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イマジン~チリの息子と考えた/21 新自由主義貫けず

2023-06-17 | 先住民族関連
毎日新聞 2023/6/16 東京夕刊 有料記事 3150文字

パタゴニアの牧草地を行く=2022年3月30日、藤原章生撮影
 私がチリを旅したのは新型コロナウイルスが広がり始めてから2年がすぎた2022年3月から6月にかけてだった。チリでは小売店や病院に入るときにマスクをつけるぐらいで、特段の制約はなくなっていた。
 出会ったノマド(放浪者)の中に、「コロナを経て自分は変わった」と語る人がいた。「変わりましたか」と聞いたのではない。向こうから言い出した。今回、私はあえて質問をしなかった。チリには何度も来ているが暮らしたことはない。そんな国についての印象や伝聞をもとに立てた問いには、必ず誇張やウソが混じる。何も聞かず、彼らが話し始めるのを待った方がいいと思っていた。
チリIBMに勤めていたカミラ(29)はコロナとともに自宅勤務となったが、サンティアゴのロックダウンが明けると通勤が嫌になり退職した。スズキ・ジムニーの新車を買い、登山や宿泊の道具を積み込み南に向かった。日本で最果てといえば北海道の知床や宗谷岬が浮かぶが、チリ人にとっては南半球最南端の居住地、パタゴニアのことだ。以来、彼女は車中泊の旅を続け1年がすぎていた。
 山で野宿した晩、聞きもしないのに語り出した。「元々、南の自然の中で暮らしたいって子供のころからずっと思ってて、パンデミア(流行病)のせいかどうかわからないけど、家にこもっていたとき、なんていうか、もっと実のある人生を送りたいと思って。運動の影響もあるのかな」
 やはり一緒に山に行った元会社員のホー(31)も「運動のあと南に出てきた」と言う。ノマドに多い菜食者で、老子など東洋思想にも詳しい。「いい場所を見つけたら、薬草づくりをしてみたい」と落ち着き先を探していた。
 彼女たちが言う「運動」は、19年10月に始まり、コロナ入りの20年前半に鎮まった反政府デモのことだ。一時は首都を中心に100万人規模に達し、過去半世紀で最大の暴動となった。きっかけは首都の地下鉄料金の値上げに対する学生の怒りだったが、格差解消からジェンダー平等、先住民族の権利回復まで、あらゆる要求が盛り込まれた。政府は一つの答えとして新憲法づくりへの流れを受け入れた。21年には大統領選があり、かつて学生運動を成功させ、のちに政界入りした左派のボリッチが当選し、私がチリに来たころ、大統領に就任した。
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 ■人物略歴
藤原章生(ふじわら・あきお)さん
 毎日新聞で「原子の森 深く」「ぶらっとヒマラヤ」「酔いどれクライマー」を長期連載。新著に中央大での講義を基にした「差別の教室」(集英社新書)がある。
https://mainichi.jp/articles/20230616/dde/012/040/001000c
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