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座右の書『貞観政要』

2018-12-23 15:40:42 | 

 『人生の教養が身につく名言集』(出口治明著、三笠書房、本体価格1,400円)を以前に読んだとき、出口さんがとても素敵な言葉を紹介してくれました。その言葉の掲載している中国古典が本書です。それは、

 「それ銅をもって鏡となせば、もって衣冠を正すべし。古をもって鏡とすれば、もっと興替(国の行く末)を知るべし。人をもって鏡となせば、もって得失を明らかにすべし。朕つねにこの三鏡を保ち、もって己の過ちを防ぐ」(李世民)

 この意味は、ひとつ目の鏡は自身の容姿を観る、つまり、良好な健康状態やリーダーとしての振る舞いを見ること、ふたつ目の鏡は歴史を学び、目の前の課題解決に役立てる、3つ目はリーダーに諫言してくれる人をそばに置くことです。

 この言葉を発した、唐の2代目皇帝・李世民の言動を記録させた『貞観政要』には、それ以外にも多くの名言で満ち溢れています。例えば、

 「君主(リーダー)は、部下に支えられ、頼るしかない寄生階級」

 「何もしないのが理想のリーダーである。何もしなくても組織が成り立つのは、適材適所に人を配置できているから。リーダーは部下の適性を視る目を持たなくてはならない。」

 「そして、任せたことは任し切れ!」

など、まさしく組織運営における要ですね。そして、「あらゆる組織の急務は、後継者を選ぶこと」であり、一番難しいとしている点は、組織の永続における最難関かもしれません。

 また、組織において、リーダーの器以上のことはできないから、器を大きくすることが必至だと思っていましたが、出口さんの考えは斬新です。

 「人の器のおよその容量は決まっていて、簡単に大きくすることはできない」

から、「器の中身を捨てる」こと、「空っぽの状態に戻せ」と提唱しています。器に入っていた考えや志向、価値観に囚われず、謙虚になって、新しい考え、部下からの直言を取り入れる上司になれということです。素直になるのは難しいことですが、これこそが人の度量でしょう。

 本書はリーダーだけの書ではなく、部下の直言が君主に採用されるためのノウハウなど、臣下が読んでも参考になるし、目指すリーダー像も描けます。出口さんが「座右の書」としている、『貞観政要』は非常に高価値のある古典ですね。

「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」(出口治明著、KADOKAWA、本体価格1,500円)

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