終戦前後、和歌山県の山奥で生まれ育った西畑保さんは、家の貧しさ、家から学校まで約12キロ、ボロを着ているために、真実を語っても嘘つき呼ばわりされ、小学校2年で学校を行かなくなりました。そのために読み書きができない。しかし、生きていくためには働かなければならない。手に職を付けるために食堂で職を得ますが、注文を取っても書けない、出前の電話の応対が出来ない理由で、職場でもいじめられます。職場を転々としつつ、寿司職人となります。ただ、読み書き不能というレッテルを自分で貼っているために、結婚もできないだろうと諦めていると、見合いの話が…。一目ぼれで結ばれますが、読み書きができないことは妻にも内緒でした。回覧板に署名をするときに、妻にも露呈し、離婚されるのではないかと心配していましたが、
「それを心配していたの?全然気がつかんかったわ。ごめんな。ごめんな。今までようがまんしてきたな、もう苦しまんといてね」
という言葉が返ってきます。夫婦の愛ですね。
西畑さんは65歳で退職した後、夜間中学校へ入学します。もちろん、読み書きできるように。そして、作文を書き、最後には妻へのラブレターを。
来年3月には映画化もされます。昨日、電車で読んでいて、泣けてやばかったです。
『35年目のラブレター』(小倉孝保著、講談社、本体価格1,800円、税込価格1,980円)