダメです。産廃の業者に委託することになります。もし市町村の回収に出したら、違反になります。1000万円の罰金っていうやつです。」(←実は、正確にはそうでもないのですが、詳しくは補足解説をどうぞ。)
これを聞いて、室内がどよめきました。
「誰もしらねーだろ、そんなこと。」
「ウチもしらなかった。」
「ダイジョブなの?」
「やっぱ、まずいだろ」
「で、正ちゃん、具体的にはどうしたらいいの?」

ということで、型どおりに、産業廃棄物収集運搬業者と処分業者のそれぞれと契約書を交わすこと、それも商店街としてではなく、個々の店がすること、マニフェストも引渡しの都度交付すること、さらに毎年一回マニフェストの報告書を役所に提出しなければならない、というところまで話をしました。空気が読めない振りをして、保管基準の話もしてしまおうかと迷っているところで、父が

「めんどくせーなー、で、契約書ってどんなやつ?」

と質問してきました。本当は雛形など見せる前に、テキトーにお茶を濁して終わらせるつもりだったのですが、仕方なく念のため用意していた雛形を見せました。

覗き込んだ瞬間の、父のいやそうな顔といったら。。。
この際、小出しにするより一気に見せたほうがかえって気が楽になると思い、畳み掛けるようにマニフェスト、交付等状況報告書の様式を渡し、こちらは椅子に座ってしばらくだんまりを決め込むことにしました。

☆参考 契約書雛形
    マニフェスト
    交付等状況報告書

雛形が回覧されるうちに、「なにこれ、ありえねーだろ」などのひそひそ話、部屋中の誰もが鼻白むのが分かりました。私は何一つ間違ったことは言っていないのですが。。。私の頭がオカシイといわんばかりの空気が部屋に充満したところで、


「正ちゃんさぁ、これ、どこの商店街でもやってんの?」
痛い質問でした。どうせ、やっているとこなんて、ないに決まっているのです。が、そこは白々しく
「・・・・そこまでは知らないなぁ、どっかに知り合いがいたら聞いてみてくれませんか?」と言う他ありませんでした。

他の商店街に知り合いがいる人が数名いたので状況を確認してもらい、これが本当に必要なことなのかどうか、役所にも確認を取るということにして、来週また集まることになりました。



次の会合は、前回とは打って変わって、室内がざわめいていました。口火を切ったのは、商店街でもリーダー格の中野さん。

「じゃ、とりあえず他の商店街がどうなのか、報告してもらおうか。まずは橋本さんから」
3名ほどの方から報告がありましたが、案の定そろって「そんなことはやっていない」という報告でした。あちこちでほっとした顔でささやきあう声が。

「で、問題の役所なんだけど、西田さんお願いします」
「どうもですねぇ、歯切れが悪いんです。産廃は産廃らしいんですけど、市が回収するって言うならいいとか、でも契約書は必要とか。それも電話に出た人はすぐに答えられずに、他の詳しそうな人が答えてくれたんですが、それなのに煮え切らない説明で。最後には『別に気にしなくていいんじゃないですか』とか言われたんですが、法律上問題ないのかと念押しすると、そうでもないらしく。。。」
「じゃ、やっぱり、やんなくていいんでしょ」
「やめよーぜ、こんなの。それより折角みんな集まってんだからさっさと切り上げて、ビールでも飲もうぜ」
室内がざわめき始めたところで、中野さんが「正ちゃん、ホントにいいの?」

もともとこんな騒ぎにするつもりなどなかったこともあり、もうどっちでもいいと思い始めていたところに不意打ちのようにお鉢が回ってきました。しかし、ここで「やらなくていい」と言うわけには行きません。やらなくても、将来問題になる可能性は限りなくゼロに近いですが、なった場合はそれこそ私個人の責任問題になります。ということで、
「よかないですけど、実際はなかなか難しいんですかねー・・・」
という玉虫発言で逃げようとしたところ、

「だったら、始めっからそんな話すんなよー」

誰かの半ばキレ気味の一言で、あとはもう収拾が付かなくなり、しまいには奥のほうでビールを飲み始めるグループが出てくる始末。どうやら、はじめからそのつもりで、ビールを準備していた模様。。。無論、そのまま流れ解散となりました。

(ヤレヤレ、「やらなくていい」とは言わずに済んだ)とホッとしていたら、後ろから親父に「恥かかすな」とボカリ。勝手に話をデカクしたのはそっちだろう、と言いかけましたが、ここでケンカしてもしかたありません。代わりに出た一言が「いや、この法律、変なんだよね」。
「ホントだな、お前も苦労してんだな。会社でこんな話をあちこちでしてんのか。」
「まぁ、ほどほどにね。あんまりキッチリやろうとすると、バカバカしくてみんなこの法律を無視しかねないから。これでも、本当は役に立っている部分もあるんだけど。」
「でもさぁ、そんな法律、まずいんじゃないの?」
「そうなんだよねー、いつか抜本改正しなきゃなんない時がくると思う。ホントは、いつかじゃなく、今すぐにでもしたいんだけどね。」
==おしまい===============

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。面白い!!と思っていただけたら嬉しいです。
よかったら、ブログにコメントください。

今回は、誰にでもイメージが沸きやすいように、商店街を題材に選びましたが、実際は商店街
レベルでは問題にはならないでしょう。

注意しなければならないのは、純粋なオフィスとは違う業務を行っている
営業所、倉庫、サービスセンターなどの拠点でしょう。このような場所から排出される、
販促品、商品サンプル、梱包材、修理部品などは産廃となり得ます。

営業所や倉庫の環境監査で同じような指摘をしたら、これほどあからさまでなくとも、同じような
反応が返ってくる可能性があります。仮に産廃業者に出していたとしても、契約書やマニフェスト
をまともに運用していないケースは少なくありません。そんな場合に、どこまで強く出れるか。。。

ただ、修理部品の処理委託契約やマニフェスト管理が適切でなかったために、環境管理責任者が
有罪判決を受けて罰金を払ったと言う実例があります。

よく、「ここまでやる意義はあるのだろうか」との疑問が沸いて来ます。

「産廃として管理すべき廃棄物の範囲を、もっと狭めるべきである」とは、私の持論ですが、
このことは産廃と一廃の区分の問題へとつながり、さらには廃棄物処理法の抜本改正の議論を
巻き起こします。正直、私はそれが必要と思っています。

この、“駄”小話が、その動きを少しでも前に進めることになれば、幸いです。

■補足解説

実は、「あわせ産廃処理」というものがあります。市町村が産廃を処理する事が
できるというもので、廃棄物処理法第11条で明確に規定されています。

したがって、商店街の産廃を市町村に処理してもらうこと自体は問題ではありませんが、
契約書の締結が必要です。また、市町村が直接収集するか、市町村の委託を受けた
業者が回収に来るのであれば「市町村が処理」すると考えられるのでよいと思いますが、
一般廃棄物の許可を受けた民間の業者が収集に来ているのであれば、無許可業者への
委託となってしまいます。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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読み返すと、結構恥ずかしいのですが、折角書いたので、目をつむって
出しちゃいます。えいっ!!

コメント (6)
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規制改革ホットラインと学会発表

2013年06月28日 10時48分16秒 | 政策提言
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規制改革ホットラインというものがあります。
様々な分野における規制改革の提案を受け付けています。

規制改革ホットライン

もちろん、廃棄物処理法についての提案もアリです。
誰でも提案できるというものですので、要望があればこちらから
直接出すことが出来ます。

このような受付窓口は過去にはなかったはずですので、その意味では
かなりな進歩でしょう。

とはいえ、廃棄物処理法の抜本的な改正を要望しても、すぐには
通らないでしょう。受け付けた提案に対する所轄官庁からの回答を
見れば、そう簡単ではないことが分かります。基本的には、相手にされません。
経団連の要望でも、「事実誤認」とかいって軽く蹴散らされています。確かに、
経団連としては、あれでは勉強不足ですけどね。

でも、皆さんは事実誤認といわれることを恐れずに、是非提案してください。
事実誤認(=そんな規制はない)といわれるのであれば、それはそれで収穫
ですから。

「規制改革ホットライン」で受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答


中には要望を受けて、「検討しましょう」、としている回答もあります。
でもそれは、基本的には小幅な修正です。

もちろん、誰かがネットで1回要望したくらいで法律を抜本改正できる
はずがありません。このホットラインに同様の提案が相当数あり、業界や
学識経験者の意見を変えるくらいの社会的な動きがなければなりません。

ということで、先日環境法政策学会で発表してきました。
「建設廃棄物の排出事業者を一律元請業者とする」改正について、現場の
状況を踏まえた問題提起をしてきました。



今後も、こういった学会などの場で意見を発表し、大学の先生方に
廃棄物処理法の問題点を再認識していただこうと思います。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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学会では、私の学生時代からの知人も発表していました。上記の写真も撮って
くださった方です。廃棄物関係の条例を112自治体全部調査して分析していました。
一人でやったそうです。

エライこっちゃ。

できれば、調査結果を売りたいとのことです。興味ある方いらっしゃいますか?
紹介しますよ。
アミタでも条例情報を売っていますが、あれは「現地確認」と「県境を越境して
委託する場合の事前協議」の2点に絞って、掘り下げています。この方のは、
それ以外も含めて、廃棄物関係の条例を広く調査しているようです。
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本を出しました

2012年11月02日 15時56分43秒 | 政策提言
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すみません、しばらく更新をサボっていました。

毎年10月は忙しく、今年も22営業日中16日はセミナーやらコンサルやらで
外出していましたが、ようやく一息つけそうです。

■サボっていた間に、お知らせすべきだったことの筆頭はヘキサメチレンの
通知です。

環境省のHPで出てからご紹介したかったのですが、9月11日付けの通知なのに、
待てど暮らせど出てきません。
仕方がないので、東京産業廃棄物協会に掲載されているPDFをリンクします。
他の自治体でも既にHPに掲載されています。

ヘキサメチレンテトラミンを含有する産業廃棄物の処理委託等に係る
 留意事項について

 環廃産発第120911001号 平成24年9月11日
 

うわさどおり、「WDSを利用することが適当」という書きぶりで、WDSを今後も
推奨していくのでしょう。無論、すべての産業廃棄物にWDSのような
重たい資料の添付を義務付けるのはナンセンスですので、一部の産業廃棄物
について限定してくるのだと思いますが。

■エコプロ、今年もやります

エコプロダクツ展に合わせて、今年もセミナーをやります。
廃棄物管理者検定もやりますので、ぜひご参加ください。

検定【応用】合格者などの上級者で、受験の意味がない方については、非公式
ですが会場外で名刺交換会でもやろうかと思っています(未定です)。

【エコプロ2012】廃棄物管理の法と実務セミナー
 ~廃棄物業界の5大トピックと廃棄物管理者検定~



■本を出しました

環境新聞に1年半連載してきた記事を、ブックレット形式で出しました。
廃棄物処理法のあるべき姿を考える


実務に直接役には立たないと思いますが、日ごろ廃棄物処理法に対する不満
を持っている方にとっては、「そうそう、それそれ、よく言ってくれた」という
内容にしたつもりです。

虎の巻と違い、高い本ではありませんので、是非!!

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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すっかり寒くなってきました。
今年もあと2ヶ月。皆さん、風邪を引かないように気をつけましょう。
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