議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

事業者による一般廃棄物の越境委託

2009年06月15日 05時21分33秒 | コンサル日誌
 先日の「一般廃棄物を委託する際の注意点」という記事で、一般廃棄物の越境委託は問題ないと説明しました。これについて質問が来ていますので、もう少し詳しく説明します。

■一般廃棄物処理計画の調和(=市町村の事務)
 法第6条は、一般廃棄物処理計画について記載されています。第4項では、以下のように記載されています。
*法第6条第4項*******
 市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たつては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。
**************

 一般廃棄物の流出や流入を把握しておかないと、周辺の市町村の一般廃棄物処理計画との調和など取れるはずもありません。各市町村の区域内での処理が望ましいので、原則越境移動がNGと(指導)されていてもおかしくはありません。
 しかし、この規定は市町村に向けてのものであって、排出事業者には関係はありません。

■市町村の委託基準(=事業者とは無関係)
 一般廃棄物は市町村がちゃんと計画を立てて、責任を持って処理しなければなりません(法第6条の2第1項)。その際には、処理基準を守る必要がありますし、もし委託するのであれば委託基準を守らなければなりません(法第6条の2第2項)。その委託基準については、施行令第4条に記載されており、市町村外にある処分場に委託する(つまり越境委託する)場合について下記のように記載されています。

*施行令第4条第9号************
第七号の規定に基づき指定された一般廃棄物の処分又は再生の場所(広域臨海環境整備センター法第二条第一項 に規定する広域処理場を除く。)が当該処分又は再生を委託した市町村以外の市町村の区域内にあるときは、次によること。
イ 当該処分又は再生の場所がその区域内に含まれる市町村に対し、あらかじめ、次の事項を通知すること。
(1) 処分又は再生の場所の所在地(埋立処分を委託する場合にあつては、埋立地の所在地、面積及び残余の埋立容量)
(2) 受託者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては代表者の氏名
(3) 処分又は再生に係る一般廃棄物の種類及び数量並びにその処分又は再生の方法
(4) 処分又は再生を開始する年月日
ロ 一般廃棄物の処分又は再生を一年以上にわたり継続して委託するときは、当該委託に係る処分又は再生の実施の状況を環境省令で定めるところにより確認すること
*************

 〔赤字部分〕持ち込み先の市町村に事前通知しなければなりません。さらに〔青字部分〕1年に1回以上実地に状況確認することとされています(施行規則第1条の8参照)。
 しかし、そもそもこの話の大前提である法第6条の2第1項、同条第2項は市町村の責務について述べたものであり、事業者が処理を委託する場合は適用を受けません。そりゃそうですよね、毎年の実地確認を法律で事務付けられるなんて、産業廃棄物より厳しいです。

■事業者の委託基準
 事業者が処理を委託する際の基準は、法第6条の2第6項と同条第7項に記載されています。許可業者に許可の事業の範囲内で委託してください、といういつもの内容でそれ以外にはありません。ただ、条例については別途規定がある可能性がありますので、確認されるとよいでしょう。
 なお、数年前にいくつかの自治体(市町村も含む)に電話で確認したところ、「越境して委託しても特に問題はない」という回答がほとんどでした。持ち込み先の市町村に一言伝えておくとよいかもしれない、条例がないか気をつけたほうがよい、というアドバイスはありましたが、法律で禁止されているという説明は受けていません。

■結論
 ということで、越境を禁止する規定はどこにも見つかりませんので、禁止はされていないと思います。越境委託する場合は、収集運搬の許可が積む場所と卸す場所にあることを確認してください。それが一番大変なんですけどね・・・。

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20 コメント

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ジクナイ処理原則? (廃棄物ビギナー)
2009-06-18 15:50:07
詳細なご説明ありがとうございます。
具体的に示しますと、A市で事業活動をおこなっている排出事業者が、A市とB市の両方の許可を保有している許可業者に委託して、B市の清掃センターに搬入することができる。ただし、B市に一言伝えて、条例を確認すること。といったことでしょうか?以前、市に相談したところ「ジクナイ処理の原則」(カナ部は、たぶん”自区内”)というのがあって、市の外へ持ち出してはいけませんと、言われてしまいました。この”原則”というのがミソですね。
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根拠を確認してみてください (堀口昌澄)
2009-06-19 08:45:00
廃棄物ビギナー様

 コメントありがとうございます。

 「自区内処理の原則」とは法律のどこに規定されていて、なぜ「持ち出してはいけません」なのかということを書面で確認されるとよいでしょう。条文を確認させて欲しいというと、嫌味な感じがするかもしれません。でも、行政の方は民間企業に比べてその辺の抵抗は少ないはずです。普段から法律を扱っていますから。

 それに、どこに根拠があるのかということを確認するのは、事業者として当然のことです。「~といわれました」で帰ってきたらそれこそ「ガキの使い」です(言いすぎ?)。

 指導を受けたら、必ず条文のどこに根拠があるのかを確認する癖を付けられるとよいと思います。
返信する
確認をすることは大切ですが…… (真茶香)
2009-06-19 21:43:19
> 「自区内処理の原則」とは法律のどこに規定されていて、なぜ「持ち出してはいけません」なのかということを書面で確認されるとよいでしょう。

 市町村は、その区域内で発生する一般廃棄物を処理する責任があります。
 そのために、市町村は「一般廃棄物処理計画」を定めて、それに則って処理を行っています。
 この一般廃棄物処理計画は、例え民間業者であっても無関係ではありません。
 廃掃法は、当該市町村の有する処理能力で自区内で発生する一般廃棄物の処理が十分にできるような処理計画であれば、「民間業者に許可を与えないことができる。」という自由裁量を認めていますので、「他の市町村の一般廃棄物を処理すること」を前提とした許可をしているとは限らないと言うことです。
 逆に言えば、事業活動に伴って発生する一般廃棄物であろうと、市町村はその一般廃棄物処理計画でどのように処理するかを定めているはずですので、他の市町村での処理を謳っていなければ、「自区内から発生する一般廃棄物は自区内(それは民間かも知れませんが)で処理する。」と言うことを宣言しているに等しく、他の自治体に仁義をきる(即ち、施行令第4条第9号でいう通知をする)ようなことは行わないということです。
 そして、そのような自治体から排出された一般廃棄物は、民間業者に許可を与えている自治体でも、仁義を切って来ないような自治体にある企業からのものは、「あなたに一般廃棄物処理業の許可を与えたのは、(仁義も通さないような)他の自治体の一般廃棄物を処理するためでは無い。」とされて、許可の取り消しにまではならないにしても、「強力な行政指導」を受けることになるはずです。

> 指導を受けたら、必ず条文のどこに根拠があるのかを確認する癖を付けられるとよいと思います。

というのは大切なことですが、大変失礼な表現ですが、小さな自治体の職員に適切な回答を求めることは無理でしょう。
返信する
ありがとうございます (堀口昌澄)
2009-06-20 00:51:26
真茶香様

コメントありがとうございます。私の説明は、事業者視点で終わってしまっていますね。
それに、一般廃棄物処理計画が事業者と無関係というのは言いすぎでした・・・。

関連して、一般廃棄物の委託基準の条文でいつも気持ち悪く感じるところがあります。下記のように「一般廃棄物処理計画に従って」委託する場合と「その他」委託する場合の2パターンが書かれていることです。

******
事業者は、一般廃棄物処理計画に従つてその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、・・・
******

正直ここまで書かれると「余計なお世話だ」とすら思ってしまいます。それともココには何か深い意味があるのでしょうか。

いずれにせよ、「その他~」から一般廃棄物処理計画に従わずに委託しても構わないということと解釈しています。これをもって、あまり大々的にやると面倒なことになりますが、処理計画など気にせずに好きなところに委託できる、と認識しています。いかがでしょうか。

「適切な回答」についてですが、一般廃棄物の担当の方は「なんとなく・雰囲気」で仕事をされているという印象があります。ある意味柔軟なんですが。。。適切な回答を求めるのは確かに無理な要求かもしれませんが、まずは法律論で(こじれない程度に)詰めていかないと話にならないような気がしています。何せ一般廃棄物には困っているんですよね。
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駆け落ちか? (廃棄物ビギナー)
2009-06-22 12:44:29
解説ありがとうございます。
真茶香様が解説されている辺りを、実態はどうなのか許可業者の方に訊ねてみました。やはり法律・条例云々よりもキョカケンジャ(たぶんカナ部”許可権者”)には十分従わなければならないらしく、仁義を切る以上の立ち振る舞いが必要のようです。どうも「越境委託」については法律の解釈を盾に、行政とやり取りしてしまうと困ってしまう方がたくさんいらっしゃるような気がします。成人であれば勝手に結婚できますが、双方の両親や親せきに必ず挨拶が必要ですし、、反対されたり、その挙句、駆け落ちとか・・・。今回は、許可業者と事業者の駆け落ちのようなものでしょうか?
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聞かない方が・・・ (堀口昌澄)
2009-06-22 12:56:52
廃棄物ビギナー様

業者さんに聞かれたのですね。
真茶香様がおっしゃるとおり「強力な行政指導がある」ので、業者さんとしてはとてもそんな気にならないのでしょう。

どれくらいの量を委託されるのかにもよりますが、わざわざ行政に相談せずに運用されてはいかがでしょうか。実際に相談せずに越境で運用しているケースはありますし、中にはちゃんと市町村に確認したうえで越境していることもあります。

法律上問題ないのであれば、そもそも行政に相談する必要もありません。何か指導が入ったときには、こちらの正当性を説明できるようにしておき、必要であれば指導に従えばよいと思います。

行政とやり取りするのであれば、それ相応の準備と覚悟が必要ですよね。あさって24日に「廃棄物管理の行政対策」スキルアップセミナーというのもやりますので、よろしければ是非(笑)。
http://www.amita-oshiete.jp/seminar/program/000275.shtml
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仁義を切るよりもっと根本的な問題があるような… (真茶香)
2009-06-22 21:34:41
 堀口様

> 事業者は、一般廃棄物処理計画に従つてその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、・・・

 確かに、この記述は分かりにくいです。
 この定めは、現行の法第6条の2第6項にありますが、手元にある平成11年版の「廃棄物処理法の解説」には記載されていません。当時の第6項は市町村が一般廃棄物の処理に関して手数料を徴収することができる旨の規定であって、これの廃止により、ごみ処理に手数料を徴収するのは地方自治法に反するとの議論が行われるようになったように記憶しています。
 で、現行の法第6条の2第6項を受けた規則第1条の17と18に法第7条第12項の許可を受けた者以外に一般廃棄物の収集運搬及び処分を委託できる者を定めていますが、前記の解説本にある規則第1条の17には、現行の規則第1条の20に記載されている内容が定められており、第1条の18はありません。
 このことから、くだんの分かりにくい記述の最後に「その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。」とあることを解釈すると、それ以前には法第7条第12項の許可を受けた者にしか委託ができなかったものが、環境省令(施行規則第1条の17と18)で、一般廃棄物処理計画に関係なく市町村長の許可無く一般廃棄物の収集運搬・処理を行える者を定めたということと思われます。
 逆に言えば、これらの者に委託する場合は処理計画は関係ないが、許可を受けた者は一般廃棄物処理計画に拘束されるので、自区外へ運搬することや自区外の許可業者に処理することを委託することは「その他」より前の記述に抵触するが、環境省令(規則第1条の17及び18)に委託することはその限りではないということではないでしょうか?
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ということは・・・ (堀口昌澄)
2009-06-23 05:49:15
真茶香様

コメントありがとうございます。

つまり要約すると、事業者が一般廃棄物を委託する方法としては、

①許可業者への委託をする場合は、一般廃棄物処理計画に沿った方法で(それも手数料は条例の額を超えないこと)
②専ら物や広域認定の場合は、一般廃棄物処理計画に沿っていなくても構わない

ということでしょうか。そうだとすると、エライことですね。これでは仁義を切っても処理計画を変えなければダメということになりませんか?。。。どうしましょう。
返信する
一般廃棄物処理計画 (廃棄物ビギナー)
2009-06-23 14:07:11
堀口様

要約ありがとうございます。
どうやら駆け落ちどころではなくて、生まれる前から、許嫁が決まっていながらの裏切りの様相でしょうか。
先日、機会がありまして、市の職員の方に一般廃棄物処理基本計画と実施計画について非公式で訪ねてみました。

実態としては、隣接する他市町村との横にらみ状態で、基本計画の突飛な変更は不可能。実施計画変更は議会を通して、さらに既得権などの調整が必要なため、だれもやらないでしょう…とのこと。

真茶香様のおっしゃるとおり、一般廃棄物処理の土台には根本的な課題があるようですね。
返信する
本当に分かりにくい法律ですね (真茶香)
2009-06-23 21:57:16
 堀口様

 一般廃棄物処理計画は、自治体が自区内の一般廃棄物を適正に処理するための計画であって、堀口さんの主張する「排出者を拘束するものではない」というところが効いてくるのだと思います。
 即ち、環境省令で定める者の内、「施行規則第2条各号に掲げる者の内の第1号及び第2号」以外は、市町村の一般廃棄物処理計画が策定される前から市町村の関与を必要としないとか、一般廃棄物処理計画策定後であってもその処理計画の内容に係わらず法や環境省によって認められたものですので、堀口さんが

> 専ら物や広域認定の場合は、一般廃棄物処理計画に沿っていなくても構わない

とおっしゃられるとおりだと思います。
 但し、堀口さんもおっしゃられているとおり、処理計画は自治体が「このように処理する」ということを定めた計画で、(市民、事業者を問わず)排出者がそれを守る義務は無いので、処理計画の変更は必要ないと思います。
 しかしながら、「再生利用が確実であると市町村長が認めて指定を受けたもの」はともかく、「市町村長の依託を受けて一般廃棄物の収集運搬(又は処分)を業として行う者」については、処理計画に従う必要があると思われるところから、規則第1条の17及び18の各号は、処理計画に従う必要の有無に係わらず「依託できる者」を列記しているのではないか?と思ったり…
 本当に分かりにくい法律です。
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