見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

Googleアートプロジェクトの衝撃+e国宝など

2011-02-02 22:15:50 | 見たもの(Webサイト・TV)
 昼休み、職場のパソコンでYahoo!ニュースをチェックしていたら「GoogleSVで美術館の作品鑑賞」という見出しが目に入った。「米グーグル(Google)は1日(現地時間)、メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館をはじめ世界の17の美術館に収蔵されている1,000以上の作品を、オンライン上で鑑賞できるサイト『アートプロジェクト』を公開した」という。試しに見に行ったら、これがすごい! →《Google Art Project

 いま、ようやく家に帰って、その奥深さを体験中。英語サイトしかないけど、美術ファンなら、なんとなく使い方は分かると思う。メニューには、世界各国(基本、欧米ですが)の有名美術館の名前がずらり。むかし訪ねたことのあるMoMA, The Museum of Modern Art, New York(ニューヨーク近代美術館)を選び、「Explore the Museum」をクリックしてみよう。すると、大画面に展示室が表示され、ストリートビューの要領で、室内を歩きながら、壁の絵画を鑑賞することができる。奥に進むと、ああ、私の好きなアンリ・ルソーの「眠れるジプシー女」がある! 私、この作品を写真に撮ってきたのだった…。ニュースによると、「トロリー」と呼ばれる乗り物に乗せたカメラで、360度全方位撮影が行われたそうだ。

 タブを切り替えると「The Starry Night, Vincent van Gogh」(星月夜/ゴッホ)をはじめとするいくつかの作品を、超高精細で閲覧することもできる。おお、「眠れるジプシー女」もあるし。ゴーギャンの色彩、いいなあ…。展示室内を歩きまわってみると、いくつかの作品には”マスク”がかかっていて閲覧できない。近現代作品は権利関係が難しいのかな。

 MoMAは1室しか公開されていないが、複数室が公開されているところもある。たとえば、Rijksmuseum(アムステルダム国立美術館)。ここも数年前に行った。レンブラントの夜警はRoom12に展示されているので、右カラムの「Floor Plan」でチェック。右手の壁に、アクリルポケットに入った解説シートが用意されていたことまで記憶がよみがってくる。「Explore the Museum」の画像は粗いので、作品の鑑賞は高精細画像で。ここはMuseum Shopの室内までストリートビューで歩けるのには笑った。そうそう、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」グッズがたくさんあったっけな~。

 行ったことのない美術館にもアクセスしてみようと思い、米国ワシントンのFreer Gallery(フリーア美術館)を試してみる。作品リストを見ていくと、若冲があり、宗達もある。「artist unknown」の一群は、ちょっと不親切だなー。せめて国名(地域名)くらい付けてくれないと。よく見ると「石山切」が混じっていたり、宋元画らしきもの(Sheep and Goatは二羊図/趙子昂筆?)があったりする。楽しい!

 先だって、iPadアプリ「細川家の名宝」(2010年12月配信開始)に驚いたばかりで、2011年1月20日には、国立博物館のiPhoneアプリ「e国宝」と「東京国立博物館 法隆寺宝物館30分ナビ」のリリースに驚き、記事にしようと思っていた矢先だった。いや、面白い時代になってきたものだ。

※eBook User:「とんでもないことできる」永青文庫のiPadアプリに見る電子図録の未来(2011/1/21)

※東京国立博物館:博物館をもっと満喫! 2つのiPhoneアプリが同時リリース(2011/1/20)

※RBB TODAY:Googleの「20%ルール」から誕生したアートプロジェクト……ストリートビューでアート鑑賞(2011/2/2)

 それにしても、半日経ったYahoo!トピックスのコメント欄を見ると、「写真は本物にかなわない」みたいな、分別くさい意見が大半を占めていることが意外。確かにそうなんだけど、バックグラウンドに何がしかの体験を持っている人は、複製を複製以上のものとして楽しむことができる気がする。
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光悦のウサギ/生誕250年 酒井抱一(畠山記念館)

2011-02-02 00:10:24 | 行ったもの(美術館・見仏)
畠山記念館 平成23年冬季展『生誕250年 酒井抱一-琳派の華-』(前期:2011年1月23日~2月17日)

 酒井抱一(1761~1828)生誕250年を記念して、畠山記念館が所蔵する抱一作品を一挙公開。あわせて光悦、宗達、光琳、乾山ら琳派の作品を紹介する。鈴木其一の『向日葵図』(後期)も見たいが、光悦の『扇面月兎画賛』も見たかったので、まずは前期に出かけた。

 いつものように展示室でお抹茶を一服。やっぱり琳派の絵画が並ぶと、華やかである。『扇面月兎画賛』は、画面の右半分が金色の月。ふくらんだ曲線が満ちてゆく月を表す(出光の『琳派芸術』で見た宗達の『月梅下絵和歌書扇面』は、欠けゆく月の曲線だったな)。左半分は、緑の濃淡で塗り分け、天を仰ぐ白ウサギの姿を浮かび上がらせる。金+緑+白って、この上なくゴージャスである。最近、どこかで見たと思ったら、雪の金閣寺の配色だ。マルチアーティストとして知られる光悦だが、絵画作品はきわめて少ないのだそうだ。金地に散し書きされた和歌の墨色が、画面に豊かな変化を添えている。ウサギの足下にあるのは「光悦」の黒文方印だというが、会場ではよく分からなかった。

 酒井抱一の作品は、それほど多くはない。お座敷側に小品の軸(乙御前)と屏風(富士見業平)。向かい奥の展示ケースには『四季花木図屏風』。画面は琳派の伝統を受け継ぎ、華やかだが、簡素な木枠の仕立てで、おまけに渋紙色の地味な背景である。江戸も後半になると、こうした屏風を設置する舞台装置(住宅のつくり)が変わってきたんだろうなあ、と思った。そして『十二ヶ月花鳥図』は1~6月を展示。抱一には、三の丸尚蔵館本、米国プライス氏本、米国ファインバーグ氏本(大琳派展に出品)、出光美術館本、香雪美術館本など、多数の十二ヶ月花鳥図があり、伝統的な決めごと(定家による)に江戸人らしい季節感を加えているそうだ。

 なお、そのほかの琳派の工芸品も楽しい。光悦作『赤楽茶碗(銘・李白)』は、なぜ李白なんだろ?と思わせる。桶かバケツみたいにたっぷり中味が入りそうで、やっぱり大酒飲みの李白だからかな。乾山の皿は使い勝手がよさそうで、本気で欲しくなる。『銹絵染付絵替り四方向付』は、イミテーションでもいいから欲しい。蒔絵の印籠(破笠、羊遊斎ら)が5顆出ていたが、それぞれ根付との取り合わせが面白かった。

 見とれたのは、光悦の『素紙千載集和歌巻』。光悦の書というと、宗達の金泥下絵とのコンビネーションをすぐに思い出してしまうが、これは、何の変哲もない「素紙」に記されているだけに、光悦の書の魅力がむき出しにあらわれていて、ドキドキする。内容は、千載集の和歌4首。→さらぬだに心ぼそきを山里の鐘さへ秋の暮をつくなり(秋下382/覚忠):しぐれゆく四方のこずゑの色よりも秋はゆふべのかはるなりけり(秋下355/定家):都にはまだ青葉にて見しかども紅葉ちりしく白河の関(秋下365/頼政):いかばかり秋の名残をながめまし今朝は木の葉に嵐ふかずは(冬388/俊頼)。巻末には「春内匠殿 御兄弟様まいる 光悦」と斜め書き。意味がよく分からないので、気になる。しゃれた左右の文鎮に、思わず微笑んでしまう。

 後期(2/19~)は書画は全て入れ替わり。また来よう。
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