一介の歴史作家による「日本史のつかみ方」としながら、日本史の奥行きの深さを教えてくれます。
まず、今の歴史教育には欠けている基礎トレーニングを考察しています。それは
①5W1Hの重視 特に歴史と不可分の地理を重視すべし
②飛鳥から幕末まで基本的に施行されていた「律令」を理解する
③日本に多大な影響を与えた仏教
④外国と比較する
であり、これを十分に学べば、日本史の理解は深まるはずです。
古代史では、朝鮮半島との関係が深いが、戦後の修正主義のために、国粋化・右傾化から左傾化・韓傾化へ方針転換したので、古代史の解釈が真逆になった反省をしなければならない事を強調されています。つまり、地政学的には北から半島を侵略する高句麗 VS 南から韓族の国を助ける倭の構図であったために、高度な文化・技術が朝鮮半島から日本へ到来したと教科書に書かれていたのは反対で、日本から朝鮮半島へ渡っていていたはずなんて寝耳に水でした。
また、遷都の裏には政教分離があったこと、日本を統治する王権が天皇、公家から武家へ、完全かつ最終的、不可逆的に移った「承久の変」の過小評価へ反論も興味深い。さらには、漢民族の皇帝の中国がほとんどなく、セルベ族、モンゴル族が主流であること、古代日本が元号を取り入れたのは、中国に習い、日本も皇帝のいる独立国であることなど、読めば読むほど、歴史は面白くなりますね。
正しい歴史認識は史実、事実を尊重することを主張し、理念、正邪、道徳から歴史を考える韓国へは厳しい目を向けています。
最後に、歴史小説家である著者が時代別に歴史小説を味読しながら解説しているので、書評としても楽しく読めます。
『秘伝・日本史解読術』(荒山徹著、新潮新書、本体価格800円)