見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

新指定文化財/東京国立博物館

2005-05-12 08:09:32 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 特集陳列『平成17年新指定国宝・重要文化財』

http://www.tnm.go.jp/

 恒例の新指定国宝・重要文化財の展示。何と言っても見逃せないのは、熊野速玉大社の神像(木造、平安時代)であろう。新春の『祈りの道―吉野・熊野・高野の名宝』でも拝見しているが、世田谷美術館よりも、近くに寄って見ることができて嬉しかった。熊野速玉大神(壮年男性)、夫須美大神(女性)、家津御子大神(青年)の3体で揃いだと思っていたら、もう1体、国常立命坐像があって(これも青年。破損が激しい)、4体が国宝に指定されていた。

 それにしても、これは拝殿ではなくて、文化財としての展示なので、上記の順序に並んでいてもおかしくないのだが、主神の熊野速玉大神が真ん中にいないのは、どうも落ち着かない。自分の感じ方を可笑しいと思った。

 蓮台寺(神奈川県)の真教坐像(木造、鎌倉時代)は、一遍を継いだ時宗の僧侶、真教の肖像彫刻である。顔に比べて大ぶりな体が目立ち、短い茎のついた蓮の蕾を、短銃か何かのように前方に差し出したポーズも異相であるが、歪んだ顔つき(病気だったらしい)に浮かぶ真摯さに、不思議と人を惹きつけるものがある。蓮台寺は、この連休中に訪ねた国府津の宝金剛寺のすぐ近所である。宝金剛寺の住職のお話では、小田原市で国の重文指定を受けた彫刻は、これがやっと3件目だそうだ。

 東大寺・戒壇院の千手観音と四天王、鎌倉・覚園寺の十二神将(写真パネルのみ)など、今回は彫刻になかなか名品が多かったように思う。

 そのほかでは、戦争で失われた文化財の記録「琉球芸術調査写真」や、北海道の官寺建立に関する資料、英国製機関車(パネル展示)など、江戸~近代資料が面白い。

 「対馬宗家関係資料」には笑ってしまった。対馬の宗家は、足利将軍家や徳川幕府に代わって、対朝鮮外交を一手に引き受けてきた。両国の友好的な通商関係を保つため、必要とあらば文書の偽造もしたらしい。「朝鮮国王印の偽造印」とか「足利将軍印の模造印」が重要文化財に指定されている。いいのかね、これって。

 常設展では『地蔵菩薩霊験記絵巻』と『鳥獣人物戯画巻・丁巻』が6月初めまで見られる。『鳥獣戯画』は、サルやウサギを描いた甲巻ばかりが有名だが、僧侶・貴族・庶民など、さまざまな人間の様相を滑稽に描いた丁巻のほうがずっと楽しめるし、「マンガ」の元祖という呼び名にふさわしいのにね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする