議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

ペットボトルの専ら物化の話の行方

2015年06月30日 12時42分08秒 | 政策提言
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以前、ペットボトルの専ら物化の話題を取り上げました。

前回の記事では、東京都が先行して再生利用指定をしました、という
ところで終わっていましたが、環境省が規制改革会議でこんなプレゼンをして
います。


曰く、
「店頭回収されたペットボトルの収集・運搬に関して、廃棄物処理業の
許可が不要となる再生利用指定制度の活用等について、早急に中央
環境審議会において議論を進めることとしたい。」
ということで、やはり再生利用指定制度を押していくようです。

■再生利用指定制度では合理化が難しいのでは?
以前の記事でも指摘しましたが、この制度は、自治体単位で
出されるものです。それを全国で出せばよいという考えのようですが、
基本的には自治体を越境することができない制度です。
これが問題になる可能性があります。

例えば、先行している東京都では2つのペットボトルリサイクル施設を
再生利用指定制度の「個別指定」したうえで、その施設へ運搬する業者を
「一般指定」することで、誰でも事前申請などの手続きなくペットボトルを
運搬できるようにしました。しかし、都外から持ち込む場合には、
この特例はありません。当然、県内にリサイクル施設がなければ、
基本的にこの制度は全く使えません。

したがって、越境を可能にするための制度設計をきちんとできるか
どうかがポイントとなります。例えば、埼玉県が、他の自治体で個別指定を
受けた業者に運搬する業者を一般指定します。そうすれば、他の自治体への
運搬目的であれば許可不要とできます。
そんな相互承認を各自治体でするのです。
その場合、個別指定も一般指定も各自治体で基準を統一すべきでしょう。
ところが自治体は全部で115あり、全てをうまくまとめられるのか
未知数です。
環境省が旗を振っても、誰もついてこない、という結果になりかねません。

■やっぱり店頭回収ペットボトルは一般廃棄物でしょ
だいたい、ほとんどの自治体は「あれは産業廃棄物じゃないでしょ!!」
と思っているはずです。

面白いのはこの経済産業省の「ペットボトルリサイクルシンポジウム」
の資料
p.13(p.11?)です。


自治体へのアンケート結果です
・廃棄物とみなしていない 34.5%
・事業系一般廃棄物とみなしている 4.6%
・産業廃棄物とみなしている 4.4%
・不明(わからない等) 50.1%

産業廃棄物にはできないし、一般廃棄物にしたらやっかいだし、どうしよう、
というのが最後の「・不明(わからない等) 50.1%」の本音だと思います。
どうにもならないので「・廃棄物とみなしていない 34.5%」ということに
しちゃえ、ということなのでは?


■つまりは、廃棄物処理法の構造問題
いずれにせよ、今秋に結論が出るであろう中環審の委員会に注目しましょう。
最終的に、廃棄物処理法が構造的にリサイクル阻害要因となっていることが
浮き彫りになることを期待しています。

なお、ペットボトル以外にも規制改革として「企業グループ内の自ら処理
を許可不要とする措置についても検討するとのことです。
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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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旧知の小清水さんという方が共著で条例をまとめた書籍を出されました。
廃棄物関連条例の種類や内容がまとまっていて、条例によってはマップも
あります。
私も「そんな条例があったんだ!!」という気付きがありました。

廃棄物以外にも全国の環境条例を扱っていますので、是非ご覧ください。

環境条例の制度と運用 (信山社ブックス)
信山社

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北海道乳業のシロップ不法投棄事件

2015年06月18日 07時05分20秒 | 廃棄物事件簿
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今回は、日経エコロジーで連載している「事件に学ぶ廃棄物処理」の要点を
かいつまんでお届けします。気になったら、エコロジーを見てくださいね。


(↓以下である調)

北海道乳業がフルーツ入り缶詰の残り汁のシロップを不法投棄して、幹部社員
らが逮捕された事件を取り上げたい。
北海道乳業のシロップは堆肥の原料としても利用されていたが、それだけでは
使いきれず2007年5月から08年6月の間に約1000キロリットルを牧草地
にまいたということだ。

このシロップについて、日経エコロジー本誌では総合判断で廃棄物かどうかの
検討をしているが、ここではそれは端折る。

容疑者は、当初は
「シロップは飼料をつくるための発酵促進剤として活用している」
と説明していたようだが、後に
「廃棄コスト削減のためにやった」
と容疑を認めている。

このコメントからわかるように、当事者も廃棄物だという認識は持っていた
はずだ。しかし、肥料の原料であったこと、有害物質が含まれていないことで
罪悪感が薄かったのではないだろうか。1トン当たり約2万円の処理費が浮く
ことを考えれば、いずれは牧草の養分になるのだから構わないと思ったと
しても不思議ではない。
単純計算だと毎月100t近く撒いていたことになるが、当初は「少しだけ試しに
やってみよう」というところからスタートしたのではないだろうか。
それが少しずつエスカレートしていったのだろう、途中からは「肥料として役に
立っているはずだ」と自らに言い聞かせている部分もあったかもしれない。
「少しなら」「無害だし」「リサイクルだから」という理由で違反を犯している
ことは少なくない。一度違反すると、「もう一度」「もう少し」と、やめる
どころか味をしめてしまい、問題として表面化するところまで拡大してしまう。

不適正処理が習慣化すると、それが「新常態」となってしまう。そうなると、
ちゃんと処理すると「コストアップ」になってしまう。そうなると元に戻す
のは大変だ。結局後戻りできなくなり、ズルズル不適正処理を続けてしまう、
そんな話ではないだろうか。

だからこそ、「ちょっとだけ」を許してはならないのだ。
コンプライアンスとは、そういうことなのだと思う。

(↑である調ここまで)

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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6月13日(土)に環境法政策学会で発表しました。

ペットボトルの専ら物化について、規制改革会議での議論や、東京都や
環境省の動きを踏まえて、今後の方向性を検討しました。

再生利用指定制度の個別指定、一般指定のアイデアはよいが、都道府県内で
しか有効でないので、大臣認定にして全国的に運用できるようにした方が
よいという提言をしました。



腕を組んでいるのは、司会で千葉大の下井先生です。
マイクを持っているのは、上智大の織先生です。私の発表内容にコメント
してくださっています。
専ら物化というより、そもそも、廃棄物処理法の枠組みから変えるべきなの
ではないか、など諸々のコメントを頂きました。抜本改正、学会内でも
当然のテーマです。

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日経エコロジーで連載再開です

2015年06月16日 11時42分56秒 | ニュースクリッピング
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2007年から7年間連載し、1年休止していた
日経エコロジーの連載ですが、7月号(6月8日発行)から
パワーアップして再開しました。

過去の事件、それもマスコミに取り上げられた廃棄物処理法の
違反事例を取り上げて、事件の背景を分析して教訓を得ようという
コンセプトです。

タイトルは、「事件に学ぶ廃棄物処理」です。
「~事件簿」って名前にしたかったのですが、まぁいいでしょう。

初回は、廃棄物の定義について検討しました。

廃シロップを牧草地に散布?投棄?した事件を扱っています。
「シロップを畑に撒いたら、いい肥料になるんじゃないの?」
と思った方、是非ご覧ください。

渋く88・89ページに掲載されています。

そうです!!これまでは1ページでしたが、2ページになりました。
おかげで、ちょっと大変です。

今後も排出事業者が事件に巻き込まれた例を取り上げますので、
社内教育、意識喚起のネタとしてご活用いただければと思います。


次の8月号は、男前豆腐店の事例を取り上げます。
え?男前の豆腐なんて、知らないって?

そんな方は、今日ご自宅に帰られる前にスーパーに寄って豆腐売場を
覗いてください。特徴的なパッケージ、商品名で結構目立っている
はずです。廃棄物処理には難ありですが、お豆腐はおいしいですよ。

ということで、次回の日経エコロジーも、乞うご期待!!

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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「かゆいところに手が届く 廃棄物処理法 虎の巻」が在庫切れ
でしたが、増刷しました。

読者の方から、高評価いただいていますので、そのコメントだけでも
ご覧ください。


かゆいところに手が届く 廃棄物処理法 虎の巻 改訂版
日経BP社
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