AFPBB News9/17(日) 8:03配信
ブラジル・パラ州アバエテトゥバのプランテーションで、アサイーの実を収穫するジョゼ・ディオゴさん(2023年8月4日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】ブラジルの熱帯雨林アマゾン(Amazon)で、ヤシ科の植物アサイーの栽培が拡大している。専門家はしかし、アサイーの単一栽培が進むことで生物多様性が損なわれる恐れがあると危惧している。
【写真13枚】ブラジル・パラ州のプランテーションで栽培されるアサイー
アマゾン奥地のコミュニティーに住むジョゼ・ディオゴさん(41)は木に登り、一房のアサイーの黒い実を収穫した。世界最大の熱帯雨林であるアマゾンを良くも悪くも変えつつある、人気の「スーパーフード」だ。
収穫されたアサイーの一部はシャーベットやスムージー、ジュース、粉末、錠剤などに姿を変え、はるかニューヨークや東京の高級スーパーの棚に並べられる。
栄養や抗酸化成分に富むアサイーは2000年代に入って世界的に人気が高まった。グウィネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)さんら著名人が愛好していることにも後押しされた。
アマゾンでは、伝統的な農業に従事していた農家に経済的な恩恵をもたらし、熱帯雨林を破壊しない「緑の開発」につながるとして称賛された。こうした変化を、ディオゴさんは最前線で目の当たりにしてきた。
パラ(Para)州北部のイガラペサンジョアン村に住むディオゴさんは、「毎年の収穫ごとに私たちの状況は良くなっている」と語った。アサイーを売って得た現金収入で今、レンガ造りの家を建てているところだ。
収穫が多い日には、300~625レアル(約8900~1万8500円)の収入があるという。収穫したアサイーは、船で州都ベレン(Belem)に運搬され、傷つきやすい実の品質が落ちる前に労働者によって市場に運ばれる。
■アマゾンの「アサイー化」
アサイーは、先住民族が食用としてきた歴史がある。ブラジル北東部では食材として重要な位置を占めており、キャッサバの粉と一緒に食べたり、魚や他の料理と一緒に使われたりする。
アサイーはここ20年間、ブラジル国内で人気を集め、ジュースとして飲まれたり、シャーベットにされたりするほか、果物やグラノーラと一緒に供される。
ブラジルのアサイーとその関連商品の輸出量は、1999年の60キロから2021年には1万5000トン超に急増。ブラジル産アサイーの9割を供給するパラ州では、2021年に140万トン近くが生産され、州経済に10億ドル(1470億円)以上をもたらした。
だが、アマゾンでのアサイー栽培の拡大は、他の植物から置き換わることで、一部地域で生物多様性の低減を招いている。ベレンにある研究機関の生物学者マドソン・フレイタス氏は、「自然状態なら1ヘクタールに生えるアサイーの本数は50~100本だ」とした上で、「200本を超えると、他の原生種の多様性が60%失われる」と説明した。
同氏はそうした現象を「アサイー化」と呼び、関連論文を発表した。他の植物種が失われれば、ミツバチやアリ、ハチなど受粉を媒介する昆虫の減少によりアサイー自体にも悪影響を及ぼす。また、アサイーは雨期に冠水する土地で育ちやすいため、気候変動で助長されているとみられる、アマゾンにおける乾期長期化の影響も受けている。
■地元に補償を
ディオゴさんと同じコミュニティーに住むフレイタス氏は、単一作物栽培に対抗するにはより強力な保護法と監視が必要であり、熱帯雨林保護に向け農家にインセンティブを与えることも欠かせないと話した。
地元指導者のサロマン・サントス氏も、アサイーが増え過ぎれば問題になりかねないと語る。「アマゾンに住んでいる私たちは、一つの種だけに依存できないことを知っている」と言う。
サトウキビやゴムといった一次産品の人気が高まり、そしてバブルが突然はじけた過去の事例が、サントス氏の記憶にある。二酸化炭素(CO2)を大量に吸収するアマゾンを保護する地元住人らには、補償が必要だと主張する。「われわれは環境面で世界に多大な貢献を果たしているのだ」【翻訳編集】 AFPBB News
https://news.yahoo.co.jp/articles/5896722fda49d944a2c8d1fa7f03b57111938eed