7年前に一度読みましたが、マガジンハウスさんがマンガ版と一緒に活字版も出版されたので再読しました。この作品は、1935年から山本有三がまとめた「日本少国民文庫」16巻の中で倫理を扱う作品です。吉野源三郎氏は哲学者で、中学1年生のコぺル君を主人公にして、お母さん(残念ながらお父さんはコぺル君の幼いころに亡くなっている設定)、叔父さん、そして友だちとの交流を通して、世の中の見方、考え方、生き方を問うています。
約80数年前に子どもたちが読んでいたこの本がブレイクするとは、時代が経ても変わらないテーマを扱った名著なのでしょう。中年のオヤジが読んでも十二分に勉強になる内容でした。約80数年前の子どもたちの教養は凄いし、今のレベルは低すぎるのでしょうか?
いろんな視点から生き方を提示していますが、
他に依存しない自己の確立
自身の判断基準を持つ
学ぶことの大切さ
感謝
人類の進歩への貢献すること
立派な人間になり、一人でも優秀な人間を育てること
など、現在の自己啓発書に匹敵することが書かれています。読めば読むほどに味が出てくる本なのでしょうね。
再読して、気になった一文は
「生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。」
です。アウトプットの大切さは今も昔も変わらない。だからこそ、巻末でのコペル君の言葉が生きてきます。
「僕は、消費専門家で、なに一つ生産していません。(中略)しかし、僕は、いい人間になることはできます。自分がいい人間になって、いい人間を一人この世に生み出すことは、僕にでもできるのです。」
さぁ、わたしたちもコペル君のあとを歩んでいきましょう!
『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、マガジンハウス、本体価格1,300円)