見もの・読みもの日記

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遅れてきた世代/琳派芸術・第2部 転生する美の世界(出光美術館)

2011-02-22 23:04:25 | 行ったもの(美術館・見仏)
○出光美術館 酒井抱一生誕250年『琳派芸術-光悦・宗達から江戸琳派-』第2部「転生する美の世界」(2011年2月11日~3月21日)

 琳派第2部は、酒井抱一、鈴木其一ら江戸琳派の作品が中心。光悦、宗達、光琳という超ビッグネームを有する第1部に比べると、少し客が減るかな、と思っていたら、とんでもない熱気だった。

 冒頭には、伝・宗達筆の『源氏物語図屏風残闕』が3点(桐壷、少女、葵)。おお、これは嬉しい。「桐壷」は高麗の相人の図である。「少女」は夕霧が五節の舞姫(惟光の娘)を垣間見るところだろうか。雛人形みたいに素朴でたよりない造形が愛らしい。「葵」は、もう少し華やかで丁寧に描き込まれた作品だが(上記2点とは別の屏風だった)、碁盤の上に立たされた紫の君の髪削ぎという場面のチョイスが面白い。「なぜそこ?」とツッコミたくなる。

 さらに伝・宗達筆『伊勢物語』色紙が2点(武蔵野、若草)。現在59面が確認されており、中でも益田鈍翁旧蔵の36面は優品として知られるのだそうだ。やっぱり一押しは大和文華館の「芥川」だろうが、出光の「武蔵野」もけっこう好き。

 酒井抱一は名品揃いだった。まず『八ッ橋図屏風』。光琳の「原本」に学びながら、燕子花の花群を整理し、すっきりした構図にまとめているという。確かにパネルで両作品を比べると、その違いが分かる。風神雷神図もそうだが、宗達、光悦みたいな、絶対に超えられない大天才の後に生まれても、その不幸に打ちひしがれず、自分なりの創意工夫を示そうとした態度は立派だと思う。芸術家の執念を感じさせる。抱一の『八ッ橋図』は、見る位置によって、いろいろな表情があって面白いが、私はフロアの左隅から眺めた構図が好きだ。右隻の燕子花&橋板が、流れ下るように揃って見える。

 次室の『紅白梅屏風』もいい。左隻の「白梅図」は、本展のポスターにも使われているもので、清楚な人妻が垣間見せた乱れ姿、みたいな色っぽさが感じられ、見ているこちらの動悸も早くなってしまう。鈴木其一は、まだその魅力がよく分からない。確かに面白いのだけど、どう形容しよう、と迷ってしまう。『四季花木図屏風』は、少し「盛りすぎ」の感じもするのである。

 絵画以外に、地味に面白いのが陶芸と工芸。あまり目を留めている人がいなかったけど、尾形乾山の皿がむやみによかった。後半の色絵より、前半の銹絵(さびえ)が私の好みである。さらりと描いた草花や山水画の横に、短い漢詩句や和歌、あるいは裏面に能の詞章が添えられている。画と文があいまって、展示ケースの中に、小さな別天地が生まれているようだった。原羊遊斎の蒔絵は、印籠などの小物ばかり見てきたが、大ぶりな『草花蒔絵四方盆』は、大胆なデザインの魅力が引き立つ優品。何のかの言っても、やっぱり琳派はすごい、楽しい、を実感してしまった。

 なお、写真パネルで、天明七年(1787)刊『絵本 詞の花』という絵双紙が展示されていて、後ろ姿の酒井抱一が描かれているという(羽織の紋が、酒井家のカタバミ紋)。抱一って、狂歌師としてのペンネームは「尻焼猿人(しりやけのさるんど) 」なのか。この名前も、江戸の本でときどき見るのだが…。覚えておこう(→画像/東北大学附属図書館狩野文庫。これは無断掲載じゃないのかな。大丈夫かな?)。

東海東京証券プレミア美術展『京都 美の継承~文化財デジタルアーカイブ展』(2011年2月9日~25日)
しまった。メトロポリタン美術館所蔵の光琳筆『八橋図屏風』(の高精細複製品)も出ていたのか。それも金曜日までじゃないか…見られない。
コメント
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