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その「もの忘れ」はスマホ認知症だった

2017-07-17 10:31:12 | 

  もの忘れ外来で10万人の脳を診断してこられた奥村歩先生の衝撃の書。現代のIT生活への警告を発しておられます。

  30~50代の人たちがもの忘れやケアレスミスが多くなった、また、だるさや疲労感、動悸、睡眠障害などの心身の異常を訴える外来患者を診ると、IT機器の依存的な使用が原因である人が目立つようになってきたそうです。そこで、「スマホなどのIT機器に頼りすぎることで脳の機能を低下させてしまう病態」を「スマホ認知症」と呼び、脳神経の見地から考察すると多くのことが明らかになってきました。 

   人間の記憶とは、情報をインプットして覚え(記銘)、それを仕分けして脳にストック(保持)し、必要な時にストック先から選んで取り出す(検索・取り出し)システムです。もの忘れとは、検索・取り出しがスムーズに行われなくなったことであり、その原因は

スマホなどのIT機器からの過剰な情報のインプットによる「脳過労」

だと分析しています。つまり、「情報メタボ」となり、脳内がゴミ屋敷化する、IT情報生活習慣病」です。莫大な情報量に前頭前野が働くことを放棄し、また、習慣化したスマホでの検索が、自らの脳を駆使せず、弱体化している形となります。つまり、思考力・判断力、集中力、意欲、創造力や企画力、学力、コミュニケーション力、感情コントロール、遂行実行機能などの低下を招きます。さらに、記憶における記銘が行われなくなるアルツハイマー型認知症の原因物質アミロイド-βの蓄積はIT機器の使用で助長されるので、依存的使用は本当の認知症の引き金になりかねません。

  その対策としては、

①情報のインプットの制限=スマホなどIT機器の使用時間を制限する
②全くしていない情報のアウトプットをする
③自分を見失ないためのモニタリングシステムと呼ばれている、前頭前野の「ぼんやり考える部分」であるデフォルトモード・ネットワークを働かせる

ことが必要です。具体的には、デジタルではなくリアルな人や自然とのつながりを五感を使って大事にし、昼寝や散歩、意識的にぼんやりする時間を持つなど、IT機器の使用から離れる環境を自ら作り出せば良い。

  マインドフルネスにおいて、呼吸では「吸う」よりも「吐く」ことに意識を持つことを重視するように、情報でもアウトプットをすることを優先的に考え、情報のインプットをすれば人間的な暮らしに戻れるのでしょう。「人間はアウトプットをたくさん重ねながら成長していく生き物であり、私たちの脳にとってアウトプットは絶対に欠かせない」のですから。

『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった 10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える』(奥村歩著、青春新書、本体価格880円) 

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