水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「迷解剣客商売・54」

2011-06-23 19:51:21 | Weblog



大治郎の剣客としての評判は高かった。
ある大名が指南役に欲しがった。
だが、名利より剣の道を歩む大治郎は断る。
すると、指南役は大治郎に勝たねばならぬ、と言った。

その試合の話を聞いた小兵衛と三冬。
「負けておやりなされ。
今の江戸でお前に勝てる剣客はいない」
大治郎は納得できない。
闘ってみなければわからない。
第一、相手に失礼ではないか。
大治郎は、まだマジメの殻が脱げ切れない。

嘗ての弟子を手にかけた小兵衛。
人を活かす剣を教えきれなかった弟子だ。
剣で人を殺め苦しめるようになったからだ。
道場で弟子を教えていた頃は、小兵衛も柔らかさが足りなかった。
その事を、今は気づいていた。
だから、そんな試合で大治郎が負ける事など何でもない。
それにより、困っている一人が指南役になれるのだ。

納得できないまま木刀の試合に臨む大治郎。
気力を欠いての試合だ。
相手もそれなりに強いのは当然。
そして、負けた。
小兵衛たちは、負けてやったと思っている。

いろいろなウワサを聞いた相手も納得しない。
も一度の立会いを求めた。
そして、相手に気づかれぬように、今度は負けてやった。
大治郎、負けてもいい勝負を理解したのだ。
そして、その日、三冬は男の子を無事出産する。
空は真っ青に晴れていた。
(「勝負」より)

        
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