議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

不法投棄廃棄物と行政処分の関係

2014年05月02日 16時26分34秒 | コンサル日誌
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先日の記事で、説明が中途半端だったテーマがありますので、
ちゃんと説明しておきたいと思います。たまには排出事業者の方に
役に立つ??話です。

この記事では、こんなことを言っていました。

 なお、ご存じのとおり、国内に不法投棄廃棄物は1,777万トンありますが、
 これはどうなるのでしょうか。生活環境に支障がないものは、やはりそのまま
 残るんでしょうね。
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17550

ポイントは「生活環境に支障がない」です。

「生活環境の保全」は、廃棄物処理法にとって委託基準より、マニフェストより、
それどころか許可制度や不法投棄の防止より大切なことなんです(若干言い過ぎ)。

なにしろ、廃棄物処理法の目的は「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」
なんですから(第一条より)。この目的を達成するために、廃棄物処理法の
全ての規定が作られたのです。

ということで、不法投棄があっても、「生活環境の保全上の支障」がなければ、
放置しちゃったりするのです(これもちょっと言い過ぎ)。


でもでも、不法投棄現場の周辺住民からすると、この通りの感想を持つはずです。


具体的には、法第19条の4~8まで、処理業者や排出事業者に措置命令を出せたり
行政が措置を講ずることができるとの規定があるのですが、これらすべてについて
「生活環境の保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあり」という条件がある
のです。

そう、これが措置命令などを出すための「条件」なんです。
しつこいようですが、「支障がなければ、措置命令が出せない」のです。
同様に、行政の費用負担による撤去も、やりにくいのです。

ただし、これは、行政処分の話であって、不法投棄という犯罪行為に対しての
刑罰は、支障の有無にかかわらず科せられます。
ということは、処理業者が不法投棄をしたら、罰則を受けるかもしれませんが、
不法投棄された廃棄物が撤去されるとは限らないのです。仮に、3億円の罰金と
無期懲役が言い渡されたとしても、その3億円は廃棄物の撤去に使われるわけでは
ありませんし、死ぬまで懲役=廃棄物の撤去作業、がされるわけでもありません
から。

裏を返すと、「生活環境に支障がある廃棄物を委託する場合は、気をつけろ」
ということです。言われなくても分かっとるわい、ということかもしれませんが、
安定型であれば、不法投棄されても措置命令はでないのです。リスク低いですねぇ。

「シメシメ、有害物質がないものは現地確認省略しちゃえ」と思うのではなく、
「ヨシ、有害物質があるものは、十分注意して現地確認しよう」と思ってください
ね、結果は同じことかもしれませんが・・・。


それに、実際は、「ウチは安定型しか出してないよ」といっても、その業者が
有害物質を含んだ廃棄物と一緒に不法投棄したら、そんな主張をしても無意味
でしょう。たぶん、六価クロムや鉛入り汚泥を委託した会社と十把一絡げで
撤去をすることになるんだと思います。いや、多少の配慮はあるかなぁ。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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