産経ニュース-2015.5.6 07:07更新
メキシコで才能を開花させた画家、竹田鎭三郎(しんざぶろう)氏(80)の絵画展「竹田鎭三郎-メキシコに架けたアートの橋」が、川崎市岡本太郎美術館(同市多摩区)で開かれている。竹田氏は、メキシコで岡本太郎氏が描いた巨大壁画「明日の神話」を支えた画家として知られる。ここ3年ほど国内で開催される竹田氏の作品展の中でも同展は、これまでの歩みを総合的に伝える貴重な作品展となっている。(柏崎幸三)
◇
会場には、生まれ故郷の愛知県瀬戸市や沖縄をモチーフに描いた竹田氏の初期作品から、メキシコ渡航後の初期の版画作品、絵本の原画、そして竹田氏が「故郷」と呼ぶ南部の州都オアハカで制作した代表的な油彩画などが展示されている。
アトリエにとどまって作品を描くタイプではない竹田氏は、強い影響を受けたという郷里・瀬戸の画家で竹田が師と仰いだ北川民次氏(1894~1989年)から「メキシコはすばらしい国。いい国だから行きなさい」と勧められ、昭和38年にメキシコへ渡る。首都メキシコシティーにあるメキシコ国立文化博物館で名画の複製などを手がける専属画家として働きながら、メキシコ先住民の魂を求め国内を訪ね歩いた末、オアハカに移り住む。
「オアハカは、メキシコ国内をまわって私が見つけた大好きなところ」
竹田氏がこう話すオアハカは、先住民サポテカ族が昔ながらの暮らしを現代でも続けている地だった。オアハカのジャングルで暮らし、民俗や風習を学びつつ、先住民を描いた「サポテカの血(マンゴー)」(油彩、昭和63年)、「ウワホロテの精霊たち」(油彩、平成2年)を完成させた。どちらも自然と共生する野性的な女性裸像を主題に描いた作品だ。
当時、自分の美術の方向性に迷っていた竹田氏は、オアハカで暮らすうち、若い頃に美術評論家の久保貞治郎氏(1909~96年)から「民衆のための美術をやりなさい」と指導されたのを想起、日本では見つけられなかった自身の美術哲学を見いだしていく。
陶磁器の街・瀬戸の原風景を描いた初期作品「コークス拾い」(油彩、昭和30年)に見られるような民衆の生き方に共鳴した制作動機は、メキシコでは対象が先住民に移った。
「美術は、自然と共鳴したことを表現すること」
自然、民衆、共生…。制作を続ける中で見いだした独自の美術哲学だった。
「鳥、植物、自然物と僕は一緒に生きている。それが僕の絵なんです」
教育者でもある竹田氏は、オアハカ州立自治ベニート・ファレス大学芸術学部教授として美術教育にも力を注ぎ、数多くのアーティストを育ててきた。会場には、現代メキシコ美術を背負う弟子らの作品のほか、メキシコで活躍する日本人作家、矢作隆一氏、はぎのみほ氏の作品も展示している。
◇
「竹田鎭三郎-メキシコに架けたアートの橋」は7月5日まで。入館料は一般900円、高校・大学生・65歳以上700円、中学生以下は無料。月曜日休館(月曜日が祝日の場合は翌日)。問い合わせは同館(電)044・900・9898。
http://www.sankei.com/region/news/150506/rgn1505060016-n1.html
メキシコで才能を開花させた画家、竹田鎭三郎(しんざぶろう)氏(80)の絵画展「竹田鎭三郎-メキシコに架けたアートの橋」が、川崎市岡本太郎美術館(同市多摩区)で開かれている。竹田氏は、メキシコで岡本太郎氏が描いた巨大壁画「明日の神話」を支えた画家として知られる。ここ3年ほど国内で開催される竹田氏の作品展の中でも同展は、これまでの歩みを総合的に伝える貴重な作品展となっている。(柏崎幸三)
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会場には、生まれ故郷の愛知県瀬戸市や沖縄をモチーフに描いた竹田氏の初期作品から、メキシコ渡航後の初期の版画作品、絵本の原画、そして竹田氏が「故郷」と呼ぶ南部の州都オアハカで制作した代表的な油彩画などが展示されている。
アトリエにとどまって作品を描くタイプではない竹田氏は、強い影響を受けたという郷里・瀬戸の画家で竹田が師と仰いだ北川民次氏(1894~1989年)から「メキシコはすばらしい国。いい国だから行きなさい」と勧められ、昭和38年にメキシコへ渡る。首都メキシコシティーにあるメキシコ国立文化博物館で名画の複製などを手がける専属画家として働きながら、メキシコ先住民の魂を求め国内を訪ね歩いた末、オアハカに移り住む。
「オアハカは、メキシコ国内をまわって私が見つけた大好きなところ」
竹田氏がこう話すオアハカは、先住民サポテカ族が昔ながらの暮らしを現代でも続けている地だった。オアハカのジャングルで暮らし、民俗や風習を学びつつ、先住民を描いた「サポテカの血(マンゴー)」(油彩、昭和63年)、「ウワホロテの精霊たち」(油彩、平成2年)を完成させた。どちらも自然と共生する野性的な女性裸像を主題に描いた作品だ。
当時、自分の美術の方向性に迷っていた竹田氏は、オアハカで暮らすうち、若い頃に美術評論家の久保貞治郎氏(1909~96年)から「民衆のための美術をやりなさい」と指導されたのを想起、日本では見つけられなかった自身の美術哲学を見いだしていく。
陶磁器の街・瀬戸の原風景を描いた初期作品「コークス拾い」(油彩、昭和30年)に見られるような民衆の生き方に共鳴した制作動機は、メキシコでは対象が先住民に移った。
「美術は、自然と共鳴したことを表現すること」
自然、民衆、共生…。制作を続ける中で見いだした独自の美術哲学だった。
「鳥、植物、自然物と僕は一緒に生きている。それが僕の絵なんです」
教育者でもある竹田氏は、オアハカ州立自治ベニート・ファレス大学芸術学部教授として美術教育にも力を注ぎ、数多くのアーティストを育ててきた。会場には、現代メキシコ美術を背負う弟子らの作品のほか、メキシコで活躍する日本人作家、矢作隆一氏、はぎのみほ氏の作品も展示している。
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「竹田鎭三郎-メキシコに架けたアートの橋」は7月5日まで。入館料は一般900円、高校・大学生・65歳以上700円、中学生以下は無料。月曜日休館(月曜日が祝日の場合は翌日)。問い合わせは同館(電)044・900・9898。
http://www.sankei.com/region/news/150506/rgn1505060016-n1.html