「お金」の存在は有難がれるし、みんなが欲しいと思っています。その先入観を打ち砕く、「お金の教養小説」です。
投資会社の上司から錬金術師の話を聴いてくるように言われた久能七海は、そのお屋敷の入り口を、たまたま出会った中学2年の佐久間優斗に尋ねました。案内すると土砂ぶりの雨に遭遇し、二人して屋敷に入りました。屋敷のボスは二人に「お金」について語り始めました。それは、
ーお金自体には価値がない。
ーお金で解決できる問題はない。
ーみんなでお金を貯めても意味がない。
というお金の謎を開陳。その一つ一つに、彼ら二人に問いかけながら解説を行っていきます。その内容は本書に譲り、ボスの視点は全体から俯瞰したものであり、「現在は過去の蓄積で成り立っている」や「投資によってできるのは、あくまでも未来の提案でしかない」など、自利ばかり考える人間には多くの刺激を与えてくれます。また、買い物ひとつにしても、「自分の行動の影響を理解した上で選択する」という延長線上に「街の本屋」の減少について書かれていることには驚きつつも、気にかけて下さっているのかと思えば、著者を応援したくなります。
『きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と社会のしくみ』(田内学著、東洋経済新報社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)
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