○東京国立博物館 文化財保護法制定60周年記念 特別展『仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護』(2011年1月18日~3月6日)
気乗り薄の特別展だったが、まあ一応、と思って見てきた。冒頭では、写真、地図、水彩作品等で、平山郁夫氏(1930-2009)の取材旅行(150回以上!)の足跡を紹介。1970年以前は、ヨーロッパとインドが少々だが、その後、1980年までにアジア各地(西はレバノン、ヨルダンまで)を精力的に訪れている。私の記憶では、平山画伯って、既にこの頃(1970年代)から著名人だった気がするが、当時まだ40代でいらしたのね。
以下、地域別に画伯の作品と文化財を展示。第1章「インド・パキスタン」には、山梨・平山郁夫シルクロード美術館の優品を多数招来。赤砂岩のマトゥラー仏の菩薩像頭部いいなあ。本来、鼻筋の通った端正な顔立ちなのだと思うが、鼻と口元が欠損しているせいで、憂いを帯びた表情に見える。ガンダーラの仏伝図レリーフ(2~3世紀)は、はっきり立体的な仏弟子たちの頭部がよく残っている。私は、日本の木彫の仏像に、あまり強い照明を当てる演出は好きではないが、こういう石彫仏は、陰影が引き立ってよい。
第2章「アフガニスタン」は、冒頭に『バーミアン大石仏を偲ぶ』『破壊されたバーミアン大石仏』と題された、あたかも対幅のような2作品。これについては、いろいろ複雑な感慨があって、ひとくちに感想を言えない。流出文化財保護日本委員会(委員長:平山郁夫)所蔵の壁画片等が並ぶ。山梨・平山郁夫シルクロード美術館所蔵の「執金剛神像またはヘラクレス頭部」は、ギリシアふうの写実的な彫像に、肌は赤銅色、髪と髭には黒の彩色が施されている。そういえば「ギリシア彫刻は極彩色だった」という説(アテネ国立考古学博物館『GODS IN COLOUR』)を聞いたことがあるな。解説に「ヘラクレスまたはそれをモデルとした、仏陀の道案内者・護衛者、執金剛神」というが、これは認められた定説なのか…? Wikiでは、同様の説の脚注に前田たつひこ氏(平山郁夫シルクロード美術館学芸員)の著書が挙がっているのだが。
第3~5章の「中国」は、東博の所蔵品が目立つ。いま休館中の東洋館の「西域美術」コーナー、地味に好きだったので懐かしかった。第6章「カンボジア」は、数は多くないが、プノンペン国立美術館から出陳あり。というわけで、西アジア&南アジアの仏像が好きな人なら、行ってみても損のない展覧会だと思った。
第2部は、薬師寺の「大唐西域壁画」全図とその下絵を公開。思ったよりよかった。この作品は、自然光の座敷で見るより、映画館みたいにまわりが暗い中で見るほうが引き立つ。
蛇足だが、冒頭の取材旅行の紹介で「朝鮮-Korea」となっている高句麗古墳(安岳3号墳)、気になって調べたら、北朝鮮の平壌南方にある古墳か。こんなところにもいらしているんだな。私が中国(西域)のクチャ、キジル、高昌故城などを訪ねたのは、もう15年くらい前のこと。まわりの顰蹙を承知で決行した2週間の夏休み旅行だったが、結局、行ってよかったと思っている。また行きたいんだが…定年まで機会はないかなあ。
最後に気になった情報を2件。
※薬師寺別院『薬師寺の文化財保護展』(2011年2月26日~3月6日)
会場の出口で、お坊さんがチラシを撒いていた(さすが薬師寺w)。金曜の夜に一緒に飲んだ友人から「薬師寺で奈良時代の大般若経が見つかったらしいよ」と聞いていたので、あまり驚かなかったけど、大発見である。30年前まで転読(おい!)に使っていたというのが笑える。私、学生時代にこの経本を使った大般若転読を見てるかもしれない…。→参考:奈文研ニュース(2011/2/1)
※奈良国立博物館『天竺へ 三蔵法師3万キロの旅』(2011年7月16日~8月28日)
チラシGET!! 藤田美術館の『玄奘三蔵絵』全12巻公開だという。前後期で巻き替えありとのことだが、2回で全部見られるなら、当然行きます!
気乗り薄の特別展だったが、まあ一応、と思って見てきた。冒頭では、写真、地図、水彩作品等で、平山郁夫氏(1930-2009)の取材旅行(150回以上!)の足跡を紹介。1970年以前は、ヨーロッパとインドが少々だが、その後、1980年までにアジア各地(西はレバノン、ヨルダンまで)を精力的に訪れている。私の記憶では、平山画伯って、既にこの頃(1970年代)から著名人だった気がするが、当時まだ40代でいらしたのね。
以下、地域別に画伯の作品と文化財を展示。第1章「インド・パキスタン」には、山梨・平山郁夫シルクロード美術館の優品を多数招来。赤砂岩のマトゥラー仏の菩薩像頭部いいなあ。本来、鼻筋の通った端正な顔立ちなのだと思うが、鼻と口元が欠損しているせいで、憂いを帯びた表情に見える。ガンダーラの仏伝図レリーフ(2~3世紀)は、はっきり立体的な仏弟子たちの頭部がよく残っている。私は、日本の木彫の仏像に、あまり強い照明を当てる演出は好きではないが、こういう石彫仏は、陰影が引き立ってよい。
第2章「アフガニスタン」は、冒頭に『バーミアン大石仏を偲ぶ』『破壊されたバーミアン大石仏』と題された、あたかも対幅のような2作品。これについては、いろいろ複雑な感慨があって、ひとくちに感想を言えない。流出文化財保護日本委員会(委員長:平山郁夫)所蔵の壁画片等が並ぶ。山梨・平山郁夫シルクロード美術館所蔵の「執金剛神像またはヘラクレス頭部」は、ギリシアふうの写実的な彫像に、肌は赤銅色、髪と髭には黒の彩色が施されている。そういえば「ギリシア彫刻は極彩色だった」という説(アテネ国立考古学博物館『GODS IN COLOUR』)を聞いたことがあるな。解説に「ヘラクレスまたはそれをモデルとした、仏陀の道案内者・護衛者、執金剛神」というが、これは認められた定説なのか…? Wikiでは、同様の説の脚注に前田たつひこ氏(平山郁夫シルクロード美術館学芸員)の著書が挙がっているのだが。
第3~5章の「中国」は、東博の所蔵品が目立つ。いま休館中の東洋館の「西域美術」コーナー、地味に好きだったので懐かしかった。第6章「カンボジア」は、数は多くないが、プノンペン国立美術館から出陳あり。というわけで、西アジア&南アジアの仏像が好きな人なら、行ってみても損のない展覧会だと思った。
第2部は、薬師寺の「大唐西域壁画」全図とその下絵を公開。思ったよりよかった。この作品は、自然光の座敷で見るより、映画館みたいにまわりが暗い中で見るほうが引き立つ。
蛇足だが、冒頭の取材旅行の紹介で「朝鮮-Korea」となっている高句麗古墳(安岳3号墳)、気になって調べたら、北朝鮮の平壌南方にある古墳か。こんなところにもいらしているんだな。私が中国(西域)のクチャ、キジル、高昌故城などを訪ねたのは、もう15年くらい前のこと。まわりの顰蹙を承知で決行した2週間の夏休み旅行だったが、結局、行ってよかったと思っている。また行きたいんだが…定年まで機会はないかなあ。
最後に気になった情報を2件。
※薬師寺別院『薬師寺の文化財保護展』(2011年2月26日~3月6日)
会場の出口で、お坊さんがチラシを撒いていた(さすが薬師寺w)。金曜の夜に一緒に飲んだ友人から「薬師寺で奈良時代の大般若経が見つかったらしいよ」と聞いていたので、あまり驚かなかったけど、大発見である。30年前まで転読(おい!)に使っていたというのが笑える。私、学生時代にこの経本を使った大般若転読を見てるかもしれない…。→参考:奈文研ニュース(2011/2/1)
※奈良国立博物館『天竺へ 三蔵法師3万キロの旅』(2011年7月16日~8月28日)
チラシGET!! 藤田美術館の『玄奘三蔵絵』全12巻公開だという。前後期で巻き替えありとのことだが、2回で全部見られるなら、当然行きます!