昨年11月にお亡くなりになられた伊集院静さんの「傑作」短編集。「哀しみに寄り添う」の通り、6作の短編には書名の印象深いストーリーばかりです。いずれも困っている人を家族や友人が寄り添いながらも前を向く感動的な内容です。
中でもじんわりとした読後感になったのは、「春のうららの」です。2週間後に挙式を控えた娘のドタバタした生活のなかで、亡くなった夫のことを思い出す母さちえ。神楽坂の料理屋で働く二人が籍を入れ、たまの休みに二人で新婚旅行代わりのような旅行をする。目的地は熱海。しかし、泊まる宿が取れないでただただ困惑のご両人。そんな思い出も娘とのやり取りのなかで引き立っています。
『哀しみに寄り添う 伊集院静傑作短編集』(伊集院静著、双葉文庫、本体価格650円、税込価格715円)