議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

廃棄物の定義

2021年04月19日 06時36分18秒 | コンサル日誌
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皆様こんにちは。

廃棄物の定義については様々な解説がされていますが、
ここでは、主要なサイト・資料を引用しつつ、
重要なポイントを補足説明したうえで、ケーススタディ
を行います。


廃棄物処理法第2条では、廃棄物について

「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、
廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、
固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて
汚染された物を除く。)をいう。」

と定義しています。

この条文の解釈として、通知で総合判断説が提示され、
最高裁判所もそれを支持したという経緯があるのですが、
現実には、総合判断説というあいまいな基準を日常実務で
使うことはできません。

そこで、通常は客観的な判断基準として
「有価売却できるかどうか」
が使われています。

この問題については、すでにウェブ上で解説記事が
沢山ありますので、いくつかご紹介します。(社名敬称略)

総合判断説他について

環境省がまとめた資料
(ここで紹介されている規制改革通知は古いので注意)
国立環境研究所の資料
アミタの資料
大栄環境の資料 
■佐藤弁護士の記事
 水戸木くず裁判について

また、買取価格より運賃のほうが高くなってしまい、
排出元にとってはトータルで支払いのほうが多くなることがあります。
これを手元マイナス、又は(産廃業界では)逆有償とも言います。

通知では、買取ってもらう業者のところに到着すれば有価物とみて
よいとしつつも、運搬時については特に言及していません。
したがって運搬時は、それこそ総合判断するしかないのですが、
これについても、解説記事をいくつかご紹介します。

手元マイナス(逆有償)について
アミタの資料
佐藤弁護士(アミタサイト)の資料
リバーグループの資料
手元マイナスと逆有償という表現について深堀


<<CASE STUDY>>

■事例 
ある業者Xに3tの有価物を10円/㎏で回収に来てもらう
ことになりました。運賃は2万円/車かかります。
10円/㎏×3t=3万円で売却すれば、運賃2万円を払っても1万円の
収入となるため、廃棄物という扱いをしませんでした。

ところが、Xが自社工場で計量、検品すると、予定より量が
少なく、しかも事前のサンプルより品質の悪い物が混入して
いることが判明しました。結果として、3万円ではなく1.5万円
での買取りになりました。

これを相殺すると、
1.5万円(買取)-2万円(運賃)=-0.5万円
と赤字になってしまいました。これは手元マイナスとして
運搬時だけでも廃棄物扱いとして、契約書とマニフェストを
さかのぼって締結すべきでしょうか。

■検討
<契約内容が変更になったと考えられないか>

この事例は、本来意図していた取引内容が変わり、契約内容が
変更になったと考えることができると思います。
当初は処理委託をしていたわけではありませんから、そこには
問題はありません。結果として金額に変動があったということで、
請求額が変わっただけ、という認識で問題ないのではないでしょうか。


<もし買取すらできない場合>

もしこれが、買取りすらできない(あまりに品質が悪い)ため、
処分費が必要となった場合はどうでしょうか。
このような場合は返品することが多いと思いますが、返品せずに
産業廃棄物として処理委託の手続きを踏むこともできるでしょう。

具体的には、まず当該"旧"有価物は業者Xの工場に置かせて
もらいます。必要であれば保管量を払います。業としてやっている
のではないので、倉庫業の許可もいらないでしょう。
契約がなければ処分委託契約書を作成し、
マニフェストを交付(運搬は終わっていますので、A,C1,D,E票だけ)
します。
マニフェストの交付事務代行を業者Xに委託する方法も考えられますが、
現物の確認も含めて自社の社員がXの工場で直接交付したほうが
望ましいでしょう。

その点、電子マニフェストなら現地に赴かずに登録できて
しまいますが、電子マニフェストでも現物と登録内容の
整合性チェックを求められています。状況が状況だけに、できれば現場へ、
少なくとも現物を写真でしっかり確認すべきでしょう。
 ↓電子マニフェストの規定
・施行規則第8条の31の2第4号
 当該産業廃棄物の種類~中略~が相違がないことを確認の上、、、

<恒常的な場合>
なお、この取引が恒常的となるのであれば、手元マイナス取引と
考えるべきでしょう。しかし、手元マイナスだからと言って、
通知に従って運搬時も廃棄物扱いするべきとは言えません。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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廃棄物の定義について、リンクを紹介し、事例の研究も含めて
まとめてみました。
廃棄物処理法の他の規定についても、少しずつ書いてみたいと
思います。
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ローマ法王と環境問題

2019年10月02日 17時51分04秒 | コンサル日誌
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皆さんこんにちは。


娘の学校がカトリックということで知ったのですが、ローマ法王が
11月に来日されるそうです。38年ぶり2度目ということで、キリスト教の
関係者間では超ビッグイベントのようです。
https://popeinjapan2019.jp/

私はキリスト教徒ではありませんが、ローマ教皇=法王が環境問題に積極的に
発言しているということで、少々注目しています。

2015年に出した回勅という文書では、環境問題や気候変動問題を取り上げて
います。回勅とは、
「ローマ教皇から全世界のカトリック教会の司教へあてられるかたちで
 書かれる文書で、道徳や教えの問題についての教皇の立場を示すもの」
だそうです。

 ◎ここは、よくまとまっています
 
 ◎英語ですが、原文リンク
 
 ◎日本語版は書籍化されています
 


少々乱暴にまとめると、
「環境問題は、調和の問題、心の平安の問題でもある」
ということで、
「もっと真剣に取り組むべき」
という叱咤激励をしています。


HPでは常設のカテゴリーを設け、例えば、先日の気候変動サミットに
対するビデオメッセージなども掲載されています。



日本ではほとんど報道されていませんが、ローマカトリック教会は12億人
以上の信者を持っているというのですから、相当な影響力があるはずです。

ということで、ご紹介でした。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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娘、というのはプロフィール写真に乗っている赤ちゃんのことです。
保育園もたまたまキリスト教系でしたが、今や中学生。

写真は10年以上前のものですが、ここまであっという間でした。

今から10年後は2030年、あっという間なのでしょうけど、
どんな世界が待っているのか、子供たちから
「無責任なオトナのせいで酷いことになった」
と非難されないように、頑張りましょう。
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クールビスですが、今朝は暖房の方も??他

2019年05月09日 08時37分41秒 | コンサル日誌
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ご存知かもしれませんが、4月1日から、産業廃棄物の許可自治体が
増えています。
中核市が増えただけなのですが。
https://www.ecoo-online.jp/waste-disposal-low/tips/20180529-2/

何年前のことか忘れましたが、
「煩悩の数(108)を超えちゃったなぁ、どこまで増えるんだろう」
と思っていましたが、中核市の要件が緩くなったこともあり、
規模の小さい市がどんどん増えています。いまや、126自治体。
収集運搬業の許可と切り離されたからよかったものの、さすがに無駄に
分権しすぎて、非効率になっているのではないでしょうか。

どこかで、再考が必要と思います。


5月1日からは令和になりましたが、これまで散々騒がれていたため
一種の流行り言葉のような感じがしていました。
それが、役所のまじめな書面に「令和元年」とあると、なんだか
変な感じです。例えば、このCOOL CHOICEのページ


そのうち慣れるのでしょう。


さて、5月1日からはクールビズも始まっています。

COOL CHOICEとクールビズの関係、ご存知でしたか?
どうやら、クールビスはCOOL CHOICEのの主要施策のひとつなんだ
そうです。知りませんでした。もちろん、クールビズのほうが
先輩格です。

最近は、冬でもノーネクタイという会社もありますし、
私も個人的にはそうですし、着るものについては好きにしたら
いいではないか、と思っています。
今朝の東京は最低気温9度でしたから、暖房を使った方もいた
のでは?

それより問題は、冷房の設定温度です。

28度って、おかしいじゃないかと指摘されていましたが、
環境省から説明があります。

単なる目安、だということです。


設定温度なんてナンセンスだいうことで、平気で20度設定にしている
こともありますが、それも極端です。うちのオフィスでは、温度表示が
大きいデジタル温度計を室内に設置して、可視化を図っています。
「今何度?」トークから「じゃぁ設定変えようか」にもつながるので
悪くないと思います。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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5月28日に、上智のソフィア・エコロジー・ロー・セミナー
講師をします。

テーマは、「中国の廃棄物輸入禁止の影響と対策」ということで、
需要曲線と供給曲線のような、まだ他では話したことのない視点
も交えて、最近の業界の話、排出事業者としての注意点、今後の話、
グループの取り組みなどをご紹介します。

http://www.sophialaw.jp/info/info_190405_01.html

よかったら、ぜひご参加ください。
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発注者が建廃を処理委託してもよいか?

2019年01月16日 18時42分18秒 | コンサル日誌
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皆さんこんにちは。

読者の方から、この記事についてのご質問を頂きました。
このテーマは難しいので、改めてご説明したいと思います。


丁寧にご質問をいただいたのですが、ポイントとしては、

「建設工事の発注者が建廃を処理すると、廃棄物処理法に抵触し、
 罰則対象となる」
と、多くの自治体で聞いたそうです。

そのため私が言っている
「発注者が処理委託しても廃棄物処理法違反にはなりません」
はおかしいのではないか、というご質問です。


少々ややこしいのですが、この話は
①発注者が建廃の処理をすると罰則の対象になる可能性はある
と同時に
②発注者が建廃の処理”委託”をしても罰則の対象にはならない
ということなのです。

もう少しかみ砕くと、
①は、他人の廃棄物を無許可で処理する(無許可営業)
②は、他人の廃棄物を処理”委託”していることになり、罰則がない
ということです。

②について、疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、
これはつまり、ある廃棄物を排出事業者ではない第三者が処理委託
しても構わない(禁止されていない)ということです。廃棄物処理法の
どこを探しても、それを禁止する規定はないのです。
例えば、自社の敷地に産廃を不法投棄された場合、仕方なく自社が
排出事業者として処理委託しても構わない(それを求める行政指導の
方が一般的でしょう)のと同じです。
この2つの話は、法律上の位置づけはほぼ変わりませんよね。

さて、法律の文言上の問題がないからと言って、法の趣旨に反していれば
そのようなことはすべきではないしょう。しかし、廃棄物処理法の元々の
考え方からすると、建築物の解体工事を発注する段階で、その建築物は
不要物=廃棄物なのですから、解体工事の発注者が建設廃棄物の排出者
になるはずです。解体業者は、廃建築物の解体をしただけですから。

ところがそうすると、個人が自宅の解体を業者に発注した場合でも、
個人が自宅を廃棄しようとした=事業活動に伴わない廃棄物=一般廃棄物
となってしまい、市町村の一般廃棄物処理に相当な負荷がかかります。
そのため通知などにより、建廃は元請業者(解体業者)
が排出事業者となって、産廃として処理することになったのです。
したがって、「発注者による建廃処理」は、本来問題がないはずの方法です。

法第21条の3で「排出事業者=元請業者」を法律で明文化したのは、
元請が下請け業者に排出者責任を押し付けないようにするのが主目的
です。
発注者が自ら処理又は処理委託することは想定していなかったため、
「発注者が処理しても良し」という規定も入れなかったのでしょう。

もちろん、排出事業者である元請が発注者に”処理を委託”するような
形であれば委託基準違反+無許可営業or受託禁止違反と言われるでしょう。
そのため”処理を委託”、”処理を受託”するのではなく、解体だけを発注し
その後の物(特定の物に限定しても可)は現地に置いておくように
指示(できれば書面化)しておくなど、取引内容を明確化するのが理想です。

こうすれば、発注者は、それを処理”委託”しても違反にはなりません。
処理をしてしまうと無許可営業説を完全否定できんあいので、少々微妙です。
でも、質問でもしない限り、誰も文句を言ってはこないでしょう。


こんなややこしいことまで念頭に置いて、その場で質問対応できる
自治体担当者はなかなかいないでしょう。仮に説明できるとしても、
質問をしている相手の知識レベル、コンプライアンス意識が分からない
状況で、ここまでの話をいきなりするとも思えません。
とりあえずの行政指導としては、「発注者は建廃を扱ったらダメ」という
ことになるでしょう。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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うう、寒いですねぇ。

今週は久しぶりに三重中央開発行きですが、出来れば車の中からの視察を
中心に、外に出たくないというのが本音です。

コメント (2)
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静脈産業の売上高の問題

2017年12月15日 09時25分52秒 | コンサル日誌
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こんにちは

皆さんの会社の売上高は、どれくらいでしょうか。
今の時代、「会社の規模は大きければいい」というものではないとは
思いますが、大きいなりのメリットはあります。

例えば、産業廃棄物の処理委託先の規模として、売上高が10億円未満
というのは少し心もとないかもしれません。
合弁会社を作るようなビジネスパートナーとして考えるのであれば、
売上高が100億円未満では安心できないのではないでしょうか。

つまり「大きい会社は安心できる」というのが、私の感覚です。

さらに、自社の全国の産業廃棄物の処理を一括して任せるのであれば、
1000億円未満だと、とても大船に乗った気持にはなれないと思います。
もちろん、全国に処理施設のネットワークが必要です。


ところが、売上高10億円を超える産業廃棄物処理業者は、全体の10%も
ありません。
逆に200億を超える会社は、なんと3社のみ。
(エコシステム、ダイセキ、大栄環境)
平成23年度産業廃棄物処理業実態調査業務 報告書」より


私が所属する会社のグループ企業でも、業界最大手とはいえ

・リバーグループは昨年度328億円
(鉄・非鉄スクラップ中心なので、上記3社には含まれていません)
 リバーグループ環境社会報告書より

・大栄環境グループは昨年度530億円
 大栄環境グループの環境づくり より

ですので、仮に両社足しても1000億行きません。

全国の廃棄物処理を任せてしまおう、というスキームが組める会社と
なるためには、全国のネットワークだけでなく、安定した売り上げ
収益基盤が必要です。
こういった会社で市場を寡占化すれば、廃棄物処理法も安心して
合理化されるのではないでしょうか。

個人的にはこんな世界を狙っていますが、まだまだ先は長いですねぇ。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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「ムリサイクル」って聞いたことありますか?
なぜ今まで思いつかなかったのか、いかにもありそうな言葉ですが、
ウェブでもヒットしません。
言うまでもなく、「無理なリサイクル」をムリサイクルに縮めた
言葉です。

インダスト12月号の記事
「排出事業者に対して産廃処理業者が求めること」
のp.32に出てきました。

産廃業者から排出事業者へのクレーム、愚痴が満載です。
是非お目通しを。
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排出事業者が複数いてもいい

2017年11月30日 12時45分19秒 | コンサル日誌
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こんにちは

今回は、排出事業者が複数いてもいい、という話です。

以前、JVの排出事業者について話題にしたことがあり、なかなか盛り上がりました。
http://blog.goo.ne.jp/jizokukanou/e/69e05f547840bb045965a1441882acb9

JVとは、複数の建設会社が共同企業体(ジョイントベンチャー、JV)として
建設工事を受注、施工していることを言います。関係する会社が出資して
法人を設立しているのではなく、建設工事の都度結成、解散される組織体です。

他にも、複数の会社が費用も人員も折半で展示会に出展し、会場で廃棄物が
排出された場合はどうなるでしょうか。処理費も折半しているのであれば、
どちらか片方の会社を排出事業者だと決める根拠が見つかりません。


実は、過去の判例では「仕事を重畳的に支配、管理している」場合は、複数の
会社が並んで排出事業者になるべきであると結論づけています。

「東京高裁 5.10.28 判決」
 また、そもそも、被控訴人の立論の前提である廃棄物を排出する事業者が
 複数であってはならないとする点もその根拠は疑わしく、元請け、下請けの
 関係に立って仕事がされる場合であっても、その実態によっては、下請業者も
 独立の主体として当該仕事を施工しているとみられるのと同時に、元請業者も
 下請業者を履行補助者として当該仕事を施工している(当該仕事を重畳的に
 支配、管理している)と評価する余地があるのであり、その場合は、
 元請業者も下請業者と並んで廃棄物を排出した事業者に当たることになる
 というべきである。
※:重畳(ちょうじょう)的とは、「幾重にも重なっているさま」を指し、
並んで、連帯してという意味です。

前述の展示会や建設JVの例では、両者が共同で一つの仕事をしています。
その意味では両者が並んで排出事業者になると考えることができるはずです。

(この裁判は、元請けと下請けのどちらが排出事業者になるかで争われた
ものです。法改正により「元請けが排出事業者となる」と規定されましたが、
判決の判断根拠となった考え方は有効です。)

排出事業者が複数いるとすると、契約書とマニフェストの記載方法が
問題として浮上してくるでしょう。おそらく、1社が代表して排出事業者
となる方法と、各社連名にする方法があるでしょう。まず、代表者が
他の排出事業者を代理して契約するというのであれば、他の排出事業者も
契約をしたことになるので問題ないでしょう。その場合は、代表の
対象となる排出事業者の範囲を別紙などで明示する必要があります。
各社連名とする場合は、全ての会社が直接契約の主体となりますので
問題ありません。
マニフェストの排出事業者欄には、備考欄も活用して複数の会社名を記載するか、
代表者だけを書いて備考欄に「排出事業者については契約書記載の通り」
などと書けばよいでしょう。
ただ、マニフェスト交付等状況報告書は代表者だけが提出するのか、各社が
提出するのか、多量排出事業者の報告の数量は案分するのかなど、
悩ましい問題が残ります。基本的には自治体に提出する書類ですので、
自治体と相談して記載方法を決めることになるでしょう。

なお、代表者が代理人になる場合の方法については、大阪府のこちら
ページでも紹介されています。実際には民法の規定を踏まえて法務の方と
相談して実施してください。

一方で、いずれかの会社が排出事業者となることを事前に当事者間で
決めている場合もあります。当事者の契約で排出事業者責任を自由に
変更できるというものではありませんが、判断に迷うケースにおいては
有効な方法でしょう。責任の所在がはっきりしないと不適正処理に
つながるリスクが高まりますので、適正処理を目的とした廃棄物処理法の
運用としては合理的です。この場合のマニフェストは、排出事業者
となる会社名義でよいでしょう。

複数の会社が関与する事業形態は無数に存在します。したがって
排出事業者が誰であるかの判断は都度解釈するしかありません。
契約書やマニフェストの書き方についても、推奨される方法が公式に
提示されているわけではありませんが、ある方法が違反であるとして
大きな問題になったという話も聞いたことはありません。法律で
想定していない状況ですし、行政としても個別具体的に検討するという
スタンスになると思いますので、判断に迷う場合は都度相談されると
よいでしょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4月施行の法改正でも、親子会社が一体的に、共同して排出事業者
になるケースについて「当該認定グループが共同して、委託を行う
とともに、マニフェストを交付すること。」と書いてあります。
http://www.env.go.jp/press/files/jp/107506.pdf
この場合の契約書とマニフェストの記載方法がどうなるのか、上記方法で
よいとされるのか不明ですが、法人が違うからと言って杓子定規に
別人扱いしなくてもいいよね、という流れができているのかもしれません。
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スズトクのウェブで情報発信中

2017年08月17日 12時07分02秒 | コンサル日誌
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以前ご案内したように、「じゅんかんニュース」というニュースレターを
堀口責任編集でスズトクから発信しています。こちらは、議論de廃棄物の
ようなマニアックで気まぐれな発信内容・頻度ではなく、ちゃんとしてます。

その内容を、先月リニューアルしたウェブ上でも展開し始めました!!
http://www.suzutoku-group.co.jp/category/jyunkan-news

特に
「法改正~そこが知りたかった!!」
というカテゴリーは、それなりに詳しく実務寄りの内容にしていますので、
ご参考ください。

特に水銀関係は、今月の日経エコロジーの連載でも取り上げましたが、ややこしい
です。紙のメディアはスペースが限られているので、今回の日経エコロジー
だけでは消化しきれないかもしれません。網羅的でもありましたし。

その点、「法改正~そこが知りたかった!!」では、ほとんどの方はここだけ
知っておけば用が足りると思われる「水銀使用製品産業廃棄物」の対応に
絞って説明していますので、それなりにわかりやすいかと。

「法改正~そこが知りたかった!!『水銀廃棄物規制の施行対応 その2』」


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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本文中にもある通り、日経エコロジー9月号では、水銀廃棄物について
まとめています。

タイトル中「産廃が追加」という表現と、文中「産廃として追加」といった
表現がありますが、何とも表現しがたく、とりあえずこの文言になって
います。

78ページ右段中央上の文中「産廃として追加」というのは、
「水銀含有ばいじん等」や「水銀使用製品産業廃棄物」に該当するものが
これまでは特別管理産業廃棄物扱いされたこともあったが、改正により
明確に区分され、普通の産廃に位置づけられた、という意味です。

さらに、タイトルで「産廃が追加」とあるのは、これまで法律上は廃棄物として
想定していなかった金属水銀を、「廃水銀」ということで、廃棄物に
位置づけた、という意味も含みます。
「産廃・特管産廃としての区分が追加」という表現でもよかったかもしれませんが、
悩んだ挙句、現状案となりました。

これ一つとっても、説明が難しい改正でした。
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大栄環境の和泉RCを見てきました

2017年07月09日 23時25分43秒 | コンサル日誌
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※お知らせ※※※※※※※
メルマガ配信を、現在の方法からGoogleグループ経由に変更する予定です。
後日ご招待メールが行きますので、よろしければ承諾お願いします。
※※※※※※※※※※※※

大栄環境の和泉リサイクルセンターを見学しました。

大栄環境と言えば、
産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」の取りまとめについて
産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言(概要版)
の16ページの売上高上位10社のリストにある通り、

「大栄環境単体で、産廃業界の売り上げ第3位」
であり、
「グループ会社の三重中央開発も含めれば業界No.1」
という会社です。

ちなみに我がスズトクグループ内には、売上が上位10位以内に
ランクインする会社がありますし、グループを合計すると相当な上位
ランクに入りますが、有価物の扱いが多いのでこの統計から外れて
います。釈然としませんが。。。

さて、和泉はそんな大栄環境の創業の地だということで、
多種多様なリサイクル施設があるだけでなく、埋立中+埋立完了後の
跡地利用中の最終処分場があり、なるほど処理業界の色々を
一気に見ることができる稀有な場所でした。
http://www.dinsgr.co.jp/business/sv_nt/group_rc_izumi.html

しかし、私がそれより感銘を受けたのは、住宅どころか、
農業用水池のすぐ近くに最終処分場を造ったということです。
丁寧に、誠実に説明をして、信頼関係を構築して反対運動を
乗り越えた、その根気と熱意はただ事ではないと思いました。
安倍さんと菅さんには爪の垢を煎じて飲んでほしいものです。

そしてそれを成し遂げた者だけが手にすることが出来る、
成果の大きさも目にしました。敷地いっぱいに建屋を建設し、
(たぶん)すべての作業をその建屋内で行い、清掃を徹底し、
来客対応を含め隅々まで行き届いた社員教育は、その根気と
熱意の賜物なのかもしれません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それにしても、人間、簡単にあきらめてはいけないと思いました。
特に、「廃棄物」だということだけで話が前に進まない仕事も
ありますが、大栄さんのこれまでの実績に勇気を得て、
真摯にコツコツと仕事を進めていこうと思いました。

さて、水銀廃棄物関連の資料が、以下に公開されています。
環境省が先月行った説明会のPPT資料はあります。社内説明用としても
使える部分があるでしょう。
説明会場では、Q&A集もアップされると説明があったのですが、
まだのようです。
http://www.env.go.jp/recycle/waste/mercury-disposal/index.html

水銀使用製品産業廃棄物の対応方法は、石綿含有産業廃棄物と似て
来ると思います。

石綿含有産業廃棄物の場合の例

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廃棄物行政の本格的なIT化を

2017年03月23日 10時37分44秒 | コンサル日誌
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「マニフェスト制度の運用状況に係る総点検」の報告が2月に出ています。

電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップに基づく
 マニフェスト制度の運用状況の総点検に関する報告



総点検という割には物足りなかったのですが、私が気になったのは、
システムにより虚偽記載対策をするという、その手法です。

先日スズトクホールディングスから、発信したニュースレターでも
取上げたのですが、会社の正式なメディアですので、あまり好き放題
書けません。ということで、こちらで補足します。

以下、改めて引用です。

**********************
【1】民間事業者が運営する電子マニフェストシステムにおいて先行して
 取組が行われている廃棄物処理の過程における位置情報画像情報について、
 情報処理センターと接続し、情報を保管する仕組みの導入
【2】産業廃棄物処理業者の許可内容や処理委託内容とマニフェスト情報が
 異なる場合のエラー検知機能の強化
**********************

【1】は、GPSと写真を電子マニフェストに連動させるのでしょう。
これは、システムを組めば取り合えずできますね。普及するかどうかは
別問題ですが。

【2】は、これもシステムは組めますが、データを入れないと稼働しません。
特に許可内容を入力しないといけません。もちろん、「さんぱいくん」
のように処理業者に入力させるわけにはいきませんから、都道府県の
仕事になります。
これを、都道府県の任意の仕事ではなく、電子許可証を正式な
ものにしてほしいです。そして、契約書への許可証の添付を不要とします。


なお、「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」では、

*******************
また、将来的には世界最高水準のIT 利活用社会の実現に向け、
電子マニフェストと電子申請との連携等を含め、全てのマニフェスト情報
及び許認可情報が電子化され、IT技術の活用による効率的・効果的な
システムを構築することも期待される
*******************

とも言ってますが、総点検の報告の方がある面では先を行っていますね。


さらに進めると、契約書情報の登録と電子マニフェストを連携
させて、書面契約を免除すれば、電子化は一気に進むはずです(たぶん)。
行政処分情報も連動させれば、頼りない処理困難通知よりよほど
信頼性があります。

そして、重要なことは、使い勝手がよいこと。

契約書情報の登録にしても、現状の記載事項を全て手入力させるのではなく、
本当に必要な記載事項に限定するとか。電子契約の形式を取り印紙税を
節約できるようにして、契約内容の変更もサクサクできるように
するとか。

処理業者の実績報告も、もちろん不要にします。

制度設計、やりたいなあ。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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そうそう、宣伝です。

既述の通り、スズトクのニュースレターを発行しましたので、是非
ご登録ください。

<購読お申し込み>
http://www.suzutoku.co.jp/ho/news/newsletterentry.html


前回(No.1)の目次は、
┌────────────────────────────────────────────────┐
 <目次>                      
 ・リサイクル市場動向 「鉄、非鉄、セメント、RPF」 
 ・至言じゅんかん                  
 ・鉄くず小僧が行く                 
 ・そうだったの?リサイクル             
 ・編集後記                     
└────────────────────────────────────────────────┘
でした。
バックナンバーはそのうちウェブで公開されます。

既に、ご好評のコメントをいただいております!!


次回は今月末を予定していますので、よろしくお願いします。
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今年を振り返って

2016年12月28日 00時19分58秒 | コンサル日誌
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今年は、正月明けにアミタに転職する旨申し出たのがスタートでした。
18年間お世話になったわけですから、今年最大のイベントだったと
言えるでしょう。

その直後の、ビーフカツの横流し事件は、業界を揺るがす大事件でした。
世間ではココイチに同情票が集まりましたが、業界仲間の間ではココイチの
責任を問う声が主流なのですが、はてさて。。。

4月の転職後からは、実は結構事情が違うスクラップ業界を見聞し、
目から鱗が落ちまくりました。
さらに、小型家電リサイクルを半年担当し、工場、自治体の実情も
生の声を聴けましたし、国の認定制度の申請実務に携わりました。
その合間で、人材募集もしました。

10月からはメジャーヴィーナス・ジャパンという
「和製静脈メジャーになるぞっ!!」という会社に出向になりました。
これまでのキャリアで最も工場に近い場所で仕事をすることになったの
ですが、なんと収集運搬業の許可申請をしました。一生やることはないと
思っていたのですが、何事も自分でやるのが一番勉強になります。
今は、非常に興味深い内容のコンサルをやらせていただいていて、
しばらくはこれで手一杯です。
来年は、工場にもっと関わることになるはずです。

あんなに沢山やっていたセミナー、講演は、ほんの少ししかやりません
でした。
これは、たぶん来年以降は少しずつ増えると思います。

そして結局、ニュースレターが年内には出せず、心残りで申し訳ない
思いと焦る気持ちで一杯です。


<今年の総括>
お気づきになったかもしれませんが、今年はあれこれと沢山の勉強を
させていただきましたが、実は生産的なことは何も成し遂げていない
のです。

こんなことでいいはずがありません。

来年は、成果を出していく年にしたいと思います。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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来年は、廃棄物処理法改正ですね。

過去10年ほどの間、各種リサイクル法や通知で、廃棄物の定義、区分に
ジャブを入れる規定がありました(以前、環境新聞でも散々書きました)。

今回、「すき間」つまり有価物に規制が入るのは、廃棄物処理法本体へ
与えられる初めての直接的な衝撃です。
どんな頑丈な堤防でも、小さな穴から崩壊が始まる、ということで、
5年後の大改正に向けたよいきっかけになるのではないかと期待しています。

では、皆様よいお年を。来年もよろしくお願いします。
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