今回も人情と笑い満載の5編。おけら長屋の個性あふれる住人たちが自分の持ち味をいかんなく発揮して、様々な課題の解決に奔走します。
「その壱 こまいぬ」では、江戸の職人の仕事観の名言が響きましたね。
「おめえは、おれに小言を言われねえか、そればかりを考えて仕事をしていやがった。心なんだよ。石工の仕事ってえのは、てめえの心に向かって無心で挑むってことなんでぇ。」
いわゆる、ゾーンに入って仕事に励め!ということでしょう。
「その参 ぬけがら」では、長屋のお染さんの波乱万丈の人生を開陳してくれました。また、おけら長屋の連中の特徴である、
「明けっ広げで、お節介で、間抜けで、人のためなら無茶なことをするが、いざ自分のことになると及び腰になる。」
が好かれるのは、現代の地域の人間関係が希薄になってきた裏返しなのでしょう。隣りは何する人ぞ?引っ越してきても、挨拶もなし、マンションでは上下階では別の町なので、いざというときには何の助けにもならないのが現状です。
「その五 らくがき」では、どんな人でも長所を伸ばせば、見る人は理解してくれる、お天道様はしっかりといらっしゃることを教えてくれます。
ちょいと時間があれば、すぐに読め、心洗われる、おけら長屋の心をみんなにしってもらいたい!本屋のオヤジの気持ちです。
『本所おけら長屋(十一)』(畠山健二著、PHP文芸文庫、本体価格620円)
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