議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

ビーフカツ横流し事件の排出事業者責任について

2016年02月04日 13時32分08秒 | 廃棄物事件簿
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廃棄食品を処理業者に横流しされてしまった場合に、
排出事業者は廃棄物処理法違反に問われるのかという
ご質問をいくつも頂いていますので、解説したいと思います。

■処理委託時に気を付けること
排出事業者は、産業廃棄物の処理委託をする際には、
①委託基準と②マニフェストの他、不法投棄などがあった場合に
受ける可能性がある③措置命令(行政処分)に気を付けなければ
なりません。

■ケース設定
それでは、
「処理委託したものが、横流しされてしまった」
という場合で、不法投棄のような環境への悪影響は発生していない
ものとします。

まず、委託基準(契約書作成)とマニフェスト等の基本的な違反は
なかったものとします。

①委託基準=シロ
②マニフェスト=シロ

しかし、処理業者のホームページを確認せず、条例で義務化されているのに
現地確認もやっていないとしましょう。しかも、処理費はやたら安い。
これは、注意義務違反を問われて③措置命令を受ける可能性はあります。
詳しくは、「行政処分の指針について」のp.29の「第9」をご覧ください。


さて問題は、そもそも横流しが③措置命令(行政処分)の対象になるかどうか
です。

■措置命令の発出の条件
措置命令発出には、「違反+生活環境への支障」のセットが条件です。

「委託基準違反」(法第19条の5)
「マニフェスト違反」(法第19条の5)
「注意義務違反」(法第19条の6)

のどれかに該当していることと、
さらに、

「生活環境の保全上の支障」

が発生しているか、その恐れがある場合に措置命令が出ます。

■措置命令の可能性は?
今回のケースは、委託基準とマニフェストは大丈夫だけど、注意義務違反に
引っかかるかも、とご心配かもしれませんが、大丈夫。

横流しでは、生活環境に支障は発生しません。
(食品の安全や衛生は、生活環境とは違います)

従って、③措置命令(行政処分)を受ける可能性は全くありません。

つまり、今回の事件では、排出事業者は廃棄物処理法上は何の罰則も、
行政処分も受けることはありません。
しかし、今回は、横流しということで生活環境に支障は生じませんが、
もちろん、これが不適正処理なら支障が生じますので、誤解なきよう。

■リスクマネジメントの問題
今回の事件は、廃棄物処理の問題というより、リスクマネジメントの問題です。
普通の産廃ではないのですから、普段の処理委託と同等の管理ではダメなのです。

ダイコーについては、横流ししたのに、処分したとしてマニフェスト報告をした
(虚偽記載)ことで捜索を受けていますが、そっちは本丸ではないでしょう。
実際、警察は不正競争防止法違反の方向で動いています。

では、排出事業者には責任はないのか?
確かに、マニフェストの虚偽報告があったのに措置内容等報告書の提出を
していなかったのですが、虚偽だったなんて分かりっこありませんから、
そこは違反とは考えません。

したがって、法的には責任を問えないかもしれません。
被害者といえば、被害者ですしねー。
もちろん、実は担当者は横流しされることを気付いていた、というのであれば
共犯になるかもしれませんが、仮にそうだとしても立証は難しいでしょう。

違反は問われなくても、ブランドリスクではあったはずです。
マニフェストは、何もないよりマシ、という程度のものだと認識すべき
かもしれません。
そうだったとしても、マニフェストに問題があれば突っ込むべきですが、
普通は虚偽記載を見抜くことはできないでしょう。
では、鵜呑みにするのか、ということですが、その都度疑っていたのではキリが
ないです。基本記載は正しい前提でやるしかありません。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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なお、今回のビーフカツは産業廃棄物の動植物性残さという扱いでした。

・施行令第2条第4号(動植物性残さ)
 食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として
 使用した
動物又は植物に係る固形状の不要物

厳密に言えば、原料として使用したモノだけが産業廃棄物で、いったん
食料品になったモノが廃棄物になったとしても、産業廃棄物ではありません。
一般廃棄物です。

ダイコーは一般廃棄物の許可を持っていないでしょう。
そうなると、壱番屋は無許可業者への委託になるので、思いっきり
違反(委託基準違反)になります。
もちろん、ダイコーも違反(無許可営業)です。

でも、これの適用はできないでしょう。

なぜなら、ほとんどの会社で、この手の物は産業廃棄物として
処理しているからです。もし、これを一般廃棄物だとすると、
全国の一般廃棄物処理がひっくり返ります。

はい、この話は聞かなかったことにしてください。
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ビーフカツ横流し事件が業界に与えるプラスの影響

2016年02月01日 12時02分58秒 | 廃棄物事件簿
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ココイチのビーフカツ横流し事件を受けて、業界の評判が
地に落ちたという関係者の嘆きが聞こえてきます。

安倍総理が言っているとおり、築城3年落城1日ということで、
今後色々と仕事がやりにくくなる面は出てくるかもしれません。

しかし、キチンとした仕事をしている処理業者にとっては、
追い風になっているはずです。なぜなら、排出事業者は、処理業界
が信頼できないからといって、廃棄物を処理委託しないわけには
いきません。その代わり、報道でもあるとおり管理に力を入れる
ことになるからです。

例えば、同様に廃棄製品を横流しされたニチレイのプレスリリースは
こんな感じです。
産業廃棄物委託プロセスの見直しについて

つまり、問題がある(ありそうな)業者への仕事がますます細っていく
のです。もしかすると、まともに仕事をしていても、選ぶ側が
「100%の安心ができない」ということで、取引を控える
ことも出てくるかもしれません。処理業者は、これまで以上に上手に
アピールする必要があります。

そして、「どう見てもこの会社は大丈夫だ」という処理業者に仕事
が集中していくはず、です、希望的観測ではありますが。

実際、今回の事件を受けて、処理業者選定方法についての相談や、
代行監査についての問い合わせが沢山来ているところです。

当然、取材の依頼もありました。(都合で私は対応できませんでしたが)

今回の事件が、どれほど大きな影響を及ぼすかは分かりませんが、
処理業界の優良化を進展させる方向にあるのは間違いないと
思います。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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今回の事件での壱番屋の対応のすばやさが評価され、株価を上昇させた
側面もあったようですが、長期的に見て壱番屋にプラスに働くとは
ちょっと思えません。

ダイコーから横流しされていたのは、ニチレイの他にもコンビニ各社
イオン、マルコメの製品がありましたが、この事件は最初に発表した
“ココイチの事件”という印象を植え付けました。あくまで他の会社は
オマケという扱いです。

もし、セブンイレブンが最初に発表していたら、
「セブンの豚バラ蒲焼き横流し事件」
として人々の記憶に残ったことでしょう。

いい話も、悪い話も、1番目が最も目立ちます。
その意味では、壱番屋はアンラッキーだったと言うべきでしょう。
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