労働安全衛生法が6月25日に改正されました。これを受けて、2006年12月26日の記事に少しだけ手を加えたものを改めて新しい記事としてアップします。
****以下、以前の記事+ちょっと修正です*************
先日、「排出物を販売する場合、化学品としての表示は必要なのでしょうか」という質問をいただきました。最近少し話題のテーマです。
■GHSとは
さて皆さん、GHSというのをご存知でしょうか。化学品の表示を全世界的に統一しようという動きです。これに関係して最近労働安全衛生法が改正されました。詳しくは下記サイトをご覧ください。
改正労働安全衛生法(GHS関係)情報
これによると、化学品の容器への表示とMSDSの内容が、GHSの関係で追加になったとのことです。つまり、表示しなければならない対象物は追加されていないのですが、表示内容が変わったのです。ところがこれを機に、「実は有価物にもこれの表示が必要なのではないか」という疑問を持つ方が出てきたようです。
■条文はどうなっているか
そこで、条文をあたって見ます。特に関係があるのが、見出しを赤字にした条文です。
労働安全衛生法より抜粋
**************
(製造等の禁止)
第五十五条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。
(製造の許可)
第五十六条 ~省略~
(表示等)
第五十七条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。
一 次に掲げる事項
イ 名称
ロ 成分
ハ 人体に及ぼす作用
ニ 貯蔵又は取扱い上の注意
ホ イからニまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
二 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
2 前項の政令で定める物又は前条第一項の物を前項に規定する方法以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない。
(昭五二法七六・平一一法一六〇・平一七法一〇八・一部改正)
(文書の交付等)
第五十七条の二 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第五十六条第一項の物(以下この条において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第二項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。
一 名称
二 成分及びその含有量
三 物理的及び化学的性質
四 人体に及ぼす作用
五 貯蔵又は取扱い上の注意
六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
2 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、前二項の通知に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
(平一一法四五・追加、平一一法一六〇・平一七法一〇八・一部改正)
**************
■通知はどうなっているか
製剤とは何か、というところが課題となりそうです。厚生労働省に問い合わせたところ、下記の通知を紹介されました。
どうやら、現状ウェブ上で参照することはできなそうです。
・労働安全衛生法および同法施行令の施行について ◆昭和47年09月18日 基発第602号
***********
11 有害物に関する規制
(1) 第五五条関係
イ 本条の「製剤」とは、その物の有用性を利用できるように物理的に加工された物をいうのであり、利用ずみでその有用性を失つたものはこれに含まれないものであること。
ロ ただし書の特例が認められるのは、試験研究者がみずから製造等を行なう場合であること。
ただし、輸入について、輸入割当てを受ける事務等輸入に係る事務を輸入業者に代行せしめることは、輸入業者が輸入行為それ自体を行なうものではないと解せされるので認められること。
(2) 第五七条関係
イ 本条の「提供」とは、所有権等を留保したまま相手に渡して利用させるというような場合の「渡す」という事実行為を意味するものであること。
ロ 本条ただし書の「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」には、薬事法(昭和三五年法律第一四五号)に定められている医薬品、医薬部外品および化粧品が含まれること。
ハ 第一号の「名称」の表示は、商品名の記載でもさしつかえないこと。
***********
有用性があるかどうかで判断するわけですから、廃棄物は対象外といえるでしょう。(廃棄物でも有用なものがある、有用性を利用できるように物理的に加工されている場合もある、という議論はここでは置いておきます。)
■こんなQ&Aもあります
中央労働災害防止協会で、「表示・文書交付対象物質を含む工場廃液を処理業者へ渡す場合にも表示やMSDSの交付が必要ですか。」という問いに対する回答で、廃棄物は対象外と解説してあります。
廃棄物の処理は、所有権を放棄し、相手方に対価を払って最終処分を委託する
ことであり譲渡提供に当たらず、 安衛法第57条及び第57条の2に基づく義務は
生じません。
廃棄物の処理委託は、あくまで譲渡提供ではない、ということですね。
ただ、有価物として売却する場合は、必要と言えるかもしれません。その場合も、その対象物質の有用性を利用する(たとえば蒸留して再利用するなど)のであれば必要ですが、燃料として有価売却するなら、その対象物質の有用性を利用するのではないため、不要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
SDSは不要だったにせよ、WDSやそれに準じた形で、廃棄物の情報提供はしっかりしましょう。
****以下、以前の記事+ちょっと修正です*************
先日、「排出物を販売する場合、化学品としての表示は必要なのでしょうか」という質問をいただきました。最近少し話題のテーマです。
■GHSとは
さて皆さん、GHSというのをご存知でしょうか。化学品の表示を全世界的に統一しようという動きです。これに関係して最近労働安全衛生法が改正されました。詳しくは下記サイトをご覧ください。
改正労働安全衛生法(GHS関係)情報
これによると、化学品の容器への表示とMSDSの内容が、GHSの関係で追加になったとのことです。つまり、表示しなければならない対象物は追加されていないのですが、表示内容が変わったのです。ところがこれを機に、「実は有価物にもこれの表示が必要なのではないか」という疑問を持つ方が出てきたようです。
■条文はどうなっているか
そこで、条文をあたって見ます。特に関係があるのが、見出しを赤字にした条文です。
労働安全衛生法より抜粋
**************
(製造等の禁止)
第五十五条 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。ただし、試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する場合で、政令で定める要件に該当するときは、この限りでない。
(製造の許可)
第五十六条 ~省略~
(表示等)
第五十七条 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。
一 次に掲げる事項
イ 名称
ロ 成分
ハ 人体に及ぼす作用
ニ 貯蔵又は取扱い上の注意
ホ イからニまでに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
二 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
2 前項の政令で定める物又は前条第一項の物を前項に規定する方法以外の方法により譲渡し、又は提供する者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項各号の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない。
(昭五二法七六・平一一法一六〇・平一七法一〇八・一部改正)
(文書の交付等)
第五十七条の二 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は第五十六条第一項の物(以下この条において「通知対象物」という。)を譲渡し、又は提供する者は、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により通知対象物に関する次の事項(前条第二項に規定する者にあつては、同項に規定する事項を除く。)を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。
一 名称
二 成分及びその含有量
三 物理的及び化学的性質
四 人体に及ぼす作用
五 貯蔵又は取扱い上の注意
六 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
七 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
2 通知対象物を譲渡し、又は提供する者は、前項の規定により通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により、変更後の同項各号の事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、前二項の通知に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
(平一一法四五・追加、平一一法一六〇・平一七法一〇八・一部改正)
**************
■通知はどうなっているか
製剤とは何か、というところが課題となりそうです。厚生労働省に問い合わせたところ、下記の通知を紹介されました。
どうやら、現状ウェブ上で参照することはできなそうです。
・労働安全衛生法および同法施行令の施行について ◆昭和47年09月18日 基発第602号
***********
11 有害物に関する規制
(1) 第五五条関係
イ 本条の「製剤」とは、その物の有用性を利用できるように物理的に加工された物をいうのであり、利用ずみでその有用性を失つたものはこれに含まれないものであること。
ロ ただし書の特例が認められるのは、試験研究者がみずから製造等を行なう場合であること。
ただし、輸入について、輸入割当てを受ける事務等輸入に係る事務を輸入業者に代行せしめることは、輸入業者が輸入行為それ自体を行なうものではないと解せされるので認められること。
(2) 第五七条関係
イ 本条の「提供」とは、所有権等を留保したまま相手に渡して利用させるというような場合の「渡す」という事実行為を意味するものであること。
ロ 本条ただし書の「主として一般消費者の生活の用に供するためのもの」には、薬事法(昭和三五年法律第一四五号)に定められている医薬品、医薬部外品および化粧品が含まれること。
ハ 第一号の「名称」の表示は、商品名の記載でもさしつかえないこと。
***********
有用性があるかどうかで判断するわけですから、廃棄物は対象外といえるでしょう。(廃棄物でも有用なものがある、有用性を利用できるように物理的に加工されている場合もある、という議論はここでは置いておきます。)
■こんなQ&Aもあります
中央労働災害防止協会で、「表示・文書交付対象物質を含む工場廃液を処理業者へ渡す場合にも表示やMSDSの交付が必要ですか。」という問いに対する回答で、廃棄物は対象外と解説してあります。
廃棄物の処理は、所有権を放棄し、相手方に対価を払って最終処分を委託する
ことであり譲渡提供に当たらず、 安衛法第57条及び第57条の2に基づく義務は
生じません。
廃棄物の処理委託は、あくまで譲渡提供ではない、ということですね。
ただ、有価物として売却する場合は、必要と言えるかもしれません。その場合も、その対象物質の有用性を利用する(たとえば蒸留して再利用するなど)のであれば必要ですが、燃料として有価売却するなら、その対象物質の有用性を利用するのではないため、不要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
SDSは不要だったにせよ、WDSやそれに準じた形で、廃棄物の情報提供はしっかりしましょう。