議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

たぶん世界初!! 廃棄物処理法の小説

2013年09月03日 13時02分42秒 | 政策提言
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突然ですが、

廃棄物処理法を真面目に守ろうとしたらどうなるか、小説っぽく書いてみました。
どちらかというと、廃棄物処理法に詳しくない一般の方向けです。

気分転換にどうぞ。

では、はじまり、はじまり。

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(うわー、やっぱりやってた・・・)
予想通りだった。
私の父は小さな町の電気屋を経営しているのですが、店の在庫品を梱包していたプチプチを、なんと河先市の不燃ごみ用の指定ゴミ袋に詰め込んでいたんです!!
読者の皆さん、「何がマズイのか分からない」なんていってる場合ではありませんよ!!これは、環境省が「悪質な違反行為である」とまで言っている、立派な犯罪行為なんですよ。

これから始まるであろう押し問答を思うと、少々憂鬱ではありましたが、言うと決めてきたのだからと、なにはともあれ父に向かってこう言ったのでした。
「それ産廃だから、そんな袋にいれたらヤバイよ」
「えぇ?? これが産廃? ただの燃えないごみだろ。」
「いや、燃えないごみっていうか、プチプチって燃えるし、、、」
「プチプチなんか燃やしたらダイオキシンがでるんだろ。環境部で仕事してんのに、そんなことも知らんのか」
「プチプチは塩ビじゃないからダイオキシンなんかでないんだよ」(もしかしたら日本人のほとんどは、プラスチックを燃やしたら必ずダイオキシンが出るとか思っているんでは・・・)
「ふーん、そうなんだ。にしても、町の電気屋から産廃なんか出るわけねーだろ」
「だからぁ、燃えるごみとか、燃えないごみとかって、家庭ごみの分別の話だろ。プチプチはそもそも産廃に区分されるんだよ。」
「市が文句言わずに持ってってんだから、いいんじゃねーのか?昔と違って有料なんだぞこの袋。」
「そうじゃなくって、産廃だから原則市には持ってけないの」
「じゃぁ、どーすんだよ」
「産廃業者に委託するんだよ」

○○○○○
結局、廃棄物処理法の規定を一通り説明したのですが、やはり父は釈然としないようでした。
最後に、
○○○○○

「ふーん、、、で、もしやんなかったら、どうなるんだ?」
「えーと、確か5年以下の懲役と1千万円以下の罰金の対象になるはず。」
「なんだとぉ・・・」
しばしの沈黙のあと
「まぁ、ちょっと考える。」

ということで、その場は、それでお開きになりました。


次の週末、父から「ちょっと話がある」ということで呼び出しを受けました。
「例の話なんだけど」
「何の話?」
「産廃の話」
「あぁ、プチプチね」
「今度詳しく話しをして欲しいんだけど。商店街の連中が、興味があるってんで。」
「えぇー、みんなに話したんだ」
「罰金の話がどうも気になったらしくてね。しかもゴミの話で問題になったんじゃぁ、商店街全体の信用に関わるってことで。大体、誰も産廃だなんて思ってもいなかったんで、ビビッちゃって。」

ということで、いつのまにか次の週の日曜夜8時から、商店街の主要メンバー+心配症(?)の人たちを前に、廃棄物処理法の説明をすることになってしまいました。

「えぇー、では、まず産廃とはなんぞや、というところから始めます」
「正ちゃん、正ちゃん、その前に罰金1000万円の話なんだけど。あれ本当なの?」
「僕の『正太郎』という名前は、正直に生きろ、と言うことらしいんでねぇ(父を見ながら)、もちろんウソはいいませんよ。」
「よっしゃ、じゃぁ真面目に聞いてやる!!」
「(苦笑)はい、ではお手元の表をご覧ください。これらの廃棄物が事業活動に伴って生じたら産廃ということになります。商売をしてたら、なんでも事業活動だと思ってください。ですから、ウチの商品を梱包していたプチプチは、商売の一環で出てきたプラスチックなので、廃プラスチック類という産廃になります。」
「ってことは、みかんとかを載せてるプラスチックのザルが壊れたら、産廃なの?」
「まぁ、そうなりますね」
「発泡スチロールも?」
「廃プラなので、産廃です」
「ダンボールは?」
「あれは紙なんで、その表の『紙くず』のところを見てください。建設業とか紙製品を作っているところから出れば産廃ですけど、この商店街でこの業種に当てはまるところないですよね、多分」
「ウチ、コピー機あるけど。」
「でも、印刷業というより、コピー機を使ってもらってるだけですよね。だから、産廃にはならないと思います。そうそう、産廃にならないものは、全てイッパイになります。」
「・・・イッパイって、ゴミはイッパイになる前に捨てりゃいいんだろ?」
「いやいや、一般廃棄物を略して一廃(イッパイ)というんです。イチハイとかイッパンパイと言う人もいます。一廃は、市町村の回収になります。」
「じゃぁ、発泡スチロールを市の回収に出したらだめなの?」
「ダメです。産廃の業者に委託することになります。もし市町村の回収に出したら、違反になります。1000万円の罰金っていうやつです。」(←実は、正確にはそうでもないのですが、詳しくは補足解説をどうぞ。)
これを聞いて、室内がどよめきました。
「誰もしらねーだろ、そんなこと。」
「ウチもしらなかった。」
「ダイジョブなの?」
「やっぱ、まずいだろ」
「で、正ちゃん、具体的にはどうしたらいいの?」

ということで、型どおりに、産業廃棄物収集運搬業者と処分業者のそれぞれと契約書を交わすこと、それも商店街としてではなく、個々の店がすること、マニフェストも引渡しの都度交付すること、さらに毎年一回マニフェストの報告書を役所に提出しなければならない、というところまで話をしました。空気が読めない振りをして、保管基準の話もしてしまおうかと迷っているところで、父が

「めんどくせーなー、で、契約書ってどんなやつ?」

と質問してきました。本当は雛形など見せる前に、テキトーにお茶を濁して終わらせるつもりだったのですが、仕方なく念のため用意していた雛形を見せました。

覗き込んだ瞬間の、父のいやそうな顔といったら。。。
この際、小出しにするより一気に見せたほうがかえって気が楽になると思い、畳み掛けるようにマニフェスト、交付等状況報告書の様式を渡し、こちらは椅子に座ってしばらくだんまりを決め込むことにしました。

☆参考 契約書雛形
    マニフェスト
    交付等状況報告書

雛形が回覧されるうちに、「なにこれ、ありえねーだろ」などのひそひそ話、部屋中の誰もが鼻白むのが分かりました。私は何一つ間違ったことは言っていないのですが。。。私の頭がオカシイといわんばかりの空気が部屋に充満したところで、


「正ちゃんさぁ、これ、どこの商店街でもやってんの?」
痛い質問でした。どうせ、やっているとこなんて、ないに決まっているのです。が、そこは白々しく
「・・・・そこまでは知らないなぁ、どっかに知り合いがいたら聞いてみてくれませんか?」と言う他ありませんでした。

他の商店街に知り合いがいる人が数名いたので状況を確認してもらい、これが本当に必要なことなのかどうか、役所にも確認を取るということにして、来週また集まることになりました。



次の会合は、前回とは打って変わって、室内がざわめいていました。口火を切ったのは、商店街でもリーダー格の中野さん。

「じゃ、とりあえず他の商店街がどうなのか、報告してもらおうか。まずは橋本さんから」
3名ほどの方から報告がありましたが、案の定そろって「そんなことはやっていない」という報告でした。あちこちでほっとした顔でささやきあう声が。

「で、問題の役所なんだけど、西田さんお願いします」
「どうもですねぇ、歯切れが悪いんです。産廃は産廃らしいんですけど、市が回収するって言うならいいとか、でも契約書は必要とか。それも電話に出た人はすぐに答えられずに、他の詳しそうな人が答えてくれたんですが、それなのに煮え切らない説明で。最後には『別に気にしなくていいんじゃないですか』とか言われたんですが、法律上問題ないのかと念押しすると、そうでもないらしく。。。」
「じゃ、やっぱり、やんなくていいんでしょ」
「やめよーぜ、こんなの。それより折角みんな集まってんだからさっさと切り上げて、ビールでも飲もうぜ」
室内がざわめき始めたところで、中野さんが「正ちゃん、ホントにいいの?」

もともとこんな騒ぎにするつもりなどなかったこともあり、もうどっちでもいいと思い始めていたところに不意打ちのようにお鉢が回ってきました。しかし、ここで「やらなくていい」と言うわけには行きません。やらなくても、将来問題になる可能性は限りなくゼロに近いですが、なった場合はそれこそ私個人の責任問題になります。ということで、
「よかないですけど、実際はなかなか難しいんですかねー・・・」
という玉虫発言で逃げようとしたところ、

「だったら、始めっからそんな話すんなよー」

誰かの半ばキレ気味の一言で、あとはもう収拾が付かなくなり、しまいには奥のほうでビールを飲み始めるグループが出てくる始末。どうやら、はじめからそのつもりで、ビールを準備していた模様。。。無論、そのまま流れ解散となりました。

(ヤレヤレ、「やらなくていい」とは言わずに済んだ)とホッとしていたら、後ろから親父に「恥かかすな」とボカリ。勝手に話をデカクしたのはそっちだろう、と言いかけましたが、ここでケンカしてもしかたありません。代わりに出た一言が「いや、この法律、変なんだよね」。
「ホントだな、お前も苦労してんだな。会社でこんな話をあちこちでしてんのか。」
「まぁ、ほどほどにね。あんまりキッチリやろうとすると、バカバカしくてみんなこの法律を無視しかねないから。これでも、本当は役に立っている部分もあるんだけど。」
「でもさぁ、そんな法律、まずいんじゃないの?」
「そうなんだよねー、いつか抜本改正しなきゃなんない時がくると思う。ホントは、いつかじゃなく、今すぐにでもしたいんだけどね。」
==おしまい===============

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。面白い!!と思っていただけたら嬉しいです。
よかったら、ブログにコメントください。

今回は、誰にでもイメージが沸きやすいように、商店街を題材に選びましたが、実際は商店街
レベルでは問題にはならないでしょう。

注意しなければならないのは、純粋なオフィスとは違う業務を行っている
営業所、倉庫、サービスセンターなどの拠点でしょう。このような場所から排出される、
販促品、商品サンプル、梱包材、修理部品などは産廃となり得ます。

営業所や倉庫の環境監査で同じような指摘をしたら、これほどあからさまでなくとも、同じような
反応が返ってくる可能性があります。仮に産廃業者に出していたとしても、契約書やマニフェスト
をまともに運用していないケースは少なくありません。そんな場合に、どこまで強く出れるか。。。

ただ、修理部品の処理委託契約やマニフェスト管理が適切でなかったために、環境管理責任者が
有罪判決を受けて罰金を払ったと言う実例があります。

よく、「ここまでやる意義はあるのだろうか」との疑問が沸いて来ます。

「産廃として管理すべき廃棄物の範囲を、もっと狭めるべきである」とは、私の持論ですが、
このことは産廃と一廃の区分の問題へとつながり、さらには廃棄物処理法の抜本改正の議論を
巻き起こします。正直、私はそれが必要と思っています。

この、“駄”小話が、その動きを少しでも前に進めることになれば、幸いです。

■補足解説

実は、「あわせ産廃処理」というものがあります。市町村が産廃を処理する事が
できるというもので、廃棄物処理法第11条で明確に規定されています。

したがって、商店街の産廃を市町村に処理してもらうこと自体は問題ではありませんが、
契約書の締結が必要です。また、市町村が直接収集するか、市町村の委託を受けた
業者が回収に来るのであれば「市町村が処理」すると考えられるのでよいと思いますが、
一般廃棄物の許可を受けた民間の業者が収集に来ているのであれば、無許可業者への
委託となってしまいます。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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読み返すと、結構恥ずかしいのですが、折角書いたので、目をつむって
出しちゃいます。えいっ!!

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