水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「迷解剣客商売・37」

2011-06-06 20:37:34 | Weblog



剣一徹な大治郎が変っていく。
父であり師匠でもある子兵衛の雰囲気に染まっていく。
その過程が、又何とも微笑ましいのだ。
一人で小兵衛馴染みの酒屋に入り、ゆっくり酒を飲む。
雨宿りの時間つぶしとはいえ、以前なら考えもしなかった。

酒屋の夫婦は、そんな大治郎を嬉しそうにながめる。
「若先生が、お一人で酒をあがるなんざ、全く珍しい」
「きちんと、こう座って、あの飲みっぷりがよかったね」
「不動さまの若いときのような、かたちでね」
まだ、生真面目な飲み方なのだが、可愛いのだ。

そこで起きる傑作な詐欺事件を小兵衛に話す。
昔はテレビもラジオも無いのだ。
当然として、面白い話は双方の楽しみとなる。
野次喜多道中を読むと、当時の風俗がよく描かれている。
人と人の話術が洒落ていて、話す事が生活に大きくかかわる。
簡潔でも、言葉に心や情けや嬉しさ愉しさを乗っけて話していた。
話は、愉しいものなのだ。

美味い鯰を食べ過ぎて腹を下した小兵衛。
薬を貰いにきた大治郎に、町医者の宗哲が言う。
「小兵衛さんに、あまり薬を飲ますと、かえっていけない。
なにぶん、体が人間ばなれしているからのう。
なあに、薬のかわりに、毛饅頭でも食べさせれば、すぐ元気になる」
まじめ顔で宗哲先生、とんでもないことを言い出した。
「け、まんじゅう、と申しますと?」
わけがわからない大治郎。

今度は、その事を思い出して三冬に言う大治郎。
「三冬どのは御存知か?その、毛饅頭なるものを」
処女の生真面目な佐々木三冬だ。
「耳にしたこともありませぬ」
双方とも、男と女を知らぬ一流の剣客だ。
その正体を教えてもらおうと、小兵衛の隠宅に向かうのだった・・・
(「鰻坊主」より)


        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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コメント
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